財務諸表の提出
2024年改定で介護サービス事業所の財務諸表の提出が義務づけになる。
ひとつは、毎年、全事業所は都道府県に詳細な経営状況を報告する。国は事業所の経営状況を分析して、結果を発表する。もうひとつは、事業所は毎年、「介護サービス情報の公表」で経営状況の公表を行わなければならない。提出や公表する経営情報の詳細は検討中だが、財務諸表を構成する、年度ごとの収支状況である損益計算書と、事業所の財務状況である貸借対照表のうち、都道府県はその両方を事業所に求めるのに対して、介護サービス情報の公表では損益計算書を公表対象にする見込みだ
▼実際の介護事業所の経営状況はどうか。2月1日発表の介護経営概況調査(21年度決算)では、報酬改定(+0・7%)前の前年度決算より収支差は0・9ポイント減少し、全23 サービス中、
16サービスで収支が悪化した。大阪府・大阪市の介護事業の廃止事業者数の数字をみると、政令市を除き、大阪府に21年度に事業廃止の届出があったのは、445件。同年の新規指定事業者件数は1066件だった。大阪市が地域密着型サービスを始めた06年度から22年度までに事業指定した件数は、全1327事業所。このうち489事業所がこれまでに廃止に、26事業所が休止している(22面「大阪市の介護保険」参照)
▼深刻な介護人材不足の中での人件費増や介護報酬の伸び悩みが、介護事業の経営を圧迫している。新型コロナウイルスのまん延も事業継続を困難にしてきた。事業所の廃止・休止は、
M&Aを促したり、他事業へつないでサービスの継続が図られたと思われる。一方で必要なサービスがやむなく提供されなかった場合もあったのではないかと懸念される。介護保険は、財務諸表の提出というエポックを迎えている。必要な事業者支援が求められる。
<シルバー産業新聞2023年4月10日号>