日本点字図書館 「聴く・触る・使う」で視覚障害支援導く

日本点字図書館 「聴く・触る・使う」で視覚障害支援導く

日本点字図書館 「聴く・触る・使う」で視覚障害支援導く

 視覚障がい者に資料の貸出を行う点字図書館は、全国に76施設ある。国内最大規模の日本点字図書館(東京都新宿区)は、全国の利用者に点字図書や録音図書の貸出を行っている。蔵書数は点字図書約2万3000作、録音図書2万4000作で、年間貸出数は約18万タイトル。郵送が主だったが、インターネットが普及した近年では、点字ディスプレイ(ピンが上下に駆動し点字を形成するデバイス)や合成音声を活用したデータ配信の利用も増えたという。

 これらの図書は一般の書店で流通しないため、同館のスタッフやボランティアが点訳や朗読して製作。往年の名作から、昨年芥川賞を受賞した「ハンチバック」(市川沙央著)など最新の話題作まで取りそろえる。

 設立以降、80年以上にわたって視覚障がい者の読書環境づくりに寄与し続けている。

共用品普及の始祖

 設立者の本間一夫は、5歳で脳膜炎に感染し視力を失った。盲学校で点字を知ってからは夢中になって点字図書を読みあさり、いつしか日本に点字図書館を建てることがライフワークになっていた。そして1940年、25歳の若さで同館(当時は日本盲人図書館)を設立。戦時中も3000冊の点字本とともに疎開し、終戦後の一刻も早い事業再開に尽力した。64年には、後援会長の式場隆三郎に背中を押され、福祉政策の先進国であった欧米を視察。盲人施設や点字図書館を訪れたほか、盤面の凸を触って残り時間を確認できるタイマーや、持ち手を握るとヘラ部分が90度回転する簡便フライ返しなど、日本では珍しかった盲人生活用具約150点を購入し持ち帰った。

 同館の伊藤宣真本部長は「今でこそ日本には、視覚障がい者が判別できるように側面にギザギザがついたシャンプーボトルや点字がついたアルコール飲料の缶ぶたなど、多種多様な共用品がある。本間の欧米視察がなければ、これらの開発や製作は遅れていただろう」と確信する。

本間が持ち帰った盲人用具の一部

本間が持ち帰った盲人用具の一部

展示物に触れて鑑賞「ふれる博物館」

 18年に開館した分館・ふれる博物館(新宿区)には、視覚障がい者が直接触って作品を楽しめるよう、立体的なアレンジが施された絵画やジオラマなどの展示物が並ぶ。

 これまで他団体や企業の協力も得て、多彩な企画展を開催。細部まで再現された城とその内部間取りの模型や浮世絵の版木、恐竜の化石など、バラエティに富んだ展示を行ってきた。
視覚障がい者以外の来館も多く、中には他博物館の学芸員もいるという。伊藤氏は「一般の博物館でも、視覚障がい者にどうやって展示を楽しんでもらえるか模索しているのだろう」として、今後様々な公共施設でも視覚障がい支援への取組みが進むことへの期待を語った。

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(シルバー産業新聞2024年1月10日号)

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