2月開始「介護職員処遇改善支援補助金」の実施要項やQAを発出
厚生労働省は1月25日に事務連絡を発出し、2月から始まる「介護職員処遇改善支援事業」について実施要項やQ&Aなどを示した。介護サービス事業所・施設が、職員の賃上げを行うための補助金を支給する。サービス別に、介護職員1人当たり(常勤換算ベース)月額平均6000円相当(給与の約2%)の賃金引上げ相当の交付率を設定している。補助金を受給できるのは介護職員等ベースアップ等支援加算の算定事業所。実施期間は2月~5月で、6月以降は一本化される「介護職員等処遇改善加算」で対応する。
今後、都道府県が申請受付開始へ
4・5月分の補助額の2/3以上は「基本給等」引き上げが必須
また「4・5月分の補助額の3分の2以上を基本給等の引上げ(基本給、または決まって毎月支払われる手当の引上げ)に充てること」が求められる。基本給等に充てた額以外の分は、賞与・一時金等による賃金改善に充て、全体として補助額を上回る賃金改善を行う。
実施要項のポイント ※実施要項を抜粋・編集しています
都道府県(申請先も都道府県)
【対象事業所】
交付対象期間の各月でベア加算を算定し、かつ本補助金の「賃金改善等の要件」(後述)を満たすものとする。ただし、ベア加算の算定が間に合わない場合に限り、2・3月は未算定でも4月から算定していれば対象となる。5月までに廃止・休止が決まっている事業所は対象外。
介護予防・日常生活支援総合事業は、従前相当サービスに加え、サービスAのうち、ベア加算に相当する加算を市町村が設けていてその加算を算定している場合に限り対象とする。
3月末で廃止される介護療養型医療施設(介護療養病床)は4月以降に介護医療院や老健などへ移行が決まっている場合に限り対象となる。その際、2・3月分は介護医療院と同じ交付率、4・5月分の補助額は移行後のサービスの交付率が適用される。
【対象者】
補助金を受給する事業所等に勤務する職員。介護職員以外の職員を賃金改善の対象にする場合、介護職員の処遇改善を目的とする事業であることを十分に踏まえた上で賃金改善を実施する。
【対象期間】
2024年2月から5月までの期間
【補助額】
各月分の補助額の計算式は以下の通り。
補助額=a×b×c(1円未満の端数切り捨て)
a 一月当たりの介護報酬総単位数(基本報酬サービス費に各種加算減算※を加えた単位数)
※「各種加算減算」には処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベア加算分を含む
b 1単位の単価
c サービス類型別交付率
【賃金改善等の要件】
①賃金改善の実施
対象事業者は補助額に相当する介護職員などの賃金(基本給、手当、賞与等<退職手当を除く>を含む)の改善を実施しなければならない。
②賃金改善の開始時期
原則として、2月分の賃金から賃金改善を実施しなければならない。ただし、賃金計画の変更に時間を要するなど、やむを得ない場合は、2月分に限り、3月分と一括して行うこととしても差し支えない。
③賃金改善の方法
賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行う。その際、特定した賃金項目を含め、補助金の交付対象期間において、前年同時期と比較し、賃金改善の対象とした職員の平均的な賃金水準を低下させてはならない。また6月以降も、本事業により講じた賃金改善の水準を維持すること。
本事業による賃金改善が賃上げ効果の継続に資するよう、4・5月分の補助額の3分の2以上の賃金改善を「基本給、または決まって毎月支払われる手当(以下、基本給等)」の引上げにより行わなければならない。その際、6月以降の処遇改善加算の一本化による加算率の引上げを見据え、賃金改善の方法はベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)を基本とする。
また、本補助金で賃金改善の対象とする介護職員・その他の職員について、それぞれの区分毎に、賃金改善額の3分の2以上を基本給等に充てるよう努めること。
なお、基本給等の引上げは、就業規則・賃金規程等の改訂に時間を要する場合があることを踏まえ、4月分からの実施で差し支えない。就業規則等の改訂が間に合うのであれば2月分の賃金から基本給等の引上げに努めること。
Q&A(一部、抜粋・編集)
【賃金改善全般について】
(答)2月からの本補助金は、毎月ごとに賃金改善額が補助額を上回ることを求めるものではないため、2月分、3月分として見込まれる補助金額のすべてを、2月分、3月分の賃金改善に充てる必要はない。ただし、全体で、2 月~5月分の4カ月間の補助金の合計額を上回る賃金改善を行うことが必要であるため、計画的に賃金改善を行っていただきたい。
問2 補助金の対象期間は2月~5月までの期間とされているが、補助額に相当する賃金改善の実施は何月に行う必要があるか。
(答)補助額は、2月から5月までの各月の介護報酬総単位数を用いて算出するため、2月分から5月分の賃金改善が必要である。なお、「○月分の賃金改善」というのは、「○月の労働に対する賃金を引き上げる」または「○月に支払われる賃金を引き上げる」のいずれの方法もとりうるものであるが、現行の処遇改善加算等と異なる取扱いとならないよう、各事業所において適切にご対応いただきたい。
【基本給等の引上げに係る要件について】
(答)賃金改善が賃上げ効果の継続に資するよう、4・5月分の補助額の3分の2以上の賃金改善を4・5月分の基本給または決まって毎月支払われる手当(以下、基本給等)の引上げに充てることを交付要件としている。そのため、2月分、3月分の賃金改善は一時金により対応した場合でも、令和6年4月分以降は、基本給等による毎月の賃金改善を行うことが必要となる。
その際、6月以降の介護職員処遇改善加算等の制度の見直しによる加算率の引上げを見据え、賃金改善の方法としてはベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること。以下同)を基本とすること。
問4 基本給等による賃金改善を開始した後に、利用者が想定よりも増えるなど、補助金の受給額が計画書作成時の見込額を上回り、基本給等に充てるべき額が増加した場合、必要に応じて再度就業規則等を改訂し、基本給または決まって毎月支払われる手当を更に引き上げることが必要か。
(答)貴見のとおり。なお、4・5月分の補助額の3分の2以上の賃金改善を、4・5月分の基本給等の引上げにより行うことが必要であることから、当初の計画以上に介護報酬額が増加した場合に備え、余裕のある賃金改善計画の策定に努めること。
問5 時給や日給を引き上げることは、基本給等の引上げに当たるか。
(答)時給制の職員の時給を引き上げることや、日給制の職員の日給を引き上げることは基本給等の引上げに当たる。
問6 2月・3月に一時金で賃金改善を行った場合、4月・5月の2カ月間において基本給等に係る要件を満たしていればよいか。もしくは2月~5月までの4カ月間全体で当該要件を満たしている必要があるか。
(答)補助金の交付対象期間が4カ月間と短いことから、4・5月分の2カ月間で、補助金額の3分の2以上の基本給等の引上げを行っていれば要件を満たす。
問7 基本給等の引上げに係る要件は、「介護職員」と「その他の職員」のグループごとに満たす必要があるか。
(答)賃金改善の対象とする職員全体で4・5月分の補助金額の3分の2以上の基本給等の引上げを行っていれば要件を満たす。また、事業者が賃金改善の対象とする介護職員・その他の職員については、それぞれの区分毎に、賃金改善額の3分の2以上を基本給等に充てるよう努めること。
問8 賃金改善額について、「当該賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含むことができる」とされているが、法定福利費等の事業主負担の増加分は、基本給等による賃金改善に含めてよいか。
(答)法定福利費等の事業主負担の増加分については、基本給等による賃金改善には当たらないが、基本給等以外の部分として賃金改善額に含めることは可能。
問9 4・5月分の補助金額の3分の2以上を基本給等に充てることが要件とされているが、基本給等に充てた額以外の分について、用途制限はないのか。
(答)全体で、補助金の合計額を上回る賃金改善を実施することが必要であるため、基本給等に充てた額以外の分についても、賞与や一時金等による賃金改善に充てなければならない。その際、賃金改善とは賃金(基本給、手当、賞与等<退職手当を除く>を含む)の改善であって、賃金以外のコスト(事務費・設備投資・職員研 修費等)に充ててはならない。
問10 「決まって毎月支払われる手当」とはどのようなものか。
(答)「決まって毎月支払われる手当」には、労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当を含むが、以下の諸手当は含まない。
・月ごとに支払われるか否かが変動するような手当
・労働と直接的な関係が薄く、当該労働者の個人的事情により支給される手当 (通勤手当、扶養手当等)
ただし、以上の諸手当は賃金改善の対象となる「賃金」には含まれる。
問11 就業規則等の改訂が間に合わず、本年4月以降に基本給等による賃金改善が実施できない場合は本補助金の対象外となるのか。
(答)貴見の通り。ただし、就業規則を改訂自体は補助金の要件ではない。そのため、就業規則等の改訂・変更を行わなくても、4月分の賃金から基本給等による賃金改善を実施できるのであれば補助金の要件を満たす。
【その他の要件について】
(答)本補助金の配分対象とする介護職員以外のその他の職員の範囲は各事業所においてご判断いただきたい。また、本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員の取扱いについては、2019年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)問13を参照されたい。なお、その他の職員にも配分を行う場合は、介護職員の処遇改善を目的とした補助金であることを十分に踏まえた配分をお願いしたい。
(参考)2019年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和元年7月23日)
問13 本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員について、「その他職種」に区分し、特定加算による処遇改善の対象とすることは可能か。
(答)特定加算の算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、その他の職種に含めることができる。
問13 介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、ベア加算)について、いつの時点で算定している必要があるか。
(答)補助金の交付対象となる各月についてベア加算を算定していることを基本とする。 ただし、2月サービス提供分からベア加算算定に必要な準備・届出等が間に合わない場合に限り、4月からベア加算を算定していれば、本事業の対象とする。なお、この場合、2月分から本補助金の交付対象となる。
問14 介護予防・日常生活支援総合事業について、ベア加算を算定する枠組みがない市町村もあるが、ベア加算を算定していなければ、本補助金の支給対象にはならないか。
(答)介護保険サービスにおけるベア加算と同様の加算が当該市町村において設定されており、事業所が当該加算を算定している場合は対象として差し支えない。したがって、旧介護予防訪問介護等に相当するサービスに加え、サービスAのうち、市町村(特別区を含む)においてベア加算に相当する加算が設けられている場合においても、当該加算を算定している場合に限り、本事業の対象とする。
【処遇改善計画書・実績報告書について】
(答)貴見のとおり。
問16 処遇改善計画書・実績報告書の提出受付開始時期・提出期限はいつか。
(答)各書類の提出受付開始時期・提出期限は、各都道府県において適切に設定されたい。
問17 前年度の介護職員等の賃金の総額は、前年度から事業所の介護職員等の減少や入れ替わり等があった場合、どのように考えればよいか。
(答)実績報告書における「①令和6年2月から5月の処遇改善支援補助金を除いた賃金総額」と「②令和5年2月から5月の賃金総額」の比較は、本補助金による賃金改善以外の部分で賃金水準を引き下げていないことを確認するために行うものである。
一方で、賃金表のベースダウン(一律の引下げ)等を行ったわけではないにも関わらず、事業規模の縮小に伴う職員数の減少や職員の入れ替わり(勤続年数が長く給与の高い職員が退職し、代わりに新卒者を採用した等)といった事情により、上記①の額が②の額を下回る場合には、②の額を調整しても差し支えない。この場合の②の額の調整方法は、
例えば
・退職者は、その職員が、令和5年2月から5月に在籍していなかったものと仮定した場合における賃金総額を推計する
・新規採用職員は、その者と同職であって勤務年数等が同等の職員が、令和5年2月から5月に在籍したものと仮定した場合における賃金総額を推計する 等の方法が想定される。
(答)貴見のとおり。本補助金では、令和6年2月分から賃金改善を実施していることを処遇改善計画書において確認することとし、令和4年2月からの介護職員処遇改善支援補助金において計画書とは別に提出を求めていた「賃金改善開始の報告」の様式の提出を求めないこととした。ただし、令和6年2月分からの賃金改善の実施は要件であることに留意されたい。
問19 補助額の算出に用いる総報酬には、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算およびベア加算分を含めたものか。
(答)貴見の通り
問20 原則として、令和6年2月分から賃金改善を実施することが要件とされており、本年3月以降に新規開設する事業所は本補助金の対象となるか。
(答)本年3月以降に新規開設する事業所は、令和6年2月分からの賃金改善の実施以外の要件を満たす場合には、本補助金の対象となる。
問21 交付対象期間中に休廃止した事業所について、本補助金の対象となるか。
(答) 本補助金は、介護職員の継続的な賃金改善を目的として、基本給等の引上げを要件とするものであることから、処遇改善計画書の提出時点で令和6年5月までに休廃止することが明らかになっている事業所は、本補助金の交付の対象外とする。
ただし、処遇改善計画書の提出時点では見通せなかった事情等により、交付対象期間中に事業所が休廃止することになった場合は、休廃止することが明らかになった時点で速やかに都道府県に届け出ることとし、休廃止となった月の前月までを、補助金の交付対象期間とする。