在宅との連携で高齢者医療の充実を

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在宅との連携で高齢者医療の充実を

 「第33回全国介護老人保健施設大会 兵庫」が9月22日(木)~23日(金・祝)に神戸市(神戸ポートピアホテル、神戸国際会議場ほか)で行われる(現地・オンラインのハイブリッド)。大会テーマは「新たな時代をいきぬくために~今、老健ができること~」。メインプログラムの一つには、パネルディスカッション「全老健が考える未来の〝LIFE〟~サービスの質の評価、次なる展開へ~」を据えた。大会長を務める森村安史氏に開催の抱負を聞いた。

3年ぶりの開催にむけて

 今回のテーマに掲げた新たな時代とは、ウィズコロナ、ポストコロナを意識したものだ。

 これまでは、皆で集まって現地開催ができていたが、コロナ感染拡大の状況を踏まえ初めてのハイブリッド開催となる。感染症に対応した最適な大会をどのように作っていくかが大きな課題だ。

 コロナ以前、本大会の開催規模は年々拡大し、会場規模の小さな地方での開催が難しくなってきていた。今回の大会を成功させることで、どこの都市でも開催できる範を示したい。例えば、小規模会場でも感染対策のため密を避けながら、オンライン参加を取り入れるなどを実践する。

 コロナ感染拡大下で、老健施設にできることも大きなテーマだ。在宅療養が困難な独居のお年寄りや、病院でのコロナ治療後に行き先がない方などが問題になっている。そのような人に、どう手を差し伸べられるかが課題となる。

 初日9月22日の、教育講演IでCOVID-19、2日目9月23日には、教育講演Ⅲで防災対策を取り上げる。コロナも災害の一つと考えられ、事業継続の観点からも有意義な内容になればよい。

LIFEの活用には施設の電子化が重要

 老健施設へのLIFEの導入は、科学的介護推進体制加算などの介護報酬や、経営面でも避けて通れない。エビデンスの構築には有効だが、現場レベルでのケアに活かすことができるかは、フィードバックされた情報の取り扱いや、電子記録システムなど電子化の普及が鍵となる。

 もともと、エビデンスの構築や電子化を進めることは、人手を有効に回して業務を効率化することが目的だ。現状は、ITへの知識や技術も個々のスタッフによってばらつきがあり、逆に人手がかかっている印象だ。データ入力などに専門のスタッフを配置するのも解決策の一つと思われる。

全国どこでもサービスの質を担保

 以前に比べて、老健の入所待ちの人数は少なくなっている印象だ。特に都市部では、サ高住やケアハウスなどの施設が増えてきている。これらの施設では、施設費用やサービスの質などが様々だ。

 一方で、老健では医師の配置など一定の基準が示されており、費用もおよそ均一な点が強みだ。これからしばらく高齢者人口は増加するため、老健の需要もあると思われる。

 サービスの質の担保のためには、人材の確保が課題となる。介護現場では、高齢者が活躍しており、地域のシルバー人材センターから介護助手として来て頂くことも多い。技能実習生など外国人人材も年々増えてきている。多様な人材を受け入れることで、人手不足を補いながら事業を継続したい。

在宅との連携で認知症ケアの充実を

 利用者が認知症で入院となる理由は、介護への抵抗や徘徊などの問題が多い。幻覚や妄想などの症状に関しては、薬物治療が必要になることもあるが、介護抵抗や怒りやすいなどの問題に関しては、在宅でも対応できる。

 徘徊など危険性が高い場合は入院の適応となるが、多くのケースは、大声を出したり、介護中に騒いだりすることで施設に来られる。

 そのような場合は、老健に一時的に入所して頂いて、解決策を見つけてあげることが大切だ。大声を出している場合にも原因があり、怒りっぽい、不安を感じやすい、頑固であるなど病気になる前の性格が影響していることが多い。おむつを替えるのを嫌がっていれば、話を聞くことを優先してもよいのではないか。

 在宅に戻った時に向けて、ご家族に利用者とのかかわり方の指導や、専門職に向けたフィードバックを示してあげられれば良い。ショートステイなどのサービスもうまく利用し、認知症の方が在宅で少しでも長く過ごして頂けたらと思う。これが、老健の機能の一つである、在宅生活継続支援と言える。

利用者のポリファーマシーの解決を

 高齢者は複数の医療機関にかかっていることが多く、多量の薬を処方される場合がある。多数の薬を飲み副作用を起こすことをポリファーマシーといい、老健の利用者でも多く見られる。睡眠薬や不安に対する薬は、ふらつきや転倒の原因となることがあり注意が必要。老健には医師がいて、在宅に向けて薬剤の整理ができることも強みだ。もともとのかかりつけ医と連携を取りながらポリファーマシーの解消に取り組みたい。

大会参加者へのメッセージ

 従来の大会では発表の場で、参加者同士が直接話し合い、事例の共有やアドバイスを受けることなどができた。ハイブリッド開催となり、参加者同士の直接の情報交換が難しくなった一方、オンライン参加の導入により、これまで以上に参加しやすく、発表の視聴がしやすくなった。なるべくにぎやかな大会にできたらと思っている。
(シルバー産業新聞2022年9月10日号)

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