八王子市「ハッピーチャレンジプログラム」リハ職面談で再自立へ

八王子市「ハッピーチャレンジプログラム」リハ職面談で再自立へ

八王子市「ハッピーチャレンジプログラム」リハ職面談で再自立へ

 東京都八王子市は2021年4月より、リハビリ専門職による個別面談を中心とした通所型短期集中予防サービス(通所C)「ハッピーチャレンジプログラム(略称:ハチプロ)」をスタートした。利用者の再自立(リエイブルメント)を目的に、セルフマネジメントや自立日常生活の継続を支援する。

 同市では毎年、要介護・支援認定を受けていない市内の75歳以上の高齢者約5万人に「後期高齢者実態把握調査」を実施。心身状態や生活環境についてアンケートし、早期支援・介入に繋げる。うつ傾向や閉じこもり、運動器機能の低下傾向にある「専門職の介入が必要な高リスク者」に、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が利用者宅を訪れてアセスメントを実施。ハチプロなどの支援に繋げる。20年度は回答者約4万人のうち9.5%が高リスク者だった。

 同市高齢者いきいき課の辻野文彦主査は「高齢者自身のセルフマネジメントや活動量の増加を支援して、再び自分の健康を自分で守れるようになる『再自立』に繋げていく」と説明する。

 ハチプロではまず、リハ職が利用者の自宅を訪問して暮らしの評価や、サービス導入効果をアセスメントする。その後、介護予防プランを作成、サービス担当者会議、ハチプロ事業所に情報の共有を経て、サービスが開始される。

 利用者は委託事業所である老健や病院を週1回訪れて、リハ職による個別面談を実施。初回の面談では、運動や社会参加、生活での不安点、自己管理の状況などをヒアリングし、改善したいことや、「テニスをしたい」などの具体的な目標達成に向けたアプローチを提案する。2回目以降は▽生活課題に対する個別指導(コーチング)▽社会参加の支援▽セルフマネジメントの定着に向けた助言・確認▽体力測定――などを行い、3カ月後の評価会議でサービスの終了・延長の判断を行う。

 ハチプロの委託を受けている医療法人社団永生会地域リハ支援事業推進室の豊田平介氏(八王子市介護予防・フレイル予防推進員)は「転倒をきっかけに歩行に不安を感じ、外出の機会の減少から活動量が低下している人などが再び自信を持てるよう、まずはその人ができることを見つけ、『緩やかな坂道を歩いてみましょう』など達成できる目標を毎週積み重ねていくことが、セルフマネジメントの継続には欠かせない」と強調する。

 豊田氏の事業所に通う利用者を評価したところ、利用開始から3カ月後のプログラム終了時に活動量は1.5倍に増加。その3カ月後にはさらに活動量が1.5倍に増えていた。

 「プログラムが終了したあとの3カ月は利用者が主体的に活動した結果。自分ができることを理解し、目標達成に何が必要かを一緒に考えて個別支援することが、セルフマネジメントに繋がるとわかった」と豊田氏は評価する。

 介護予防では集団での運動やマシンを使うことが多いが、自宅にはマシンもなく、1人で体操する意欲に繋がりにくく継続した活動へのアプローチが課題だった。ハチプロでは運動の場の提供ではなく、個別面談で利用者自身の積極的な活動を促すコーチングを第一とした。高齢者が自分で健康管理できるよう早期から支援していく。

 「リハ職は日ごろから利用者の身体状況を把握して予後の見立てを行っている。ハチプロではさらに生活リハビリの視点を加え、利用者が自宅でも継続して取り組めるアドバイスを行うよう心がけている」(豊田氏)

 ハチプロは17事業所18カ所で実施。利用者数は10月時点で161人、月の新規利用者平均は約18人。新規認定者のうちC型を「利用する人の割合90%以上」、「利用3カ月後のリスク改善率80%以上」などを目標に掲げている。

 また、サービスを提供するリハ職の質向上にも同時に取り組む。ハチプロ実施にあたり、豊田氏は八王子市のリハ職が連携するために「八王子市リハビリテーション専門職協会(通称コネクト八王子)」を立ち上げた。

 豊田氏は「個別面談では通常我々が行っている予後の見立ての能力のほか、ヒアリング能力が求められる。協会の立ち上げで、地域のリハ職同士が連携し、課題分析を行える環境が整備できた。今後はリハ職の面談による対話能力向上にも繋げていきたい」と話す。

 辻野氏は「住民の幸福度を高めることを目標に、希望する自立生活を実現できるようサービスの検証を重ねていきたい」と語った。

左から辻野主査、吉本知宏課長(八王子市)、豊田氏、今田...

左から辻野主査、吉本知宏課長(八王子市)、豊田氏、今田滉亮主事(八王子市)

(シルバー産業新聞2022年1月10日号)

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