感染拡大に立ち向かう介護職員を支えよ/服部万里子(125)

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感染拡大に立ち向かう介護職員を支えよ/服部万里子(125)

 新型コロナウイルスの新規感染者数は、国内では7月末に1日20万人前後にまで達し、さらに今も各地で拡大を続けている。 国は第7波では行動制限をしない方針で、「引き続きワクチン接種を進め、国民の行動は自己判断」と社会経済活動優先のスタンスをとってきた。しかし、一向に収まらない感染状況の中、本当に「個人任せ」のままで良いのだろうか。猛暑の中、PCR検査会場にできる長蛇の列をみると、国民に負担としわ寄せがきていることが実感できる。

 国は感染拡大を受け、第7波に対応する新たな方針を打ち出し、「高齢者や基礎疾患を持つ人に対し、混雑した場所などへの外出自粛を要請できる」としているが、もはや都道府県の後追いであり、新鮮味はない。

 世界各地で拡がる「サル痘」の国内感染者も2人となり、海外では「ケンタウロス」とも呼ばれる新型コロナの新たな変異種「BA.2.75」の感染者も国内で確認されている。

 医療機関のひっ迫は全国各地で起きている。国はPCR検査に殺到する人たちに対し「キットを入手し自分で確認して、医療機関には行かないように」と言っているが、国民の不安はますます強まっている。他方で、新型コロナに感染した人の後遺症も数々報告されており、制度的な対応・支援が求められる。

疲弊する家族へ支援の幅を拡げよう

 このところ連日、感染が発生したという連絡が居宅介護支援事業所に送られてくる。ショートステイやデイサービス、訪問介護などからの報告が多い。

 これまで2年半に及ぶコロナ自粛で、利用者もその家族も、介護サービス事業所も疲弊している。国の報告ではこの間、子どもの虐待が増加しているそうだ。同居する人を介護する家族は、24時間介護に縛られることになる。別居の場合は、定期的に自宅を訪れることが「苦痛」になる。このような介護家族に寄り添い、話を聞き、支えるのも、ケアマネジャーの大切な役割だ。

 脳梗塞の後遺症で自宅療養する男性が、突然けいれんを起こし救急搬送されたが、大事に至らず自宅に戻ったケースがあった。男性は、妻が仕事でいない時にけいれんが起きた場合に備え、役所で「緊急通報」の利用手続きをしようとした。しかし、65歳未満は対象外だったため、障害者福祉制度を利用して緊急通報システムを導入することになった。

 「制度のはざま」にめげず、あらゆる施策を活用して支援することの大切さを実感した。ケアマネジャーは、介護保険など様々な制度を適切に活用しつつ、支援を拡げていく役割を担っている。

 来年には2024年の介護報酬改定に向けた議論が始まる。国は今年12月に「22年度介護従事者処遇状況等調査」を実施し、来年4月頃をめどに結果を公表する予定だ。ほかに「介護職員処遇改善支援補助金及び介護職員等ベースアップ等支援加算の影響等の評価」も行い、介護報酬改定のための基礎資料を作成する方向だ。

 在宅・施設を問わず、重症化リスクの高い高齢者に接する介護職員やケアマネジャーの、日々の疲労と緊張は極限に達している。コロナ禍でさらに深刻さを増す、介護現場の慢性的な人手不足を、適切な評価で一刻も早く改善させてほしい。

(シルバー産業新聞2022年8月10日号)

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