【インタビュー】ねんりんピック大会会長・黒岩祐治氏(神奈川県知事)

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【インタビュー】ねんりんピック大会会長・黒岩祐治氏(神奈川県知事)

3年ぶりにねんりんピックが開催される。本大会のテーマ「神奈川に咲かせ長寿のいい笑顔〜未病改善でスマイル100歳〜」にある「未病」とは、健康と病気の間を連続的に変化する状態のことで、同県は健康長寿社会の実現へ普及・啓発を続けてきた。大会会長の黒岩祐治神奈川県知事に未病の考え方、未病改善への具体的な取組みを聞いた。

超高齢社会を乗り切る「未病改善」

食・運動・社会参加でセルフチェック&ケア

――今年のねんりんピックでは、貴県が啓発する「未病」が大会テーマに掲げられています。改めて、未病の概念について教えてください。

 日本が抱える社会的課題の一つが超高齢社会です。神奈川県は、1970年の人口構造は年齢が若い層ほど人口が多い「ピラミッド型」でした。ところが、2050年には85歳以上が最も多い「逆三角形型」になると推計され、状況が一変します。

 高齢になると医療や介護が必要になりますが、今の体制ではとても支えきれません。価値観の転換が必要であり、そこで提唱したのが未病という考え方です。

 人間の身体は健康(白)か病気(赤)の二つに明確に分けられるのではなく、境目がないグラデーションを常に行き来しているというのが、未病の根本概念です()。

 これをできるだけ健康(白)の状態に近づくよう、自分自身でマネジメントする「未病改善」が重要です。当然ながら医療の受け皿は必要ですが、これまでの依存型から自立型のケアへと舵を切り、全員で取り組むことが超高齢社会を乗り切るカギとなるでしょう。

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――未病改善のためにどのような活動が必要ですか。

 食・運動・社会参加の3つを柱に位置づけています()。

 私自身で言うと、「食」は野菜多めの食事を心がけています。「運動」は毎朝5㎞、月間100㎞のランニングが目標です。今年は10月の横浜マラソンでフルマラソンを走る予定です。朝起きて走ることは健康を支える上で大きい。今では、走らないと体調が悪くなるくらい生活習慣に組み込まれています。「社会参加」については仕事柄、十分に機会をいただいています。

 元来、日本では、日常生活の中で食に気を付けるなどの健康管理をしてきました。未病の考え方は、生活の原点でもあるのです。

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――県の普及・啓発事業は。

 食では、県や市町村設置の未病センターで、企業や団体が保有するノウハウや人材を活かし県民の未病改善の取組の支援のために提供いただいている「健康支援プログラム」において、栄養バランス改善に係るプログラム等を展開しています。また、「食べる力」つまり口腔機能も重要ですので、ハンドブックの作成などオーラルフレイル(口腔機能の衰え)対策の啓発にも取り組んでいます。

 運動では「3033(サンマルサンサン)運動」を推奨しています。1日30分(連続でなくても可)の運動・スポーツを週3回、3カ月以上継続することで運動習慣を身につけ、体力向上や体調の安定をはかるための取組みです。

 子供向けにはキャラクター「ミビョーマン」が誕生しました。高校生の副教材も作成し、授業にも取り入れています。最初は、未病は高齢者に向けたメッセージだと考えていましたが、例えば子どもの偏食は大人になっても続きます。世代を問わない啓発が大切だとの考え方も、ずいぶん広がってきました。

 また、やせすぎや骨量低下など、女性特有の健康・未病問題へのアプローチとして「ME―BYOスタイル」のコンセプトも立ち上げました。より身近に感じてもらえるよう、料理研究家やヨガインストラクターが「ME―BYOスタイルアンバサダー」として、自身の専門領域に未病をかけ合わせた情報発信を行っていただいています。

 未病は他のさまざまな産業や地域資源と結びつく可能性を秘めています。例えば、「未病×観光」。県西部の大井町にある未病バレー「ビオトピア」は、健康状態・体力をチェックし、未病改善を体験できるアトラクションを備えています。

 「未病×エンタメ」では、横浜、横須賀、綾瀬、小田原などでシニア劇団が活発です。私も観に行きましたが、熱量がすごく、みなさん本当に生き活きしています。これこそ社会参加による未病改善の成果の一つではないでしょうか。

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――企業が参画する「未病産業研究会」も2014年から動いています。

 未病改善と最先端技術を融合させる「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」は約11年半、磨き上げてきました。これには企業との協働が不可欠です。

 未病産業研究会は現在、1000社近い企業等が参画し勉強会や交流会、展示会等を通じて、健康長寿社会をつくるための新たな市場・産業の創出に取組んでいます。社会課題の解決は企業にとっての大きなビジネスチャンスになります。

 例えば、製品パッケージにミビョーマンをプリントするメーカーや、訪問時に未病パンフレットを配布してくれる保険会社などもあります。

 なかでも、優れた未病関連商品・サービスは「ME―BYOブランド」として県が認定し、イベント等で一般の方々へ積極的に周知を行います。9月現在、27商品・サービスが登録されています。

――ねんりんピック開催に向けての抱負をお願いします。

 県では「人生100歳時代」を、全国でも先駆けて標榜してきました。100年の人生設計図をどう書くか。究極の目標は、死ぬ直前まで「いのち」が輝く人生、つまりいつまでも元気でいるということです。

 ねんりんピックはこうした県政の根本理念と合致する一大イベントです。80歳でラグビーに出場される方もおり、こういう人たちを見るだけで元気がもらえます。

 本大会を機に、未病がより全国へ広がることを期待します。

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(くろいわ・ゆうじ)
 1954年生まれ、神戸市出身。80年早稲田大学政経学部卒業、フジテレビジョン入社。報道記者として政治部・社会部、さらに番組ディレクターを経て88年より「FNNスーパータイム」キャスター。2009年国際医療福祉大学大学院教授着任。11年4月より現職(3期目)。

(シルバー産業新聞2022年11月12日号)

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