介護福祉士の職能発揮へ 施設に「個別介護計画」位置づけを

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介護福祉士の職能発揮へ 施設に「個別介護計画」位置づけを

 介護福祉士の価値を創出する――。日本介護福祉士会(及川ゆりこ会長)が今後の事業展開に掲げた重要課題だ。次期2024年改定では、施設サービスにおける介護福祉士の計画作成の制度化をめざす。そのための調査研究事業を今年度立ち上げ、介護福祉士の関与による利用者・事業所への影響をエビデンスとして示していく。「データ収集には現場の協力が欠かせない」と及川会長。低迷する組織率の回復にも、介護福祉士一人ひとりが情報発信する環境づくりが大切だと述べる。

 次期2024年改定に向けては、介護福祉士の役割が制度上より明確化するよう求めていく。具体的には、介護施設における「個別介護計画」の作成を介護福祉士が担うよう、検討を進めているところだ。

 訪問介護の訪問介護計画はサービス提供責任者(サ責)による作成が必須とされており、サ責の多くは介護福祉士が担っている。しかし、施設では介護計画を包含する形でサービス計画がケアマネジャーによって組まれ、介護福祉士が携わっていないケースもある。

 サービス計画は、リハビリ計画や栄養ケア計画など、各専門職が作成した支援計画と連動する形で構成されている。個別介護計画もその構成要素の一つとし、介護福祉士が担うことで専門性が発揮できると考える。

職能のエビデンス 研究事業で示す

 ただ、これらの実現に向けては介護福祉士の価値・役割に関する情報発信力がまだまだ弱い。当会では①介護福祉士の在り方や課題の分析・検討・整理②都道府県会と方向性を整理し調整③職能団体としての意見書や声明、要望書のとりまとめと発信④全国の関係団体、厚労省との折衝・調整⑤発信する事項に根拠を持たせるための調査研究事業の実施・整理――の5つの役割を設け、取組を進めている。

 特に⑤に関して、これまで会独自の調査研究はほとんど行われてこなかった。間もなく調査研究部門を立上げ、毎月のアンケートや情報収集を強化する。2~3年以内には一定のエビデンスを示し、報酬改定への要望等につなげていきたい。

 調査項目は検討段階だが、例えば認知症対応。レビー小体型認知症の人に対し、生活の視点で介護福祉士が関わった場合、医療的ケアのみの場合に比べ症状が改善した事例は幾つか報告を受けている。データを集めれば有意性が示せるのではないか。国が推進するLIFEにも大いに期待している。介護の質を言葉で説明できる機会が、今後増えてくるだろう。

 また、介護人材不足が続く中、今後アクティブシニアや子育て世代、外国人など多様な働き手が混在してくる。これらを束ね、指導するリーダー的な役割をぜひ介護福祉士に担ってもらいたい。受講者が伸びている当会の介護職員の技能実習指導員講習は、介護技術に加え文化・生活面へのサポートも盛り込んだ内容となっている。

組織率向上へ情報発信力を強化

 データ収集には何より、現場の協力が不可欠。だが、当会の会員数は現在約4万人で、これは介護福祉士180万人のわずか2%台にとどまる。資格保有者の過半数が会の存在を知らないとの実態も。国家資格を持つ人が職能団体に属するのはごく自然な流れだと思っていただけに、この結果には愕然とした。

 入会しない(退会)理由の多くは「メリットを感じない」。これを打破するには、知識・技術の習得(インプット)だけではなく、一人ひとりに情報発信(アウトプット)の役割を担っていただくことが重要だと考える。

 例えば、私が所属する静岡県介護福祉士会では10年ほど前から「ケアコンテスト」を毎年実施している。トランスファーボードなど、福祉用具等を使う介助場面を設定し、介護技術を競うもの。介護技術を高めることと、発表・表彰(情報発信)を重視したものだ。

 当会でも先述の調査研究事業等を通じ、介護福祉士が発信する専門性や多く国へ届け、さらに、その結果として制度等に反映する実感を現場で持っていただけるよう、この活動を全面的に推進していきたい。この活動が進めば、自然と会員増につながっていくのではないかと考える。

 あわせて、入会手続きの簡素化も進めている。紙ベースの申込書を電子化し、スマートフォンから登録できるシステムを年内に導入する予定だ(談)。

(シルバー産業新聞2021年9月10日号)

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