「我が家のお風呂で温まりたい」入浴支援
福岡医健・スポーツ専門学校副校長 河口青児さん
入浴は、清潔を保つだけでなく、疲れを癒し解放感が得られ、日々の生活の楽しみの一つでもあります。特に湯船につかるという日本人特有の行為は、温熱作用(体を温める)や水圧作用(血流アップ)、浮力作用(筋肉や関節を緩める)などで、疲労回復を促進します。
今回は、「寒い冬でも家のお風呂で温まりたい」と希望する利用者のケースを紹介します。
今回は、「寒い冬でも家のお風呂で温まりたい」と希望する利用者のケースを紹介します。
シャワーチェアなどを設置
Aさん(90代女性・要介護2、主介護者次男)は、両側性変形性膝関節症にて歩行などに支障があり、入浴・歩行能力の維持等を目的にデイケア(週3回)を利用し、在宅生活を維持していました。秋が深まる頃、本人より「寒い日は家で湯船につかって温まりたい」との希望があり、リハビリスタッフや福祉用具専門相談員等を中心に福祉用具の検討を行いました。
膝が十分に曲がらず、立ち上がりや浴槽のまたぎ動作等を考慮し、洗い場にシャワーチェア(写真1)を置き、浴槽への出入りは、座位のまま浴槽内を昇降できるバスリフト(写真2)を設置し、膝を伸ばしたまま安全に湯船に入れるよう配慮しました。
また、次男が腰痛により介助できないため、ホームヘルパーを利用(週3回程度)することで寒い冬場も自宅で入浴ができるようになり、より本人らしく在宅生活を過ごせるようになりました。
要介護リスク軽減の研究報告も
このように、上手く入浴支援用具を導入することでご本人のQOL(生活の質)の向上に繋がる場合もあります。毎日湯船につかる高齢者は、要介護になるリスクが減少するという研究報告(図)もあり、手すりの利用や座位姿勢から浴槽に入る方法を取り入れるなど、安全に湯船につかり、入浴を楽しむことで介護予防にも繋がります。
最後に、今回ご紹介した入浴支援用具は、介護保険の「特定福祉用具販売」の種目の1つとして、1〜3割の自己負担で購入できる仕組みがあります。詳しくはケアマネジャーや福祉用具専門相談員等にご相談ください。
(事例提供:医療法人社団廣徳会岡部病院)