24年改定 介護給付費分科会 サービス別の審議開始
厚生労働省は6月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催した。サービスごとの議論がスタートし、今回は①小規模多機能型居宅介護②看護小規模多機能型居宅介護③認知症対応型共同生活介護④定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護――について、事務局が論点を示し、意見が出された(表)。小多機の普及策として利用開始後も「利用者がこれまでの居宅ケアマネを選択できるようにすべき」との声が複数あがった。認知症GHでは前回に引き続き、夜勤体制の緩和ですでに攻防が始まっている。定期巡回と夜間訪問の両サービスの統合については目立った反対意見はみられなかった。
小規模多機能型居宅介護
兼務制限の緩和なども今後の検討課題となりそうだ。小多機の管理者は、他サービスの管理者と比べて兼務可能な職務が限定されていて、同一敷地内の通所介護の管理者を兼務できず、緩和の検討を求める意見があった。
看多機 特定看護師など配置への評価を主張
さらに田母神委員は、「当協会が昨年度に実施した調査では、ターミナル期の利用者の場合、点滴などの医療処置や泊まり、訪問の回数が多く、ケアの密度が高かった。緊急時の宿泊は包括報酬の中で対応しており、事業所では日中夜間ともに看護職員を多く配置して対応している現状がある」と報告し、緊急時の宿泊についての評価も求めた。
認知症GH 医療強化、外部連携での対応求める意見
GHでの医療ニーズへの対応について、厚労省は医療連携体制加算の(Ⅱ)(Ⅲ)の算定実績が少ない点を説明。その理由は、「看護職員を常勤換算で1人以上確保できない」が75.2%で最も多い。また、「医療ニーズを持った方の入居を断ることがある」と答えたGHは7割超、「退去を求めることがある」も半数超に上ることなどが説明された。
全国老人福祉施設協議会参与の古谷忠之委員は「事業所内の医療系の職員もまだ少なく、通院の付き添い等にも人手が必要。訪問診療などによる医療体制の強化が必要」と外部の医療機関との連携で対応すべきと強調した。
前回に引き続き、夜勤体制の緩和で攻防
前回改定では、3ユニットのGHで、各ユニットが同一階で隣接している場合などについて、「3ユニットで2人以上」に緩和できるように見直した。ただ、昨年8月時点で緩和している事業所は全国で9事業所に止まっている。
全国健康保険協会理事の吉森俊和委員は、「ICT活用などにより、特段の課題がなければ、GHの夜勤体制も施設サービスと同じく2ユニットごとに1人以上配置の緩和を検討すべきではないか」と主張した。
一方、日本労働組合総連合局長の小林司委員は、「夜勤は休憩時間すらきちんと取れていないという声もある。安全面やケアの質の観点からも、夜勤の配置基準は安易に緩和してはならない」と反対の姿勢をみせた。
定期巡回/夜間訪問 両サービス統合へ
「地域提供型には十分な報酬を」
全国市長会の山岸参考人は「地域によっては、訪問に長い移動時間を要し、効率的なサービス提供が難しいという意見がある。現状の報酬単価では採算が取れず、事業者に参入してもらえない地域もあることから、実情も十分に踏まえた上で報酬単価の見直しを行っていただきたい」と訴えた。
第218回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33719.html
(シルバー産業新聞2023年7月10日号)