地域特集・兵庫 2040年以降も見据えて介護人材確保に注力
兵庫県は南北に長く、日本海と瀬戸内海の両側に接する。都市部・山間・島嶼部といった文化・生活圏の多様性も特徴。高齢化の進むオールドニュータウンや、1995年の阪神淡路大震災以降盛んなボランティア活動も、現在では地域の見守りを担う人材が高齢化するなど取り組むべき課題も多い。
介護ニーズの地域差に向かい合う
兵庫県福祉部高齢政策課長の田畑司氏は「コロナ禍や建材・材料費高騰の中でも、概ね目標値は達成できそう。介護医療院も介護療養等からの計画的な移行によって、最終年度に達成が見込まれる」という。また、北部の但馬地域はニーズがすでにピークに近づいているのに対し、大阪府に隣接する尼崎市、西宮市、芦屋市、宝塚市などの阪神地域はニーズの増加が見込まれている。
介護生産性向上と人材確保・定着のために
同課副課長の河部大氏は「コロナ禍で当初の予定通りに進めることが難しかった。新型コロナの5類移行もあり、最終年度で積極的に取り組んでいきたい」と語る。
中でも重点的に取り組むのが人材確保。40年時点で20年度より介護職を3.5万人増加させるため、介護ロボットやICT活用などにより介護生産性を5%向上(必要人数6000人削減)させ、残りの2.9万人増加分を処遇改善や外国人材受け入れ、介護助手の採用施設の拡大などで乗り越えていく(表)。
年度内の介護生産性向上総合相談センター開設
これまでも21年度に基本編、22年度に応用編(実機使用による伴走型支援)と取り組んできたが、23年度は国の推進する「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」を開設し、ワンストップで各種制度・省庁横断の相談・支援が受けられる体制を整える。
地元好きな、幅広い世代の「介護助手」確保
総合事業充実のための民間連携
たとえば買い物支援として、共同購入・訪問販売を展開する民間と協力し▽訪問販売サービスの会員となってもらい食材・日常生活用品等の買い物をしやすくする▽「通いの場」を会場に訪問販売を行い、地域高齢者の参加意欲を高める――など、買い物を通じた社会とのつながり作りを促進する。
ほかにも、住民主体の訪問型サービスB拡充のために、シルバー人材センターから人材を派遣してもらうことや、共生型助け合い活動の拡充を老人クラブの協力を得ながら進める。
ハラスメント対策強化で働きたい職場に
訪問先でのハラスメント被害対策のため▽「2人訪問補助」(29市町で実施)として、2人訪問の必要があるものの、本人や家族に加算の同意が得られない場合に加算相当額の3分の2を補助▽「1人訪問補助」(6市町で実施)として、2人訪問体制が難しい事業所に、安全対策に要したセキュリティシステム導入費用の一部を補助――などを実施する。
外国人材の「層の厚み」目指す
「兵庫県に永住して働いてもらえるような支援策を充実させる。人材の層が厚くなれば、新人などの職場での悩みや相談にも応じてもらいやすくなる。定着率も向上するのではないか」(河部氏)。
人材確保の難しい地方部への支援
「介護人材確保と介護生産性向上の取組は、次期9期支援計画以降も重要なテーマとなると考えている。8期最終年度の今年度から、しっかりと取り組んでいきたい」と田畑氏は中長期的展望に基づいて、事業支援を推進していく考えを説明した。
(シルバー産業新聞2023年6月10日号)