日慢協・武久会長「BI利得」推奨 判断基準がFIMより具体的
1987年に介護老人保健施設(老健)が創設されると、PTまたはOTが1人必置になり、セラピストの需要が高まった。2000年の回復期リハビリテーション病棟の創設は、入院患者の在宅復帰に大きく貢献した。
リハ職が一気に増えたことで、リハビリテーション体制が医療分野だけでなく介護分野まで拡大。医療のリハビリは、20分間を1単位とする、療法士との1対1のリハビリテーションから、ADL(日常生活動作)向上というアウトカム評価(成果)が問われる状況に変わった。19年度から、要介護者に対する、医療保険の疾患別リハビリテーションの算定日数上限を超えた維持期(生活期)リハは、要介護者の外来リハが介護保険の通所・訪問リハへ完全移行している。
今年度の介護報酬改定では「自立支援・重度化防止」が掲げられ、科学的介護の推進とともに、介護分野においてもリハビリテーションの成果が求められるようになった。
こうしたなかで、ADLの改善状況を評価するために、BI(バーセルインデックス)やFIM(機能的自立度評価法)などの評価方法について評価の精度や使いやすさが検討される状況になった。
BIとFIMの長所・短所
BIは、長らくリハビリテーション領域で最も用いられるADL評価法だったが、わかりやすい反面、リハ職には物足りない感があるとされてきた。
両者の長所・短所はつぎのようになる。BIは細かな能力変化を捉えにくい、認知項目がない、生活で行っているADLを反映していないなどの短所がある反面、簡便で採点しやすく、評価者間で差が生じにくい、本人・家族も理解しやすいという利点がある。一方、FIMは、採点にスキルが必要で、ベテランと新人で差が生じやすい、本人の意欲等に影響を受けやすいなどの短所と、細かな能力を捉えやすい、認知項目が含まれる、実際にしているADLで評価できるなどの利点がある。
なぜ、評価者間での差がFIMでは大きく、BIはその差が少ないか。FIMは1項目7点評価だが、たとえば、最低点の1点は「全介助、25%未満しか自分で行わない」など、具体的な判定基準がなく、評価者による差が生じやすい。
一方、BIはたとえば「食事」であれば、10点「自立、手の届くところに食べ物を置けば、トレイあるいはテーブルから1人で摂食可能、必要なら介護機器をつけることができ、適切な時間内で食事が終わる」、5点「食べ物を切る等、介助が必要」、0点「全介助」。基準の記述が具体的で、判定しやすい。
決定的になったのは、2016年から医療保険に実績指数導入が始まったことだ。FIMが導入され、リハビリテーション実施前後でどれだけADLが向上しているのか(FIM利得)を出して、診療報酬に反映させるようになった。
低下傾向の「入院時」FIM評価
厚労省のデータからFIMの推移をみると、15年度(発症から入棟までの日数26.6日)は入棟時74.1点→退棟時91.1でFIM利得17.0点、これが18年度(同24.0日)には入棟時68.9点→退棟時92.1でFIM利得23.2点に増加した。
私は、16年度の実績指数導入により、FIM利得の引上げが事業収入に欠かせなくなり、報酬が取れる要件まで、入院時FIMを恣意的に引き下げる状況が出ているのではないかと懸念している。今後は、入院患者のADLの変化は動画に残すなどして、第3者による検証ができるようにすべきではないかと私は考えている。
変わらなかったFIM利得、 BI利得
今後のLIFEに期待
厚労省も財務省も、平均余命を延ばすという同じ方向を向いているが、高齢者はまだまだ増える。歩いて入院したのに入院中に歩けなくなる現状を思うと、急性期にもリハスタッフを入れるべきだろう。出来高払いからアウトカム評価へ大きく流れが変わるなかで、包括報酬制の導入も進む可能性がある。急性期の病院には医療職が医療に集中できるためにも介護スタッフの配置を積極的に考えるべきだと思っている(談)。
(シルバー産業新聞2021年8月10日号)