マイナ保険証問題で利用者にヒヤリング

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マイナ保険証問題で利用者にヒヤリング

 6月9日に「マイナンバー法等の一部改正法」が公布され、マイナンバーカードと健康保険証の一体化が掲げられた。これを受けて、東京都練馬区のケアマネジャー小島操さんは、利用者からこの件についてよく質問されることから、改めてヒヤリング調査を行い、介護医療の有志らが開いたオンライン学習会で公表した。学習会は、8月3日、「ホントにこれでいいの?マイナ保険証?!~マイナ保険証からマイナカードを問う~(主催:ケア社会をつくる会「マイナ保険証」ワーキンググループ)。

 ヒヤリングしたのは小島さんが担当する利用者30名で、すでにマイナカードを持っている人は9人いた。利用者にとっては、健康保険証はかなり身近なもので、マイナカードと健康保険証が一体化することに無関心ではなかった。

 「本当に健康保険証と一緒になるんですか?」「カードがないと医療にかかれなくなるのですか?」「受診すると10割負担ですか?」と聞かれ、どこにも聞けないためケアマネに聞いたのだろうと小島さんは話す。

カードの手続き
 カードを持っている人9人のうち、4人が自分で手続きをした。要介護1程度の時に作ったようだった。これがそうかしら?と財布から見せてくれる人がいたが、この人は認知症が進んでしまい、分からなくなっていた。暗唱番号は覚えていなかった。

 自分で作った人は、受け取りは本人が出頭し、写真を持っていくので、それができるのは今だけかもしれない、と思って作った。次は更新できない、年をとると手続きができなくなるという声もあった。家族が作ったという人は、写真照合があるため、本人を連れていけるうちに作った。暗唱番号は家族が作っている。

 カードを持っていない人に、「カード持っていますか?」と聞くと、「持っていないと困るの?」と聞き返される。一人暮らしの高齢者ではまったくカードの存在すら知らない人もいた。通知カードもどこかへ無くした人もいた。

マイナカードを作った理由
 自分で手続きした人は、役所から通知がきて、これは大変だと思って作った。今やらないと自分はできなくなり、家族に迷惑がかかるのはいやだからと回答した。

 作った家族は、身分証明書の代りに作ったと回答。暗唱番号も含めて使用はすべて家族管理にしている。家族管理について小島さんは、権利擁護の問題に触れるのではないか。場合によっては、マイナカードによる何らかの虐待が出てくる可能性も否定できないと話した。

マイナカードの使用状況
 マイナカードを使っているかを聞くと、30名のうち誰も使っていなかった。携帯してなくすと大変だからしまってある。拾った人が悪用したら困るが理由だった。すべてが1枚になるので、落としたら本当に大変だ、だからしまっておく、という声もあった。

マイナカードと健康保険証の一体化について
 病院やクリニックに読み取り機械が置いてある事は知っていた。しかし、保険証があるうちは保険証でいいわ、という声もあった。また、寝たきりの人はどうしたらよいか、という意見もあった。家族がまたやるのか?という声も聞かれた。家族がやるのか、という声は非常に重要で、何でも家族が最終的にやらなきゃいけない、という家族介護の疲弊が伺えた。

 逆に、本人は家族にやってもらおうとは思っていない。だから、たとえ100歳まで生きても、保険証は受け取れる仕組みが欲しい。私たちは保険料はちゃんと払ってきている。何の目的でこの国はカードを作ることになったのか?と質問され、小島さんも返答に詰まった。

 他にも、ヘルパーが保険証を預かって薬を取りに行く時に、カードをもっていかれるのはいやだ、暗唱番号を教えるのはいやだという声もあった。施設に行く時はカードを施設に預けるのだろうか?東京都の場合、後期高齢者医療の減額認定証明書は紐付けされるのか、これだけは紙でもっていくのか、と細かいことまで気にしている人もいた。誰も答えてくれないのでなおさら不安な様子だった。

調査結果より
 高齢者は山のように疑問をもっている。国が推進したことの目的や未来像が理解できていない、理解できる丁寧な説明がない、ということだと思う。国の説明によって国民の理解が進めば、便利さや重要性が分かるが、現場はそこまでいっていないのが現状だと思う。

 ケアマネとして、利用者の疑問を自分が説明できないのも残念に思っている。介護保険制度もこんなに制度が変わっていくのに、最後に知らされるのは利用している高齢者たち。よく「いつ変わったの?」とよく聞かれる。説明がなされないうちに、ことがどんどん先に進んでいく。その結果、制度への国民の信頼は失われていくのだと感じる。市民に対して、分かりやすい言葉で話して欲しい。

 特に認知症の方は増えていて、認知症があっても私は一人暮らしを続けたい、と在宅で頑張っている高齢者がいる。その意思を尊重するためにも、分かりやすいものでないといけない。これから共生社会を言うならなおさらだ。

 誰もが年を取り、不自由になり、手続きを申請したり、更新したりすることが出来なくなる。大事な健康保険証のようなものが、申請しないとこない、というは困る。中には、戦争を体験した人から、すべてが国に管理されるということは、そんなに便利なのですか?と聞かれて驚いた。管理される意味や便利さの意味も考える必要があると感じた。

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