BCP策定まで残り1年 利用者の生活継続に不可欠な備え
2021年度介護報酬改定で全介護サービス事業所に災害と感染症の業務継続計画(BCP)の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)が義務化され、24年3月末まで経過措置期間となっている。計画策定の猶予期間である来年3月末まで残り1年を切った。今号では災害BCPなどを担当する厚生労働省老健局高齢者支援課の尾西喬弘係長に、BCP義務化の背景や意義について聞いた。
利用者と家族の生活を支えるための介護サービス継続
災害時において、介護サービスは利用者やその家族の生活継続のために欠かせない非常に重要なサービスだ。
目下の新型コロナウイルスや昨今相次ぐ自然災害の中で、業務継続に備える重要性が認識されてきた。しかし、BCPは施設内での検討や地域連携など、策定に向けてさまざま課題がある。また策定後に、実際に災害を経験する中で計画に不足が見つかったり、変更が必要な部分も出ている。
災害というのは決まった時間に発生するのではない。今日にも明日にも発生する可能性もあるのが自然災害だ。ぜひ事業所全体で災害や感染症発症時の対策について考えていただきたい。
研修動画やひな型公開中
現段階ですぐに活用いただけるツールとして、厚生労働省のホームページに▽業務継続ガイドライン▽感染症、自然災害BCPのひな型▽BCP策定研修の動画――を公開している。
自然災害は▽地震▽津波▽台風や豪雨▽洪水▽豪雪▽火山噴火など多岐にわたる。地域によって発生頻度は異なる。BCP策定にあたって、過去の経験なども踏まえて、事業所の課題を把握するところから取り組んでいただきたい。
2022年度老健事業で日本医療福祉建築協会が「介護施設の防災・減災ガイドブック」を作成した。被災した施設の体験談、災害に関する基礎知識をまとめた専用ホームページで公開しているので、ご活用頂きたい。
地域ケア会議や担当者会議でもBCP議論を
災害発生時に事業所だけで対応が全てできるものではない。利用者の生活を守るためには、自治体、医療機関や別の事業所など、地域の広範な人々とつながっていることが必要だ。
厚生労働省が公開しているBCP策定ガイドラインでも、他施設や地域との連携を挙げている。地域連携は業務継続計画の大切な視点だ。
全国各地で、日ごろから地域ケア会議や担当者会議といった多職種や地域の事業所と情報共有する場をもっていただいているが、これらの場で災害やBCP義務化などについて議論するのも方法の一つだと考えている。