熊本県長洲町 コロナ禍からの再起

NO IMAGE

熊本県長洲町 コロナ禍からの再起

 熊本県長洲町(人口1万5501人、高齢化率36.6%=2022年11月)の介護予防事業は、住民主体の取組による「通いの場」作りで実績を残しており、厚生労働省や自治体の間でも成功事例として注目されている。そうした長洲町の通いの場であるが、コロナ禍により参加者は7割程度(2018年と21年度の対比)に減少した。新型コロナも5類となり、徐々に社会が正常化する中で、参加者の再獲得を目指した同町の巻き返しが始まる。

 長洲町の通いの場は、空き住居などのリノベーション型の公民館や集会所を活用し、送迎不要の徒歩圏内にきめ細やかに整備しているのが特長。会場運営も運動指導の講習を受けた地元住民が、馴染みの参加者と共に「自分たちで運営すること」を愉しみながら、自主的・主体的にプログラムを作成し、活動を軌道に乗せてきた。
 同町では国の制度に先駆けて、08年度に1週間に1回をめどに通いの場の開催を始めたが、ボランティア高齢者の自主的・主体的な活動が広がる中で盛り上がりを見せ、最盛期の18年度は町内で1701回開催・延べ1万6494人が参加するまでになった。

 取材に訪れた集会場では、元気そうな高齢男性が「この会場での今月と来月のプログラムです」と用紙を差し出す。男性は当日の進行担当のボランティアの運営スタッフ。配布された用紙には「元気アップ体操」「カラオケ教室」「話楽会(井戸端会議)」など7つの月間スケジュールが並ぶ。

eスポーツやYouTube配信で無関心層の開拓も

 その後、世界中がコロナ禍となる中で、人と人の接触機会を減らすことが求められたことや、高齢者は感染時の重症化リスクが高いとされたことなどから、21年度には1441回開催・延べ1万1000人の参加まで落ち込んだ。
 同町介護保険課の宮本孝規課長は「課長就任前の09年から、通いの場づくりの最前線で取り組んできた。コロナ禍で全国的には通いの場への参加の落ち込みが激しいとされる中、1万1000人の参加者維持は高齢者に定着している証ともいえるが、フレイルのリスクがある高齢者が増えたことを懸念している」と話す。

 そうした中、同町が考えたのがeスポーツの開催やiPadを使った脳トレーニングの実施、YouTube配信、通えない人のためのICT活用(オンライン開催)など。町内にある高齢者のための施設「げんきの館」にWi―Fi環境を整備しオンライン開催ができる体制も整えた。
 「通いたいけど通えない人はもちろんのこと、これまで関心がなかった層の参加にもつながるのではないか」(宮本氏)と期待を寄せる。

参加者の高齢化をどうする?

 参加者の高齢化も課題。現在の参加者は70歳以上が中心で、60歳代の参加者の掘り起こしが求められる。
 同課地域支援係の中原貴裕係長は「次の世代の高齢者の参加に繋げる必要がある。自治体の仕事は、けん引役ではなく、主体的な住民参加が進んでいない地域の方々の後方支援をすること」と心構えを話す。
 また「通いの場が地域での見守りの役割を果たしている側面もある。特に一人暮らしの高齢者にとって、体調変化や介護状態になり始めた場合に、周囲に早く気付いてもらえる。必要により介護予防事業から、介護保険や医療につなぐこともできるようになる」(中原氏)と、介護予防を通じ介護や医療に結びつける役割を説明する。
 通いの場づくりの成功事例を示してきた同町には、コロナ禍で苦戦する通いの場の再起の方法でも期待が寄せられている。

元のページを表示 ≫

関連する記事

続きを見る(外部サイト)

ケアニュースカテゴリの最新記事