長野県 地域包括ケア体制の構築状況を見える化
長野県は、平均寿命や健康寿命が男女ともに全国トップレベルであり、高齢者の有業率も全国1位となるなど、わが国屈指の健康長寿県となっている。同県の介護保険について、県庁や注目の保険者、事業者を取材した。
認定率が減少傾向
また、県民の健康増進を図る運動「信州ACE(エース)プロジェクト」の展開と併せて、地域包括ケア体制の構築を目に見える形で進めてきた結果、要介護認定率が2014年の17.5%をピークに、減少傾向に転じている。性別や年齢調整を行った上での要介護認定率は、20年度時点で13.9%と、全国で2番目の低さとなっている。
40年に85歳以上の高齢者が1.5倍に
独自指標で地域包括ケアの進捗を把握
たとえば、地域包括ケア体制の構築では、第7期から約390項目におよぶ指標を用いて、市町村の地域包括ケア体制の進捗状況を県独自に把握してきた。その結果、第7期(17年度~19年度)の3年間で、県全体の地域包括ケア体制の進捗率は、56.1%から66.0%に増加している(図)。
生活支援コーディネーターが配置され、具体的な取組みが進んだことにより、地域資源の開発が行われ、食材配達や移動販売などを行う圏域が増加したことや、リハビリ専門職による介護予防の取組への積極的な参加が進んだりしている状況が見てとれる。こうした進捗は、第8期計画の中で、圏域ごとにも公表しており、県民に地域包括ケア体制の構築状況を一目で確認してもらえるようにしてある。
さらに第8期からは、指標の見直しも行っていく。これまでは取組状況の有無や、整備状況を中心に指標をつくってきたが、今年度からはアウトカムを中心にした指標に改める。たとえば、「医療と介護の連携」では、中間アウトカムとして▽ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の実施割合▽入院時の情報提供率▽入退院調整の実施率――などを新たな指標とし、最終的に在宅死亡率や老人ホーム等死亡率がどのように変化したかを把握するなど、より質の高い地域包括ケア体制の構築を進めていく。もう一つが、県民や利用者の立場から考えて、自分たちの地域にどのようなサービスがあるのか、そこも〝見える化〟することが大事だ。介護サービスや生活支援サービスなどの情報をまとめ、最終的には県民にお配りできるマップのようなものを作っていきたいと考えている。
訪問介護20年度廃止9カ所 休止3カ所
具体的な取り組みとしては、希望する施設などで働きながら資格を取得して、入職を促進していくマッチング事業を行っており、昨年度は130人の採用実績がある。こうした枠を増やしていくことや、他部署とも連携して、長野県への移住希望者に対して、介護の仕事を紹介してもらう取組を進めるほか、介護助手のような元気高齢者の受け入れなど、介護人材確保の裾野を広げていく。一方で、介護ロボットやICT機器などを導入することにより、介護現場の負担軽減を進め、離職防止につなげていくことや、高知県で取り組まれている「ノーリフティングケア」のような考えを積極的に取り入れて、介護職員の腰痛予防など、職場環境の改善を進めてもらうことなども必要になってくる。
自分らしく安心して暮らせる信州
第8期計画で掲げた計画内容を着実に進め、長野県が目指す地域包括ケア体制をさらに深化させていきたい。