中間層が支える介護保険

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中間層が支える介護保険

 全国社会福祉協議会の古都賢一副会長は、「介護保険給付費は、地域経済を支えている」と本紙で語っている。実際、日本全国で朝夕にデイサービスの送迎車が町々を走り、「銀座通り」は廃れても、全国の病院通りは医療介護の複合拠点として林立し地域の高齢者をしっかり支える。

 人々の就業状況をみても、すでに医療や介護、福祉分野で働く人たちは全就労者の8人に1人に達し、2040年にはこれが5人に1人と予測される。外国人介護人材は、就労環境が改善すれば、欧米各国のように、介護分野の外国人就労が当たり前になるかも知れない。

 一方、社会・財政面からみると、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の改革)2022」(6月7日閣議決定)は、「中間層を支え、その厚みを増す。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という社会保障の構造を見直し、能力に応じて皆が支え合うことを基本とする」と方針を示した。しかし、すでに決定していた10月からの75歳以上の医療費への2割負担導入はそのままに、負担能力に応じた負担の在り方の総合的な検討を進めるとした。骨太方針は「中間層を支え、その厚みを増す」としながらも、10月から後期高齢者医療制度は、約30%にあたる75歳以上の人たちが、2割(一定以上の所得=200万円以上)、3割(現役並み所得=383万円以上)の自己負担になった。

 いま社会保障審議会介護保険部会の場で提起されている「給付と負担」論議で、2割負担の収入額(後期高齢者医療保険とは異なり、現状280万円)の引き下げが論点に上がっている。「中間層」は医療と介護双方から費用増大のダブルパンチを被る。介護保険は応能負担の増大によって、「中間層」の医療・介護ニーズを支えるという制度の基本が薄れてきた。(古都全社協副会長インタビューは12月号より掲載します)

(シルバー産業新聞2022年11月10日号)

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