関シル特別座談会 研修で介護の質向上へ

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関シル特別座談会 研修で介護の質向上へ

 主に近畿圏の福祉用具・介護サービス事業者など65社が加盟する、関西シルバーサービス協会(大阪市、記虎孝年理事長、以下関シル)は、会員相互の研鑽を図りながら、介護サービスや福祉用具などに関わる様々な情報発信を手がけてきた公益社団法人だ。新型コロナウイルス感染拡大や介護人材不足など、介護のあり方が大きく変わろうとする中、自立支援に資する介護サービスを追求する事業者団体として、これまでの活動や今後の取り組みについて、同会役員の皆さんに語ってもらった。

<出席者>
理事長 記虎孝年氏 (ウィズ 社長)
副理事長 平岡庸輔氏 (星光医療器製作所 専務)
副理事長 福田光正氏 (エルフ 社長)
副理事長 山田隆司氏 (ひまわり 会長)
理事 島義弘氏 (島製作所 社長)
理事 高木克彦氏 (パシフィックサプライ 取締役)
理事 橋本清尚氏 (ライフケアひまわり 社長)

福祉用具啓発で人材不足とコロナ禍へ対処

 ――まず、多岐にわたる関シルの取り組みについて。

 記虎 当協会は1988年に、今後の高齢化社会を民間事業者の力でより良くしようという思いと、業界発展の願いを込めて設立した。それ以来、会員相互の研鑽や介護・福祉用具の様々な情報発信などを重ね、2000年に社団法人化を果たした。さらにその後、それまでの活動の公益性の高さが認められ、11年に公益社団法人へ移行した。福祉用具の普及や高齢者・障がい者の自立支援・QOL向上などを目指し、研修・展示・情報発信に努めている。

 11年からは大阪府からの委託で、大阪府地域福祉推進財団との共同企業体として、大阪府介護情報・研修センターを運営し、福祉用具展示場の運営と専門職向けの資質向上研修を開催している。研修では、自立支援型ケアマネジメント、認知症ケア、福祉用具を活用した介護技術、感染防止策――など、実践的な内容で、好評を得ている。

 また、テクノエイド協会との連携による福祉用具プランナー研修やリフトリーダー養成研修をはじめ、福祉用具専門相談員更新研修、車いすの調整・シーティング、安全な移乗など、幅広い内容の研修も展開している。

 毎年大阪で開催される展示会「バリアフリー展」では、当協会主催で、厚労省の福祉用具・住宅改修指導官や専門家らを招き、福祉用具をテーマにシンポジウムも開催している。

 関シル理事長として、全国の介護実習・普及センターや介護・福祉関連団体などからなる「全国福祉用具相談・研修機関協議会」の代表もさせていただいている。ここでは、例えば全国に福祉用具の専門家を配置し、フィッティング体制を整備するなど、用具普及へ向けたプラットフォーム構築を目指している。

平岡庸輔副理事長

平岡庸輔副理事長

 平岡 私は当協会で、福祉用具プランナー認定講習の担当をしているが、コロナ禍で通常開催が難しくなる中、昨夏からeラーニングを始め、秋からは大阪府が掲げる感染予防策に準じた対策をとって集合研修を再開した。福祉用具を用いた実技中心の研修となるが、できるだけ密にならないよう工夫して行った。
福田光正副理事長

福田光正副理事長

 福田 関シルは、他の職能・事業者団体のように一つの職種やサービスに特化しておらず、福祉用具メーカー、流通事業者、介護サービス事業者が交わってフラットに意見交換できるのが、最大の特色だ。サービス提供事業者の立場としては、福祉用具活用・住環境整備を図りながらの介護の質向上へ向け、毎月開催の理事会など様々な機会で、他業種の最前線に立つ方々から最新の情報を得られるのが大きい。
山田隆司副理事長

山田隆司副理事長

 ――各部会の活動状況について。

 山田 私は、介護情報・研修センターでの用具展示と研修を担当している。コロナ禍前の19年は展示場に年間2000人が来場したが、感染拡大後の20年は996人、21年は632人と減少している。一方で電話相談は、19年870件に対し20年941件、21年800件と推移し、相談ニーズは根強い。

 センターでの介護の知識・技術や福祉用具活用などの研修は、19年は年間40回実施し、定員2000人に対し1812人が修了した。コロナ禍の20年は回数・参加者を減らして開催し、21年は感染対策をとれば通常開催可能ということで、年40回・定員2000人で開催したが修了者は894人に留まった。介護事業所では、外部研修への参加を控える状況が続いている影響が大きい。より多くの方に参加いただくためオンライン活用も考えられるが、ここでの研修の特性として、実演・体験やグループワークなどが重要な要素なので、オンラインでは難しい。協会としては、引き続き最大限の感染対策を施して、より多くの方に安心して受講いただける取り組みを進めていきたい。

橋本清尚理事

橋本清尚理事

 橋本 私は、関シルでサービス部会長を担っている。コロナ禍以降実施できていないが、通常年1回、在宅協と合同の研修を行っている。ここでは、サービス事業所を対象に、最新の法改正や労務管理、介護技術などについて情報提供してきた。訪問介護では身体介護の提供が増える中で、福祉用具を活用した移動・移乗介助、住環境整備も含めて、より質の高いサービス提供につながるよう、工夫しながら取り組んでいきたい。
高木克彦理事

高木克彦理事

 高木 私は研修部会長をさせていただいている。関シル主催の研修は、実技指導を交えた福祉用具の選定・活用、介助技術に関するものがメインだが、コロナ禍以降、通常の形での実施が難しい。そこで先日、テクノエイド協会主催の車いす姿勢保持基礎講習をオンラインで実施したが、残念ながら2人しか参加がなかった。双方に車いすを用意し遠隔で調整の指導などを行うのは、やはり難しさがあった。しかし今後も、現場の皆さんがより参加しやすい形での、実技を交えた研修のあり方を模索していきたい。
島義弘理事

島義弘理事

  私は、協会の製造・卸部会長を務めている。当部会では、海外への日本の福祉用具の情報発信の取り組みとして、05年からしばらくの間、韓国・光州で開催の国際シルバー博覧会に毎年、協会として出展した。またその後、台湾の展示会にも出展し、日本の介護保険についてのセミナーなども開催した。今後、福祉用具製造・供給の立場として、健康寿命を伸ばし、幸せに暮らし続けられるよう支える製品を届けていきたい。国が40年までに健康寿命を3年伸ばすことを目指す中、多くの高齢者に介護予防・健康増進について意識していただけるよう、ソフト・ハード両面で発信・提案していきたい。
 ――会員増に向けて必要なことは。

 福田 コロナ禍の影響や介護報酬での評価などもあり、介護ロボット・ICT活用が急速に進んできた。関シル会員にはそれらを扱う企業も多く、製品開発の意図を聴けたり、介護現場からの意見を伝えられる。そのような異業種交流の魅力をもっと伝えたい。また関シル設立当初と比べ、今や多くの介護業界団体がある。今後、他団体との連携・協働を拡げ、業界としての声を取りまとめていけるような形を作っていくことで、入会の価値を感じてもらうことも一つだろう。

 橋本 最近は法改正の情報なども、ウェブで入手しやすくなっているので、会員にもより実務的な内容に絞り込んで伝えるなど、情報共有を工夫していく必要がある。特に在宅系サービス事業者の人材不足が相当深刻な状況である中、有効な介護人材確保につながる取り組みなど、事業継続に直結する的確な情報発信もしていかないといけない。

 高木 介護保険事業を軸にここまで拡がってきた業界なので、今後制度がどのような形になったとしても事業性を確保できる、新たな付加価値を備えた自費サービスのあり方についても模索していかないといけない。そのために、今後より多様化する高齢者のニーズを的確につかむ努力が必要で、そのビジョンが見えてくれば、必要なコンテンツをもつ新しい会員企業の獲得も見えてくる。

 福田 今後、混合介護の解禁も視野に入ってくる中で、介護サービスも今よりもっと自由な発想が拡がってくるかもしれない。その一方で、軽度者を中心とした過度な給付の絞り込みが行われないか注視し、必要に応じて声を上げて行く必要がある。

 山田 何より、介護を、この業界を良くしたいという人たちの集まりなので、様々な研鑽や情報共有の機会を通じて、相互に発信することで得られるものは大きい。

 記虎 会員企業は介護サービスから福祉用具まで幅広く経験も豊富で、高齢者介護なら「何でもある」のが関シルの強み。これまでの豊富な経験と知見をベースに、さらに日頃の業務でも新たな実践を重ね、さらに研鑽していくことで、今後の自立支援志向や科学的介護の推進でもお役に立てる協会・会員として認識されるよう、取り組んでいきたい。

 島 関シルには現場経験豊富な様々な業種の会員がいるので、メーカーとしては、製品改良・開発に有用な情報も率直に教えてもらえる。会員同士のネットワークを拡げていく中で、介護保険の枠に留まらない、高齢者の健康増進・自立支援・QOLの向上などにつながる製品づくりにも弾みがつく。

 ――今後に向けて。

 平岡 何より、公益社団法人として介護の質向上・福祉用具の普及に向け、大阪府から委託を受けている介護情報・研修センターも、もっと活用していかないといけない。すでに、メーカー/流通企業各社の協力で常に最新の用具やカタログなどが揃えられ、相談・研修の場として活用されているが、用具・介護ロボット・介護技術の府内随一の情報発信拠点として、もっとアピールしていきたい。

 福田 今後、現場では介護人材の定着が重要なキーワードだ。待遇改善やICT活用も含めた職場環境改善、誰もが働きやすい仕組みづくりなど、現場での様々な事例を集めて、それを横展開したい。

 橋本 オミクロン株による感染拡大以降、あちこちで感染者や濃厚接触者が続出し、ただでさえ人が足りない在宅介護事業所は壊滅的な状況になっているところもある。感染状況が落ち着けば、効率的なシフトの組み方など、今取り組めることで有用な方策を共有していきたい。

 山田 関シルでは、テクノエイド協会と連携し「大阪介護ロボットフォーラム」を開催するなど、普及に向けた情報発信にも取り組んでいる。今後、それぞれの介護現場のニーズとのマッチングや適切な活用については、こまめな支援が必要となる。そこで関シルとしてお役に立てる場面が、今後さらに出てくるだろう。

 記虎 協会としては今後、関係省庁や各団体とのパイプを緊密にし、制度動向など有用な情報の収集・発信にも力を入れ、さらに会員の事業展開に資する活動を拡げていきたい。コロナ禍で外出を控え、自宅で過ごすことが増えた高齢者も多い。適切な福祉用具の活用や住環境整備で、今できている生活動作を継続していただけるようサポートすることが必要だ。それを現場で実践してもらえるよう、地域の介護専門職に向けて展示や研修などで積極的に情報発信していきたい。

 今後も、業界団体でありながら公益社団法人という柔軟性と強みを最大限に活かして、関係各機関などとも連携しながら、超高齢化社会の様々な課題を解決する一助となれるよう、取り組んでいきたい。

【関西シルバーサービス協会の歩み】

1988年 近畿2府4県の介護福祉事業者が加盟し設立。初代会長は工藤学氏
1994年 大阪府立介護実習・普及センターの福祉機器展示に協力
1996年 郷上勲会長就任
2000年 社団法人化
2004年 北村政美理事長就任
2005年 韓国・光州国際シルバー博覧会出展。06年に中国大連高齢者福祉事情視察ツアー。16年に台湾SenCARE 出展とセミナー開催
2008年 藤山武伺理事長就任
2009年 リフトリーダー養成研修、福祉用具プランナー研修開始。
2011年 公益社団法人化
2012年 記虎孝年理事長就任
2014年 全国福祉用具相談・研修機関協議会入会
2015年 「セーフティケアカンファレンス」をJASPAリフト関連企業連絡会と共催
2018年 協会設立30周年記念式典

(シルバー産業新聞2022年2月10日号)

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