次期改定は6月施行の可能性も 介護給付費分科会で議論
厚生労働省は10月11日の社会保障審議会介護給付費分科会で、2024度の次期介護報酬改定の施行時期をテーマに取り上げた。診療報酬では、現場やシステムベンダーが答申や告示から短期間で改定に対応する負担などに考慮し、来年度の次期改定以降は施行日を従来の4月1日から6月1日に変更することが、8月の中央社会保険医療協議会(中医協)総会ですでに了解されている。これを受けて、介護報酬改定の施行時期も「後ろ倒しすべきか、現行通り4月のままか」という議題が示された。委員の意見は賛否分かれたが、介護報酬も施行時期が変更となる可能性が出てきた。
厚労省は、▽診療報酬改定と介護報酬改定のいずれにおいても、事業所の職員は短期間でサービス内容や事務の変更に対応する必要があり、その負担軽減は共通する課題▽訪問看護や居宅療養管理指導など、診療報酬・介護報酬の両方を請求している事業所が一定数あり、それぞれの施行時期が異なる場合、二度の対応が必要になる▽一方で、システム関連業務のベンダーの負担感は異なり、介護事業所では一部の場合を除き、改定時にベンダーの職員が現地で改修ソフトの適用作業を実施することがない――などの説明を行った。
その上で、「介護報酬改定の施行時期について、介護現場やベンダーの負担、医療と介護の給付調整、利用者のわかりやすさ、施行時期が変更された場合の事業所や介護保険事業(支援)計画への影響などを踏まえ、どのような対応が考えられるか」との論点を示し、委員へ意見を求めた。なお同省は、自治体が策定する介護保険事業(支援)計画について、「改定の時期に関わらず、2024年4月から27年の3月までの3年一期で、第9期計画を策定いただくことになる」とし、仮に施行時期が変わっても計画期間についてはこれまで通りだと説明した。
これに対して、委員の意見は賛否あった。主な意見は以下の通り。
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)
医療現場での診療報酬改定対応の短期集中作業の負荷は「デスマーチ」と呼ばれている。こうした負荷を軽減するために、施行時期を6月へ後ろ倒しすることに決まった経緯がある。システム改修費の軽減も期待されるところだ。介護でも「デスマーチ」は同様に存在することから、やはり介護報酬改定も6月施行にすべき。次期改定は、同時改定ならではの見直しも多々予測され、時期をずらすことは、医療と介護の連携に支障をきたすことになる。
田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)
介護保険サービスの利用者の多くが医療サービスも利用している。また、訪問看護サービスのように利用者の状態によって、介護保険と医療保険を行き来することもある。利用者の分かりやすさや事業者の取扱いに混乱が生じることを考慮し、介護報酬も診療報酬と同じ6月とすることが適切だ。
東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)
診療報酬改定の施行時期をずらす理由に、現場やベンダーの負担が大きいことが挙がっているが、介護でもLIFE導入以降、同様の状況になっている。診療報酬と横並びで施行時期を6月に遅らせるべき。
古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)
昨今の物価高騰や人件費の上昇を踏まえると、次期改定ではさらなる処遇改善を含む介護報酬のプラス改定をできるだけ早く実施してほしい。介護事業者の状況を考えると、4月施行が望ましい。
新田惇一参考人(全国知事会)
介護報酬改定が6月になることで、計画期間内に複数の介護報酬が設定されることとなり、自治体では介護給付費の見込みや介護保険料の算定にも影響を及ぼすことになる。介護保険は医療保険とは異なり、原則として市町村が保険者。提供されるサービスや負担する介護保険料が地域によって異なり、住民にとってもより身近で関心も高いため、できる限り、わかりやすくすることが重要。改定は4月の介護保険事業計画等の策定と同時に行うことが望ましく、自治体の意見を十分に聞いた上で慎重に判断してほしい。
山岸明子参考人(全国市長会)
改定が6月になることでの影響として、例えば処遇改善加算は年度での計画策定を求められていて、4・5月分と6月以降で加算の内容や要件が異なると、介護報酬の総額に一定の掛け率をかけて算出する見込み額の算定が難しくなるなどが想定される。仮に改定時期が6月になるのであれば、市町村が介護保険事業計画策定の際に介護給付と対象サービスの量を見込むにあたり、4・5月と6月以降の基本報酬が異なる場合に対応した「見える化システム」の提供など、自治体に対しての支援が必要。
厚労省「年末待たず、結論を出したほうがよい」
厚労省はこれらの意見を踏まえ、「引き続き、検討を行う」とした。結論を出す時期については、「年末の審議報告の時期を待たず、なるべく早く結論を出した方がよいと考えている」と説明している。