要介護認定率(要支援1~要介護2)が低い県・山梨
高齢化率は全国平均を上回るものの、要支援1~要介護2の認定率が低い山梨県。介護保険の現状や課題について担当課に聞いた。
人口の変化
65歳以上の高齢者人口は、25万3347人で、高齢化率は31.3%(全国平均29.1%)と、全国よりも早く高齢化が進んでいる。高齢者の数は、今後、2025年には約25.7万人に、40年には約26.6万人となることが見込まれている。
中でも医療ニーズや介護ニーズの高い85歳以上の人口が、25年には約5万3千人に、40年には7万2千人へと増加していくため、将来的に医療ニーズや介護ニーズ、日常生活への支援などのニーズが増加・多様化していくことが見込まれる。
高齢者人口の増加に伴い、介護が必要な高齢者も増加している。要介護高齢者の数は、昨年3月末時点で4万1273人となっているが、厚労省の調査によれば、2019年度の要支援1~要介護2の認定率(年齢調整後)が、全国で最も低くなっており、これが本県の特徴だ(図)。その要因について調査したところ、「自分は健康」「まだまだ介護のお世話にはならない」といった、県民の主観的健康観の高さや、身近に住む親族から日常生活の支援を得られていること、保健師が地域の特性にあった保健活動を展開していることなどが影響していることが分かった。こうした点をプラスに捉え、施策の立案や地域づくりなどに取り入れている。
介護給付の状況
各保険者が推計した介護サービスの見込み量の集計を2020年と2040年で比較したところ、居宅サービスの伸び率は、訪問介護が+23.8%、訪問看護が+30.6%、訪問リハ+25.2%、通所介護+30.4%、通所リハ+27.8%、短期入所+23.9%、福祉用具貸与+24.1%、特定福祉用具販売+6.7%などとなっている。施策の方向として、在宅での生活を支えるために、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護などの整備を促進していく。
本県の課題として、特別養護老人ホームの入所申込者が、20年4月時点で5000人近く存在し、入所の必要性の高い方も依然として待機している状況がある。そのため、「介護待機者ゼロ社会の実現」を目標に掲げ、必要な人が速やかに施設入所できるよう、特養整備等を進めている。
具体的には、地域密着型を基本としつつ、特別養護老人ホームを整備していくとともに、地域の実情に応じて、条件を満たす広域型特養併設ショートステイの特養ホームへの転換も認め、必要な数を確保していく。
介護人材の確保
ユニークな取組としては、介護事業所に勤務する現職の介護職員を「介護アンバサダー」として任命し、県内の小・中・高校に訪問してもらうなどして、介護の様子や働く姿を紹介しながら、広く介護の魅力ややりがいを発信したり、人材育成や職場環境の改善に向け、優れた取組を行う介護事業所を認証する制度を設けるなど、離職防止につなげるための取組を進めている。
今年4月には目玉施策として、山梨県福祉プラザ内に「介護福祉総合支援センター」を設置し、介護人材の確保や定着、介護ロボット・ICTの導入支援、家族介護などの相談や支援をワンストップで行っている。介護人材の確保や、介護現場の生産性向上などについて、センター職員が一緒に考えながら支援を行うことができるので、ぜひ多くの方に活用してもらいたい。
本県の健康寿命は全国トップクラスであり、これまでの知識や経験を生かして活躍する元気な高齢者が数多くいる。1981年より、そうした方々を「ことぶきマスター」として認定し、各地域のイベントや集会などで、特技を生かした活動を行ってもらっている。
また、92年に山梨で開催された、「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」の成果を踏まえて、毎年9月には山梨県版の「いきいき山梨ねんりんピック」を開催し、健康や生きがいづくり、地域社会での世代間交流などにつなげている。
そのほか、介護予防・健康づくりの観点から、各市町村がフレイル予防対策を効果的に取り組めるように、リハビリテーション専門職などの「フレイル予防アドバイザー」を、市町村や通いの場に派遣するなどし、助言をする取組なども積極的に展開してきた。
ただ、第8期(21年~23年)については、新型コロナウイルス感染症の影響により、目標値に対する進捗が思うようにいかない面もある。5月からの新型コロナの5類移行を受け、感染症対策に十分留意しつつ、計画を推し進めていきたい。目指しているのは、県民が自分らしくいきいきと暮らし続けられる「健康長寿やまなし」の実現である。
(シルバー産業新聞2023年9月10日号)