かかりつけ管理栄養士を地域に根付かせる

NO IMAGE

かかりつけ管理栄養士を地域に根付かせる

 日本在宅栄養管理学会(前田佳予子理事長)は7月15〜16日に第10回学術集会を大妻女子大学(東京都千代田区)で開催する。テーマは「人生100年時代を在宅栄養が支える〜多様化するニーズに応えるために、かかりつけ管理栄養士を目指そう!〜」。大会長を務める緑風荘病院栄養室主任・藤原恵子氏に抱負を聞いた。

 人生100年時代の中で、管理栄養士は医療的ケア児から成人、高齢者まで幅広い世代への支援が求められる。特に高齢者は複数疾患への対応、また施設・在宅を問わず看取り期の「最期のひと口」まで関わるケースも増えてきている。

 同時に、地域で気軽に相談が受けられるワンストップ機能も欠かせない。管理栄養士は医療機関や介護施設のほか、薬局や歯科診療所などにもいる。こうした主体は「認定栄養ケア・ステーション」として活動しているところも多く、介護予防教室の開催や研修会等への講師派遣、在宅訪問など食・栄養に関するさまざまなサポートを行っている。こうした「かかりつけ」の役割を発揮する管理栄養士を地域に根付かせたいとの思いで今大会のテーマを設けた。

 栄養ケア・ステーションに関しては、教育セミナー「認定栄養ケア・ステーションの経営を考える」のほか、一般演題のカテゴリにも設けた。事業、支援の実態を知る機会になるだろう。

 また、日本栄養士会と共同認定する「在宅訪問専門管理栄養士」の認定者が集うシンポジウムも注目。在宅栄養の質向上や多職種連携など、日々の業務へのメリットを語っていただく。ケアマネジャーやヘルパー、訪問看護師などにもぜひ聞いてもらいたい内容だ。

 さらに、今回新たに設けたのが「栄養のアウトカム」をテーマにしたパネルディスカッション。ただでさえ病院・施設と異なり血液データ等の評価が難しい在宅だが、栄養ケアのエビデンスを積上げていくことは今後の重要な課題だと考える。論文化も含めて取組んでいきたい。

 このほか、フィジカルアセスメントセミナーや調理実習室を使った介護食セミナーなど、実習形式のプログラムもリアル開催ならでは。介護食・口腔ケア用品等の企業展示も用意しているので、ぜひ会場に足を運んでいただきたい。

地域でミールラウンドも 緑風荘病院の取組

 緑風荘病院(東京都東村山市)は1995年から在宅訪問栄養食事指導を実施。かねてから管理栄養士が地域へ出ていくマインドがあった。現在、法人全体で管理栄養士が6人。2人が在宅訪問専門管理栄養士の資格をもつ。昨年には、より複雑困難な栄養管理等に対応する「機能強化型認定栄養ケア・ステーション」の認定も受けている。

 在宅を経験すれば、入院・入所時から在宅生活を想定した栄養指導が行えるようになる。自宅では誰が買い物を行い、誰が調理するのか。あらゆる食環境を把握し、入院・入所中にその準備を行うことにつながる。

 当病院では在宅に興味のある外部の管理栄養士を受け入れ、在宅訪問の同行など研修の場を設けている。特に薬局や歯科診療所はベッドがないため、管理栄養士が十分な臨床経験を積むことが難しい。

 また、地域に出れば地域包括支援センターや社会福祉協議会との接点ができ、介護予防の料理教室、市民向け栄養講座などの活動が増える。最近では東村山市と連携し、健康支援型配食サービスを利用した食事会も行っている。管理栄養士がミールラウンドを行うのが特長で、低栄養の早期発見が期待できる。このように、スクリーニングの段階で管理栄養士が介入するのが一つの理想形だ。

 同市ではフレイルサポーターから派生し、より食の知識をもつ「食支援サポーター」を独自に養成している。現在10人ほどだが、会食イベント運営などの担い手として期待されている。

日本在宅栄養管理学会 第10回学術集会
https://jhnms-congre.jp/2023/index.html

(シルバー産業新聞2023年7月10日号)

元のページを表示 ≫

関連する記事

続きを見る(外部サイト)

ケアニュースカテゴリの最新記事