《ねんりん開催地》偶然の出会いから寄木細工職人に 箱根寄木細工るちゑ 清水勇太さん

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《ねんりん開催地》偶然の出会いから寄木細工職人に 箱根寄木細工るちゑ 清水勇太さん

 様々な樹木の自然の色彩を活かし、精緻な幾何学模様を織りなす寄木細工は、箱根の自然の豊富な樹種を背景に、江戸時代後期に畑宿で生まれ発展した。この畑宿の地で寄木細工に魅了され、伝統を踏まえつつも新しい発想を取り入れながら製作に取り組む寄木細工職人の清水勇太さんに話を聞いた。

 大学時代の箱根旅行で寄木細工に出会う

 高校まで過ごした新潟県から東京の大学に進学。寄木細工に出会ったのは大学3年生の2月に友人と箱根旅行に訪れたときだった。箱根湯本の土産物店にあった寄木細工の、伝統工芸でありながらモダンな作風に心を惹かれた。

 帰りの電車を遅らせ、寄木細工発祥の地、畑宿にバスで向かい立ち寄ったのが将来弟子入りすることとなる、寄木細工製の箱根駅伝優勝トロフィーの製作で知られる金指勝悦さんの工房だった。閉店間際まで作品にふれ帰路のバスの中、「寄木細工の職人になろうかな」と友人に語った。

 大学4年生の夏休みに、金指さんの工房に住み込みで1カ月アルバイトをし、材料置き場の掃除などの傍ら、製作の下仕事に取り組んだ。

 寄木細工職人になりたい強い思いを家族に打ち明け、大学卒業後、最終的には後押しを受けながら金指さんの工房に弟子入りした。

 音や動きを取り入れた新しい作風を切り開く

 8年の修業期間を経て、30歳の時に独立し、自らの工房「るちゑ」を設立した。もともと寄木細工の伝統的な作品は、箱の側面を順番通りにスライドさせることで開けられる秘密箱など、大人を対象としたものが多かった。

 「子供を含めた幅広い世代に親しんでほしい」。そう思った清水さんは、寄木細工の技術を活かしたポップなデザインのカスタネットや球形のおきあがりこぼしなど、小さな子供でも楽しむことができる作品を生み出した。

 「はじめてカスタネットを作った時は周りからも不思議に思われたが、いまでは受け入れられている」と清水さん。お盆や箸置きなど生活の中で役立つ作品も数多く作っており、自分のためや家族へのプレゼントなど多くの人に喜ばれている。

 木に感謝しながら創作

 多様な色彩や幾何学的な模様も魅力の寄木細工だが、これらは木材の自然の色を活かして作られ、箱根の自然と多様な樹種を背景に発展してきた。

 現在、箱根地域は国立公園に指定され樹木の伐採が禁じられているため、県内外の製材所の協力を得ながら、国内・外の樹木を仕入れて製作を行う。特に、寄木細工は流通量の少ない広葉樹を使用しており製材所の協力が欠かせない。

 「箱根には多様な樹木が自生しており、木材の自然での立ち姿が想像できる。常に木に感謝しながら創作している」と清水さんは語る。

 作品を手に取る人の喜ぶ姿が励みに

 製作中は重い木材を運んだり、製材用の危険な機器を使ったり大変なこともある中、清水さんは「イベントなどで自分の作品を手に取った人が喜ぶ姿が大きな励みになる。寄木細工に出会って20年になるが、いまは仕事にやりがいと魅力を感じて取り組めている。これからも技術的な面なども含めて研鑽を続けていきたい」と意気込んだ。

 「雑木囃子」で寄木細工の啓発を

 寄木細工の技術の研鑽や開発、一般への周知やアピールを目指し、2005年に寄木細工に携わる同世代の若手5人で立ち上げ、その後1人を加えた「雑木囃子」というグループで活動する。

 いまもこの時のメンバーで活動を続け、展示会や体験イベントなどで寄木細工の啓発や体験会を企画する。

 来年1月28~29日に小田原三の丸ホール(神奈川県小田原市)で開催される小田原・箱根地域の木製品の文化を紹介するイベント「小田原・箱根『木、技、匠』の祭典」にも参加を予定しており、会場では実際の作品に触れたり、寄木細工の製作を体験することができる。

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