「ハラスメント」訪問系の潜在的課題か 京都ヘルパー協
京都府ホームヘルパー連絡協議会(44事業所、会員数114人)は研修や行政との懇談会、ホームへルパーの魅力発信などを行っている。昨年8月に実施した会員アンケートでは「利用者側からのハラスメントがあった場合の対応」に関する設問を取り上げた。回答からはホームヘルプ現場ならではの潜在的な課題が浮かび上がった。竹内真弓会長(ヘルパーステーション安寿、写真左)と事務局の濱本歩実さん(京都府社協、同右)にその背景や対応を聞いた。
調査結果からは、10人に1人以上のヘルパーが利用者からのハラスメントを理由に仕事を辞めていることがわかった。他、女性の従事者が多い訪問系サービスの訪問看護(7.2%)、小規模多機能(8.8%)、看護小規模多機能(10.9%)、定期巡回サービス(9.1%)なども高い数値を示しており、訪問介護だけの問題でないことが分かる。
利用者からのハラスメントは、ヘルパーに対する暴力や暴言など、傍から見て明らかな場合だけではない。竹内さんは、「ハラスメントの話はなかなかヘルパーから報告として上がって来ない。訪問介護では、利用者それぞれの価値観が違う中で、自宅というその人のテリトリーに入ってサービスを提供する。利用者の思いを受け止めようとする中で、ヘルパーが自分のサービスがまずかったのではないか、と自問する場合も多い」と感じている。
会員アンケート結果では、「ハラスメントにあった」とヘルパーから報告があった場合、「基本的には事業所で組織的に対応を図る」と回答した事業所が過半数を超えていた。事業所では対応しきれない場合には、担当ケアマネジャーや地域ケア会議、市町村へ相談するなどの具体案が上がっていた。
しかし、事業所内に専用の相談窓口を置いている事業所もあれば、「ヘルパーミーティングで共有する」という対応に留まっている回答もある。「常に人材不足で余裕のない状況で、管理者やサ責に相談できる暇が無い」といった声も上がっており、現状全ての事業所で十分な相談体制が整っているとは言えない。ハラスメントに対する組織的な対応を図るにも、ヘルパー事業所自体の人手不足が課題となる場合は多い。
「ヘルパーの年齢も高齢化しているため、コロナ禍でヘルパーを退職される人も出た。高齢のため体力的に追い付かず、このままでは遠方の利用者宅には行けなくなる、と懸念している事業所もある」と濱本さん。
竹内さんは、「ホームヘルパーは、利用者の自立を奪わないよう、生活全体を見て、様々なサービスを組み合わせる、専門性が必要な仕事。社会的な評価の向上と、基本報酬の引き上げや処遇改善を求めます」と語り、在宅の医療介護を根底で支える訪問介護の持続可能性の向上を求めた。
2022年度会員アンケート「ハラスメント対策」
(1)「利用者からのハラスメント等の報告がヘルパーからあった場合の事業所の相談体制」(重複回答あり)
(2)「ハラスメントの課題に事業所として取り組んでいること」
・相談してもらいやすい環境づくり①相談しやすいよう普段から連絡を密にするなど②LINEWORKSを使用しその日のうちに相談③直行直帰のヘルパーは電話連絡。
・発生時の対応①法人内に相談窓口(3事業所)②ヘルパー間で情報共有、事例検討③ケアマネジャー、地域包括、保険者と情報共有④サ責がケアマネジャーらと話し合い⑤サ責訪問、ヘルパーの担当替え。
(3)「ハラスメント対策に限らず自治体や団体に求めること」
・ヘルパー業務の正当性を事業所内部でも認めてもらっていないという感覚になる。
・ヘルパーに対する迷惑行為をテレビCMやポスターなどで発信してほしい。
・常に人材不足、余裕がない状況。管理者やサ責が相談できる場所が必要。
・事業所内で話しにくいこともある。相談窓口があるとよい。
・ケアプランに沿った訪問介護計画書を作成しても、利用者の理解がなかなか得られない。
・同居の家族がいて生活支援ができないことを納得してもらえず、サ責もうまく説明できず、家族の不信感につながる。ケアマネジャーはもっとヘルパーのできること、できないことをしっかり把握してほしい。
(シルバー産業新聞2023年2月10日号)