AIケアプラン「SOIN(そわん)」は頼りになるパートナー

AIケアプラン「SOIN(そわん)」は頼りになるパートナー

AIケアプラン「SOIN(そわん)」は頼りになるパートナー

 人工知能(AI)を搭載したケアプラン作成支援システム(AIケアプラン)の活用がケアマネジメントの現場で広がっている――。世界で初めてAIケアプランを開発したシーディーアイ(東京都中央区、濵岡邦雅社長)の「SOIN(そわん)」は、10月末時点で有償ユーザー数が全国で8500人を突破。同システムを実際に利用している愛媛県伊予市のケアマネジャー茂川久子さんに、AIケアプランのメリットや使い勝手などについて聞いた。

 愛媛県伊予市にある居宅介護支援事業所「ケアフル伊予」でケアマネジャーの仕事をしている茂川久子さん。ケアマネになる前は訪問介護のヘルパーとして活躍していたが、椎間板ヘルニアを患い、現場を離れることに。「元々ケアマネジャーになるつもりはなかった」と茂川さんは振り返るが、周囲で活躍するケアマネの姿に触発されたことや、多くの仲間に巡り合えたことから一念発起し、ケアマネ資格を取得。現在はケアマネとして8年の経験を持ち、主任ケアマネの資格も取得。地域から頼りにされるベテランのケアマネジャーとして活躍している。

 そんな茂川さんが「SOIN」と出会ったのは、昨年3月に開催された愛媛県介護支援専門員協会の研修の場。AIを活用したケアプラン作成支援システムの活用方法を学ぶという内容だった。

AIが1年後の要介護度や状態像を予測

 シーディーアイが販売する「SOIN」は、利用者の状態に関する74の項目を入力すると、80%以上の精度で1年後の要介護度や各種項目の変化を予測することができるAI搭載のケアプラン作成支援システム(図)。AIが過去に学習した膨大なデータの中から、状態像が近い人を抽出し、実際に要介護度が維持・改善されたケアプランを提案する機能なども持つ。自身が作成したケアプランとAIが提案するケアプランを比較検討することで、より自立支援につながるケアプランの提供が可能になる。

 「最初はAIケアプランがどんなことをしてくれるのかが全く想像できなかったので、不安の方が大きかったのですが、ご利用者さんの1年後の要介護度や状態像の変化を数値やグラフで表現してくれるので、とても分かりやすく、これは良いものができたなという印象を受けました」と茂川さん。研修会で実際に「SOIN」に触れたことで、AIケアプランに対する漠然とした不安や抵抗を取り払うことができたと振り返る。

 その後、7月から始まった愛媛県のAIケアプラン活用の実証事業に伊予市が手を挙げたことで、茂川さんも実証事業に参画することになり、そこから茂川さんと「SOIN」との本格的な「お付き合い」が始まった。

AI が1年後の要介護度の状態予測をグラフ で表してく...

AI が1年後の要介護度の状態予測をグラフ で表してくれる。 ※一部加工。実際の画面とは異なります。

「アセスメント支援機能」で医療面をカバー

 茂川さんが「SOIN」でよく使う機能が「アセスメント支援機能」。利用者の状態や疾患に関して、「SOIN」に知りたい内容を入力すると、AIが過去のデータの中からアセスメント情報や疾患情報を分析し、その結果と「留意すべきアセスメント項目」を表示してくれる。さらに9月末からは「どのような支援が良いか」を具体的に提案する「支援内容提案AI」の新機能も追加されている。

 「私は元資格が介護福祉士なので、正直に言えば医療面に不安があります。そこで疾患から必要な支援内容を紐解く作業を『SOIN』に助けてもらっています。アセスメントの漏れや、将来の状態悪化を未然に防ぐための視点を確認できるので、とても重宝しています」。認知症や大腿骨頸部骨折、脳血管疾患などの利用者について、特に入念に「SOIN」の分析結果を確認し、ケアプランを作成していると茂川さんは話す。

 「SOIN」への基本情報の入力にかかる時間は、1人当たりおよそ15分程度。すべての利用者に対し、自らが立てたケアプランとAIが提案するケアプランとを見比べて、なぜ「SOIN」がそのプランを提案するのかを考え、必要に応じてサービス回数を調整したり、別のサービスを検討したりしているという。今では「SOIN」が導き出す予測や分析結果を楽しみにしている自分がいると茂川さん。ケアプランを客観的に見られるようになること、根拠をもって説明ができるようになることが「SOIN」活用の最大のメリットだと説明する。

利用者や家族にも変化が生まれる

 SOIN活用のもう一つのメリットが、利用者や家族のケアプランに対する変化が生まれる点だ。1年後の状態予測を利用者・家族と一緒に確認すると、「こんなに悪くなるの?」などの反応が返ってくる。そうしたタイミングで「頑張って変えていきましょう!」と声掛けしていくことで、ケアプランに対して積極的に考えてもらえるようになるという。

 また、他職種との連携の際も「SOIN」を有効活用していると茂川さんは説明する。「特にデイケアのOTやPT、リハドクターなどの医療職は、『SOIN』が導き出す結果をよく見てくれるので、サービス担当者会議の場でうまく助言を聞けたりします」。

 茂川さんが「SOIN」を用いることで、特に自身のケアマネジメントスキルが磨かれたと実感するのが地域ケア会議の場だ。「すごく悩まれて事例提供しているケアマネジャーに対して、主任ケアマネの立場でスーパーバイズしなければならないのですが、これまではうまく助言ができず、時には頭が真っ白になることもありました。でも、『SOIN』のおかげで、このケースで足りない支援は何か、アセスメントで見落としている点はないかなど、思考を整理する癖がついたので、冷静に地域ケア会議に参加できるようになりました」。

 AIケアプランは、ケアマネに代わってケアプランを立てるものでもなく、ましてやケアマネの仕事を奪うものでもない。〝頼りになるパートナー〟というのが「SOIN」を使った茂川さんの実感だ。「AIの力を借りて自身のケアマネジメントに磨きをかけたい人や、一人で悩みを抱えているような人に特にお勧めです」。(茂川さん)

 「SOIN」の利用料は月額6000円(税抜、ケアマネジャー1人あたり)。問合せはシーディーアイ(TEL050・5491・7123)まで。

(シルバー産業新聞2022年11月10日号)

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