「ケアプラン連携」居宅・サービス事業所の8割が利用意向
厚生労働省は9月6日、来年4月からの「ケアプランデータ連携システム」の本格稼働について事務連絡した。FAXや手渡しにかかる時間と費用を削減し、予定・実績の転記や手入力ミスを防ぐツールとして注目を集める同システム。10月には年間利用料が税込2万1000円になると発表された。厚生労働省の担当者である秋山仁氏にインタビューを行った。
これまで居宅介護支援事業所とサービス事業所とのケアプランのやり取りはFAXや手渡しが中心だった。そのための業務や費用が毎月発生している。紙を確認しながら介護ソフトへ改めて手入力しなければならず、特に利用実績で入力を誤ってしまうと、返戻に繋がりかねないなど心理的な負担も小さくない。これらの削減や軽減を目指すのが、ケアプランデータ連携システムだ。
連携システムに先駆け、厚生労働省では2018年度に、事業所間で異なる介護ソフトを利用していてもデータ連携が行えるケアプランの「標準仕様」を公開した。今年8月に第三版として改定を行ったところだ。標準仕様に対応した介護ソフトであれば、ケアプランデータをCSVファイルでの出力・取り込みができる。
しかし、個人情報を含んだファイルをメールなどでやり取りすることについては、セキュリティ面を懸念する声もあった。そこで、安全にデータ連携ができる基盤として連携システムの構築が進められている。
連携システムは、政府の情報セキュリティ基準を順守した設計で、データのアップロード時に、各事業所が所有する電子証明書が付けられ、暗号化される。
電子証明書は、介護報酬の電子請求システムですでに使用されている。電子証明書の仕組みを用いるため、連携システムの構築・運用は国民健康保険中央会が行う。
連携システムが事業所番号を読み取り、自動で振り分けてくれるので送り間違いもない。
連携システムでは、ケアプランの1、2、6、7表がCSVでやり取りできるが、3表(週間サービス計画表)はCSVではなくPDFで送受信できるようになる予定だ。データの取り込みはできないが介護事業所がPDFで確認できる。
伝送代行利用は電子証明書無償発行
介護報酬請求で、いわゆる伝送代行サービスを利用していて、電子証明書を所有していない事業所もある。国保連請求における電子証明書は有料だが、今回の連携システムを利用するための電子証明書については、申請は必要だが無償で発行してもらう予定だ。もちろんすでに電子証明書を所有している事業所はそのまま使ってもらえる。
将来的には、伝送代行サービス業者のサーバから直接、連携システムにデータをアップロードできる仕組みも検討したいと考えている。そうなれば、伝送代行を利用する事業者が連携システム利用のために電子証明書を取得しなくて済む。
試算では作業時間約3分の1に
やはり業務効率化やコスト軽減、ミス防止だ。20年度に実施した調査研究事業での試算によると、連携システムを使うと利用(提供)票共有にかかる時間は1事業所あたり月52.4時間→月18.1時間への削減が期待できる。
費用面では、印刷費、通信費、郵送費、交通費などあわせて1事業所あたり月5935円軽減となっている。それらに係る人件費も含めると月6万8000円軽減できる計算だ。連携システムの利用料は年間2万1000円で、月換算では1750円。試算ベースでは、人件費を含めずとも費用削減のメリットも十分見込める。
さらに、紙から介護ソフトへの手入力不要、転記ミスへの心理的負担軽減、ペーパーレス化なども導入のメリットに挙げられる。現場では、ケアプランをFAXで送信する際、個人情報をマスキングしているケースが少なくない。厚労省として、マスキングを求めているわけではないが、個人情報を扱うため、慎重を期した対応だろう。連携システムであれば、そうした手間も不要になる。
事前アンケートでも高い利用意向
データ連携なので当然、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所双方の理解が必要になる。
昨年度に行ったアンケート調査では、居宅介護支援事業所で85%以上、サービス提供事業所で80%以上がケアプランをデータ連携できる仕組みについて「とても利用したいと思う」「少し利用したいと思う」との利用意向を示している。
まだ今回の連携システムの概要が示される以前に行った調査としては、現場の期待感の高さが伺える結果ではないか。
やはり、サービス利用(提供)票共有のための時間や業務の削減、システムでの円滑な共有に期待を寄せる意見が特に多かった。引き続き、導入のメリットなどについて丁寧な説明やフォローをしていきたい。
またデータ連携には、説明の通り、標準仕様対応の介護ソフトが前提になる。以前より、ICT導入支援事業では標準仕様対応の介護ソフトを補助対象としており、現場への普及を推進している。