大阪府の介護保険 要介護認定率全国1位 利用最も多い訪問介護
大阪府の介護給付の状況をみると、特に訪問介護の利用が多い。厚労省の19年度介護保険事業状況報告年報(19年3月~20年2月)で1年間の費用額の内訳を見ると、大阪府で最も金額の多いサービスは訪問介護で全体の18.1%(全国平均8.8%)を占め、全国平均よりウエイトがかなり大きい。次いで特養が14.6%(同18.1%)、通所介護10.3%(同12.2%)、老健10.0%(12.6%)などの順となっている。
サービス付き高齢者向け住宅の整備数は、大阪府が全国でも突出している。21年12月末時点で、府内にはサ高住が全国最多の783棟・3万543戸(2位は北海道の515棟・2万1634戸)で、高齢者人口に対する整備戸数は1.3%(全国平均0.8%)で北海道と並んで最も高い(東京都は0.5%)。
府内全世帯のうち世帯主が65歳以上の高齢者世帯は20年時点で37.6%で、そのうち独居高齢者が40.6%を占める(15年国勢調査結果を元にした推計)。
大阪府の第8期・1号被保険者介護保険料(基準月額)は、全国で最も高い6826円(全国平均6014円)。特に大阪市は8094円と全国で5番目に高い。同市は独居者が多く、要介護認定率は20年3月末時点で25.3%と高い。居宅サービス受給者1人あたりの給付費(月11万3000円)や高齢者1人あたり給付費(月2万8000円)も平均に比べて高い。
多い独居者サ高住が影響か
一方、事業者側では、▽事業者へのアクセスの容易さ▽事業所数の多寡▽サ高住、有料老人ホーム、特養の有無▽悪質事業者の有無・貧困ビジネスの可能性――といった要因が挙げられたと説明する。
大阪市の担当者も「市は高齢者世帯のうち42.4%が独居世帯(全国平均27.3%、15年国勢調査)で、同居家族の助けがなく生活全般で課題を抱えやすい独居者の多さが、認定率の高さや訪問介護の利用の多さにつながっているのではないか」と話す。
総合事業対象者の課題抽出に専門職養成
特に総合事業の短期集中サービス(C型)の充実に向け、18年度にC型実施のガイドブックを作成、19年度から2~4市町ずつに重点支援を行うなど、サービスの整備に努めてきた。
「しかし当初はなかなかC型の利用が進まず、原因を探ると、現場でニーズのある対象者とのマッチングがうまくできていないことがわかった」と府高齢介護室の中江栄登統括主査。そこで20年度から、介護予防支援を行うケアマネジャーや地域包括支援センター職員の利用者訪問に同行し、生活全般で本人の自立を阻害している要因の抽出・発見をサポートする、リハビリ専門職「生活課題アセスメント訪問指導者」の養成を始めた。
指導者の養成は年30人ずつ行っており、さらに上積みの研修「実践コース」も実施。これにより、生活課題を把握し地域ケア会議に諮り、運動器機能向上や口腔機能向上、栄養改善など必要なサービス・専門職へつなぐという工程が、各地域でスムーズに進むようになってきた。
地域活動立ち上げを支援
ここでは、仕事で得た専門知識で社会貢献するボランティア「プロボノ」が、団体による事業の立ち上げ・運営などを支援する「プロジェクト型支援」と、先進的に取り組むNPO法人などが電話やメール、訪問などで随時相談対応する「個別相談型支援」の2つを行っている。この活動を通じ、配食や見守り、介護予防、サロンや移動支援など、4年間で72件のプロジェクトが立ち上げ・運営で支援を受けた。
(シルバー産業新聞2022年2月10日号)