介護ロボット・ICT活用の導入支援 伴走型支援「北九州モデル」とは

介護ロボット・ICT活用の導入支援 伴走型支援「北九州モデル」とは

介護ロボット・ICT活用の導入支援 伴走型支援「北九州モデル」とは

 国家戦略特区(先進的介護の実証実装)として介護ロボットの現場への普及を進めてきた北九州市は、介護ロボットやICT活用・導入についても事例が多い。同市内の介護事業者支援向けに伴走型支援「北九州モデル」を進める「北九州市介護ロボット等導入支援・普及促進センター」(事務局:麻生教育サービス)の支援を紹介する。

現場の心配「失敗しない」「無駄にしない」に応える

 介護ロボット普及・導入支援の先駆的地域である北九州市は、今年4月から「北九州市介護ロボット等導入支援・普及促進センター」で伴走型導入支援「北九州モデル」の普及に向けた取り組みを始めている。コロナ禍でも市内4特養から相談を受けており、現場からの注目も高い。

 同センター長(理学療法士)の樽本洋平氏は「介護ロボットの開発が進み、国の導入補助金なども充実し始めた。介護現場の関心事は『導入して失敗しないのか』『本当に使えるのか』になってきている」と、補助金申請支援や対象機器紹介だけでなく、現場の視察や組織づくりとセットで進める重要性を強調する。

導入前・導入・導入後に寄り添う

 北九州モデルとは「事業仕分け→ICT・介護ロボット等の活用→業務オペレーションの整理」の3段階で進める支援方法。導入前・導入・導入後まで一貫で支援する意味で伴走型支援とも呼ばれる。

 インテークにあたる「事業仕分け」は▽何を実現したいかなど施設の考え方の聞き取り▽作業分析(時間)のための職員に計測機器を付けデータ収集▽時間のかかっている動作の改善方法をフィードバック――などを行い、介護ロボットやICTが効果を発揮しそうなところを洗い出しする。導入機器活用の可否に関わる重要な部分のため慎重に進める。

 今年4月スタートの市内4特養の支援では、現在、じっくりと時間をかけた「事業仕分け」が完了し、機器導入フェーズへの移行段階。「ICT・介護ロボット等の活用」では、具体的な機種を試用してもらい、使い勝手や効果を検証する。センターには見守り機器や移乗支援機器などサイズ違い含む全28台(表)が展示・貸出されている。「ここにない機器についても、メーカーへの協力・調整をする」と樽本氏。

 「業務オペレーションの整理」は、機器活用により生産性の高まった介護業務について、トイレ介助、食事、レクリエーションなどの日中・夜間の業務の最適化を実践する。樽本氏は「介護生産性とは、質と量の掛け算で算出されるべき。時間が創出できれば、多忙によりできていなかった介護業務への取り組みをしてもらうことを目指している。経営者視点の『人減らし』のための機器活用は本来ではない」と強調する。

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夜間巡回より高密度の「センサー見守り」

 成功事例として樽本氏は、特区事業として取り組んだ、夜間巡回を完全ゼロにした地域密着型特養の例を挙げる。一般に見守り支援機器導入により、特に夜勤帯の巡回が少なくできるので、介護業務負担軽減効果が期待される。ただ、看取りの利用者の場合、重点的に定時訪室の必要があり、夜勤巡回ゼロはできないとされてきた。そこでバイタルのとれる見守り機器と介護記録システムを連携させることで、ログ分析により信頼性が高く、失報や誤報のない見守りを実現。夜間巡回ゼロを達成した。

 樽本氏は「現場では、家族からセンサー見守りは手抜きと指摘されることもあるが、センサーにより見守ってくれている状態というのは、夜間巡回より1人当たりに割く時間は倍以上。重要なのは、介護職員が創出した時間をケアの向上に回すことができているかだ」と力説する。

役職・立場に見合った人材育成も

 介護施設内でのICT・介護ロボットの活用ができる専門人材の育成も課題となるが、同市では独自に「介護ロボットマスター育成研修」も実施している。

 経営層・中間層・現場職員のそれぞれの役割分担により、ビジョン共有・指導・機器活用を学び、習得度合いにより「介護ロボットマネージャー、リーダー、オペレーター」を認定する制度。 機器活用がうまくいかない場合には、経営層の「導入したが使ってくれない」、介護職の「使えない・使いたくない」という不満・不安があることも多い。そうした各立場の不満を解消するため、役割を明確にするための育成研修。チームで進める介護ロボット・ICT活用が定着する過程では、こうしたソフト面での支援も欠かせない。

(シルバー産業新聞2021年8月10日号)

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