岡山市・11年目の在宅介護「総合特区」

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岡山市・11年目の在宅介護「総合特区」

 岡山市は、2013年5月より国の総合特区「岡山型持続可能な社会経済モデル構築総合特区」として、在宅介護の抱える課題に対し、規制緩和や新規事業を通じて検証し、国への提言に取組んできた。

 1期5年で更新され、現在は第3期目(23年~27年)に突入した。

 これまで「デイサービスの質の評価とインセンティブ付与」は18年介護報酬改定の「ADL維持等加算」創設や21年改定での加算対象・単位引き上げなどの成果に繋がったほか、「医療法人の配食サービスの実施」「訪問看護・介護事業者に対する駐車許可簡素化」は、全国で規制緩和や取扱いの柔軟化を導いた。

介護ロボ・ICT「在宅検証の場」

 注目の高い最先端介護機器貸与モデル事業は、介護保険福祉用具貸与13種目以外で、有用と考えられるものを岡山市が選定し、岡山市の要支援・要介護者を対象に、介護保険福祉用具貸与に準じた特区事業で貸与利用してもらうもの。

 介護保険での福祉用具追加に向けた実証の場としても注目を集めている。

 介護保険制度での福祉用具追加は、毎年開催される厚生労働省「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」で判断されるが、その際に「在宅でのデータ収集」が重視される傾向が強まっている。23年5月からは、認知症高齢者の徘徊を検知し、スマートフォンなどで徘徊位置確認できるGPS端末(iTSUMO2)が特区事業に追加された。全国的には貸与種目「認知症老人徘徊感知機器」として認める自治体が増加しているが、独自判断に基づくもの。貸与の実績が、国の追加判断の材料として活用されることが期待されている。

 同市医療福祉戦略室は「岡山市民の在宅生活をしやすくするため、単に検証の場としてではなく、利用者の自立支援や介助者の負担軽減に役立つことを目指している」と話す。

デイサービスの一環に「就労」

 就労による社会参加に意欲がある利用者に、ケアの一環として行う就労的な社会参加の「高齢者活躍推進事業(ハタラク)」も注目が高い事業。地元の企業の協力のもと、有償ボランティア等の社会参加活動を行い、生きがいづくり等に繋げる。

 通常のデイサービス利用について、通所を通勤と捉え、送迎により職場(デイ事業所)の移動手段を確保することで、社会への繋がりを感じてもらいながら、就労が本人の生きがいづくりに繋がることを目指す。

 これまでに「小規模店舗の草抜き」「運送会社のDM便配達」など多彩な仕事が寄せられている。

第3期テーマは「利用者・事業者の保険制度の使いやすさ」

 現在、国と調整・協議を進める総合特区第3期の新規事業は①「高齢者の見守り推進」:在宅で暮らす高齢者への見守り・安全確認について、訪問介護事業所が、移動の合間など一連の介護保険事業の中で実施②「通所介護と訪問介護の人員基準一体化」:通所介護と訪問介護が併設される事業所において、人員基準を一体的に計算する③「デイサービスの送迎柔軟化」:デイサービスの送迎先として、利用者本人宅以外に親族宅等を認める④「小多機事業所内における訪問看護・訪問リハビリテーションの実施」:高齢者宅での提供を基本とする訪問看護・訪問リハビリテーションを、小多機事業所内でも実施――の4本。

 介護人材不足の対応のため、介護職の配置などに関する規制緩和が検討され始めたが、その先駆事例として、岡山市の取組にも注目が集まる。

(シルバー産業新聞2023年10月10日号)

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