24年度改定 報酬簡素化 加算の基本報酬組込みも

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24年度改定 報酬簡素化 加算の基本報酬組込みも

 厚生労働省は9月15日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催し、「制度の安定性・持続可能性の確保」をテーマに検討を行った。介護保険制度創設時に比べ、加算の種類は大幅に増加している。介護サービス事業所の負担軽減、利用者への分かりやすさの観点から報酬体系の簡素化について議論され、算定率の高い加算は基本報酬に含めるなどの意見が出された。一方で、算定率の低い加算を廃止する場合も、原因分析と個別対応を求める要望がなされた。

 介護報酬の加算やサービスコードの数は、介護保険制度創設当初と比較し大幅に増加している。加算の種類を一部例に挙げると、訪問介護は3から22に、通所介護は5から31に、特養では8から65に、老健では8から71に増加している(表1)。同様に、サービスコード数は、居宅サービスで1173から8921に、居宅介護支援で6から97に、施設系サービスで581から7849に増加している(表2)。

 また、介護職員の処遇改善に関する加算も、処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3種類があり、事務負担の大きさが問題視されていた。今回これを受け、利用者へのわかりやすさ、介護サービス事業所の負担軽減の観点から議論が行われた。

加算ごとの算定率に大きな差

 加算ごとの算定状況をみると、2021年度から22年度にかけて平均算定率が80%を超えたものが、老健の初期加算(97.8%)、認知症対応型通所介護の入浴介助加算Ⅰ(95.0%)、短期入所生活介護の送迎加算(93.1%)など12種類(延べ54種類)(表3)。一方、22年度を通して算定がなかった加算は20種類(延べ194種類)、平均算定率が1%未満の加算は41種類(延べ175種類)と大きな差が見られた(表4)。

 これを受け、委員からは報酬体系を簡素化して国民に分かりやすくすることは、制度維持のためにも進めるべきと概ね賛同する意見が聞かれた。

 その上で、「算定率が高い加算を基本報酬に含める場合は、加算単位をそのまま上乗せし、わかりやすく明示すべき」(古谷忠之委員、全国老人福祉施設協議会)、「取得率の高さだけでなく、それぞれの趣旨とサービス提供の状況を踏まえて、継続の要否をデータに基づいて個別に整理する必要がある」(酒向里枝委員、日本経済団体連合会)との要望がなされた。

 一方で、算定率が低い加算については、その原因を分析し、個別対応が必要との意見が聞かれた。口腔・栄養に関する加算などで算定率が低い現状について、国からは「専門職の確保や支援が得られにくいこと、利用者の中から潜在的な対象者を拾いあげられていないことも背景にあるのではないか」と説明があった。

 そのような中、▽質の高いケアを目指すため対象者が少なくても残していくべきもの▽経過措置により実質対象者がいないもの▽過度な専門職の配置を求めているもの▽普及に周知や説明など多くの労力を割くもの――などに分類し、継続の可否を検討すべきと具体的な要望もあげられた。

処遇改善3加算一本化するか

 現在、処遇改善に関する加算は、介護職員のみを対象とし昇級・賃金体系の明示や研修機会の確保等を要件とする介護職員処遇改善加算を基本としている。そこに、介護職員以外への配分が認められた特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算が上乗せされる3本立てとなっている。

 それぞれ介護福祉士の配置割合や、加算額の3分の2を職員のベースアップに充てるなどの要件があり、現場の事務負担の大きさが以前より指摘されていた。昨年12月に国から示された「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」でも、事務手続や添付書類の簡素化、加算制度の一本化について提示されていた。

 委員からも、処遇改善3加算の一本化を進めるべきとの意見が聞かれた。その中で「そもそもの事務負担の軽減に向けて、ICTの活用の状況や地域独自に求められる追加資料の有無などの課題を整理すべき。電子処理の簡素化や標準化、電子化も必要」(酒向委員)などの提案もあった。

(シルバー産業新聞2023年10月10日号)

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