ダブルケアマネ

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介護支援専門員から相談支援専門員へ

笹森令温さん

笹森令温さん

 地域共生社会の実現に向け、高齢者のみならず、障がい者らも地域で自立した生活を送ることができるよう、包括的な支援体制を構築し、切れ目のない支援を実現していくことが求められている。そうした中で、高齢・障がいの枠を越えて活躍する、介護支援専門員や相談支援専門員を紹介する。1回目は東京都渋谷区で活躍する笹森令温さん。

 厚生労働省の調べによると、全国の障がい者964.7万人のうち、65歳以上の高齢者の割合は、身体障害74%、知的障害16%、精神障害38%と、年々、高齢化が進み、全体でみても半数を超えている。また、在宅で暮らす障がい者は、身体障害428.7万人(98.3%)、知的障害96.2万人(87.9%)、精神障害389.1万人(92.8%)と、圧倒的に在宅の方が多い。こうした方々の暮らしを支え、マネジメントしているのが、介護支援専門員や相談支援専門員の方々だ。

 東京都渋谷区で活躍する笹森令温さんは、介護支援専門員と相談支援専門員の二足の草鞋(わらじ)を履く相談支援のエキスパート。もともとは2002年に介護保険の居宅介護支援事業所と訪問介護事業所を立ち上げ、08年に介護支援専門員の資格を取得。その後、精神障がい者を支えるために精神保健福祉士の資格も取得した。15年からは、当時、区内では相談支援の需要に対し不足していた相談支援事業所を立ち上げ、障がい者の相談支援やマネジメントにも従事。現在では、介護支援専門員の利用者よりも、相談支援専門員の利用者の方が、圧倒的に数が多いという。

 「渋谷区内でも相談支援の依頼が増えて来ており、特に精神障がいの依頼が増えているため相談支援事業所が不足する状態が続いている。また、在宅、施設入所含め障がい者の高齢化が進んでいる」と笹森さん。ここで問題になるのが、いわゆる“65歳の壁”だ。障がい者は65歳以上になると、原則として介護保険サービスを優先的に使うことが求められるため、これまでのサービスが使えなくなったり、利用者負担が増えたりする問題が起きる。また、これまで障がい者の生活に伴走してきた相談支援専門員も、介護支援専門員にバトンタッチすることになる。

 ここでの連携がうまく取れずにいると、介護保険制度にスムーズに移行できず、必要な支援やサービスが受けられなかったり、制度に対する不満が生まれたりする。
 笹森さんは、「障がい者と高齢者のケアマネジメントについて、本質的な違いはない」と話すが、制度の違いがあるため、最低限の知識や連携を図るための関係性を築いておかないと、うまく支援できないと指摘する。自身は、両方の制度に跨って仕事をしているため、問題が起きることはないが、相談支援専門員と介護支援専門員の“ダブルケアマネ体制”で利用者を支援していく場合、両者をつなぐ「教育が必要だ」と笹森さん。実は相談支援専門員の専門コース別研修の中には、「介護支援専門員との連携」のカリキュラムが用意されているが、介護支援専門員の法定研修の中には、「相談支援専門員との連携」を学ぶカリキュラムが明確にはない。地域共生社会の実現を目指していく上で、ちぐはぐな構図になっている。

 もう一点必要なのが、「行政の支援」だと笹森さんは言う。「高齢と障がいの連携に関して、熱心に取り組む地域もある。渋谷区でも、介護支援専門員と相談支援専門員が膝を突き合わせて、事例検討会などを行う機会が増えてきている」と説明する。
 障がい者の高齢化が進む中、真の地域共生社会の実現に向け、官民一体となった取り組みが求められている。

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