地域特集・滋賀 在宅看取り・排泄支援体制を強化

地域特集・滋賀 在宅看取り・排泄支援体制を強化

地域特集・滋賀 在宅看取り・排泄支援体制を強化

 滋賀県は、2022年4月時点の高齢者人口が26.8%(全国平均29.0%)と全国平均より低く、地域によっては人口も増加傾向など特徴的な人口構成・動向を示す。健康医療福祉部医療福祉推進課の飯田朋子課長は「圏域ごとに見れば高齢化率の乖離が非常に大きく、県に求められる支援も異なる。現時点で高齢化率が低い圏域ほど、将来的には急速に高齢化が進む」との認識をもつ。そのため、早くから滋賀の「医療福祉」という理念を掲げ、一体的な取組を推進してきたという。

長寿・健康県の今と将来の備え

 滋賀県は、男性の平均寿命が82.73歳で全国1位、女性が88.26歳で全国2位(2020年度「都道府県別生命表」)の長寿県。また、健康寿命(日常生活動作が自立している期間の平均)は男性81.07歳で全国2位、女性84.61歳で全国7位と健康県でもある。

 高齢化率も22年4月時点の高齢者人口が26.8%(全国平均29.0%)と全国平均より低いが、湖西圏域(高島市)では37.1%と高く、湖南圏域(草津市、守山市、栗東市、野洲市)では22.3%と低いなど県内で乖離がみられる。

 飯田課長は「現在の高齢化率が低い状況は、今後の高齢化率の急速な増加の裏返しでもある。湖南圏域の75歳以上の人口は、55年のピーク時に233%(15年を100%とした場合)となる一方、湖西圏域は100%程度に収れんしていく。特に医療介護ニーズの高まる85歳以上人口で見ると、60年に湖南は350%超に達する一方で、湖北は150%程度に留まる。いずれの圏域でも医療介護の整備を進めないといけないが、圏域ごとに状況は大きく異なる」と、地域性を見据えた県の支援が求められると話す。

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給付額の伸び全国平均上回る

 今井武義主査は「介護サービスの利用傾向は、概ね全国と目立った差はみられない。ただ、介護サービス給付額の伸びで見れば、15年845億円から21年999億円と6年間で18%の伸びを示すなど、同期間の全国平均15%増を上回る傾向がみられ始めている」と説明する。

 そうした認識のもと、滋賀県では医療・介護・福祉などの縦割りではなく「医療福祉」を掲げ、早くから在宅重視の医療介護連携のサービス構築を進めてきた。

 医療・介護保険の在宅医療関連サービスの利用実人数で見れば、13年と20年の対比で▽訪問診療158%▽訪問歯科239%▽訪問薬剤378%▽訪問栄養613%▽訪問歯科衛生261%▽訪問看護170%▽訪問リハ142%――など、着実に整備が進んでいることが分かる。

多死化・病床減の中で「看取り」推進

 在宅医療福祉係の高田佳菜係長(保健師)は「元気な期間をできるだけ長く維持してもらい、最期には看取りをしっかりできる体制を目指している」と看取り体制の重視を強調する。

 背景には、19年と35年対比で約1.36倍の死亡者数が見込まれる中、今後の病床増加を期待することは難しいため、病院以外での看取りについて、みんなで考える機運を高める狙いがある。

 具体的には県独自に「医療福祉・在宅看取りの地域創造会議(23年4月1日から医療福祉の地域創造会議に改名)」(個人会員452人、賛助会員90団体=医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、社協など。23年3月時点)を立ち上げ▽QODやQOLをテーマに意見交換・研修開催(月1回)▽県民を対象とした在宅医療の啓発を行うフォーラム開催――など、顔の見える関係づくりと地域包括ケアの仕組みづくりの促進を行っている。

 また、「医療福祉推進アドバイザー」を配置し市町へのヒアリングや地域課題に応じたアドバイザー派遣、研修会の開催など全県的な取組の推進を図っているという。

排泄支援プロジェクトの展開

 ほかにも、排泄支援の普及・定着・推進をめざし「排泄支援プロジェクト」を展開している。誰もが気持ちよく排泄できることにより、本人の望む暮らしの維持向上を図ることが目的。

 県民の意識調査(19年度)では、1年以内に尿失禁を経験した人が25.5%を占めるものの、医療機関へ受診している割合は11.2%に留まる。未受診の理由として「尿もれは治療できない」や「年のせいなのでしょうがない」などの考えをもつ人が64.2%に達していることから、プロジェクトを立ち上げ、19年~21年で▽教育・啓発プログラムの作成▽県民への普及啓発▽排尿支援員・排尿サポーターの育成▽排尿障害の受診ができる医療機関や訪問看護ステーションのリスト化などを進めてきた。22年度以降は▽排尿支援員・排尿サポーターのスキルアップ▽滋賀医科大学と協働した支援者の人材育成(施設への出前研修等)▽排尿支援リーダー情報交換などの取組を行っており、圏域・市単位で取組を実践する地域が出てくるなど県内での取組実践に広がりを見せている。

SNS、動画サイトで介護福祉の魅力発信

 介護人材確保については、若者に福祉介護の仕事の魅力を伝えることに取組んでいる。介護・福祉人材確保係の西川澄子課長補佐は「ホームページのほか、若者に発信力のあるSNSや動画サイトなどを使い情報発信をしている。前向きなメッセージを届けるため、当県出身の人気タレント・ミュージシャンの西川貴教さんなどの協力もいただきながら、非常に効果的な情報発信ができている」という。

 情報発信の内容のうち「介護施設がICT機器活用の職場になってきていること」などが若者からの評判が良く、人材確保に向けたメッセージとしては有効だったという。

(シルバー産業新聞2023年4月10日号)

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