デイサービスよもぎ(岐阜県海津市) 寝浴・座浴兼用リフトで「持上げ」撤廃

デイサービスよもぎ(岐阜県海津市) 寝浴・座浴兼用リフトで「持上げ」撤廃

デイサービスよもぎ(岐阜県海津市) 寝浴・座浴兼用リフトで「持上げ」撤廃

 デイサービスよもぎ(岐阜県海津市)は、安心・安全な入浴環境をめざし10年以上前より入浴リフトを活用している。3年前には入浴システム「ゆ~らく」を新たに導入し、移乗の負担をさらに軽減。天井走行式で浴室内を自在に移動できるようになったことで、デイ自慢の人工温泉を、軽度者・重度者の誰もが楽しめるようになった。

 同事業所がリフトを使い始めたのは、重度の利用者でも安全に湯船に入ってもらう環境を整えるため。「冬場はいくら暖房をつけても、すぐ湯冷めしてしまう。お風呂でしっかり温まることが大切です」と運営会社・ノウヒ(海津市)の高田薫社長。若い職員がなかなか集まらない地域柄、既存のベテラン職員に長く働き続けてもらうため、身体的負担を極力減らす職場づくりも背景にあった。

 最初に使用していたリフトは浴槽脇に据え置くタイプ。重度者の寝浴などを行う際、浴槽への上下移動はこれで対応できたが、横づけした車いすとリフト間の移乗は人力で行っていた。

 大変さを一番感じたのが、体重90㎏、まひで指先しか動かない利用者。入浴時の移乗は職員5人がかりで行っていたという。よもぎ管理者の高田美紀さん(看護師・介護福祉士)は「裸だと持つ場所も難しく、滑りやすい。本人・職員の双方にとってかなりの危険を感じました」と話す。

介助場所を限定しない天井走行式

 他施設を見学しているときに出会ったのが、トマト(静岡市、櫻田いわを社長)が開発した介護リフト入浴システム「ゆ~らく」(湯楽)。高齢労働者の就労環境の整備を目的とする「エイジフレンドリー補助金」の助成を受け導入した。

 同製品はリフトと個別浴槽のセットで寝浴・座浴に対応できるのが特長。機械浴槽と比べ低コスト・省スペース化を叶える。リフトは天井走行式(XY型)で浴室内の場所を選ばず移乗・移動支援が可能に。入浴介助のあらゆる作業負担を軽減すると同時に、利用者・職員の安全性も担保する。
 寝浴に用いるストレッチャーは、土台部分のキャスターと分離式。洗身後はそのまま寝た状態で、ストレッチャー部分の上げ下ろしのみで浴槽へ入ることができるため、人力による抱え上げやスライドが一切不要となる。身体状況に応じてストレッチャーの背角度(0度・15度・30度)、脚角度(0度・16度)が調整できる。

 座浴に用いるシャワーチェアもキャスター部と分離式。同デイの場合、例えば座位がとれるが浴槽の段差の上り下りが難しい人の場合、背上げしたストレッチャーをあらかじめ浴槽の中に設置し、そこへスリングを装着した状態で入浴する使用方法もあるそうだ。

 生活相談員の神戸由香さんは「洗身時にかがみ込む、膝をつく姿勢がなくなり、立った状態で背中や臀部をしっかり洗えるようになりました」と導入後の変化を語る。加えて、傷や皮膚の状態、本人の表情に対する観察力もアップしたと話す。

 例えば、吊上げに恐怖心がある人は声かけをしながらゆっくり下げ、足先が湯に触れたときに一度様子をうかがう。「移乗が楽になり、かつ人の目と手で支えられる最適なリフトです」(高田社長)。

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温泉が活動意欲に

 同デイの利用者は1日17~18人で、通所日はほぼ全員が入浴。職員は着脱衣・薬の塗布担当1人、浴室内3人の4人体制で基本回している。リフトを使用するのは1日1~2人ほど。浴室入口まで車いすで入り、脱衣後にリフトでストレッチャーへ移乗し洗身→入浴の流れとなる。この間、職員の持ち上げ・抱え上げは発生しない。

 浴室には個別浴槽のほか、人工温泉による一般浴槽が設置。「これまでリフトの利用者は個別浴槽のみでしたが、温泉も選べるようになりました。湯船に浸かり、満足されているのが表情で伝わります」と美紀さんは喜ぶ。

 ある利用者は、筋力が低下しモジュール型車いすで生活していたが、温泉が機能訓練のやる気スイッチに。今では手すり伝いに10m歩行ができるまで改善したという。「清潔だけでなく、気分や意欲を高める力がお風呂にはあります。温泉となれば、なおさらです」と美紀さん。「人間の健康は清潔と、ご飯を美味しく食べること。これが不自由になった人のお世話をするのが当事業所の介護です」と強調する。

水平移動は手動、上下移動はコントローラで

水平移動は手動、上下移動はコントローラで

(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

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