日本健康・栄養システム学会 「栄養マネ強化加算」手引き作成

日本健康・栄養システム学会 「栄養マネ強化加算」手引き作成

日本健康・栄養システム学会 「栄養マネ強化加算」手引き作成

 日本健康・栄養システム学会は厚生労働省老健事業の委託を受け、4月に「令和3年度介護報酬改定対応:介護サービスにおける栄養ケア・マネジメントの実務の手引き(初版)」を作成した。21年改定で評価が充実した口腔・栄養関連の加算等の取組方法を示したもの。「栄養マネジメント強化加算をはじめ、運用スキームや管理栄養士の確保など実践的な内容。ぜひ活用してもらいたい」と同省老健局老人保健課・日名子まき介護予防栄養調整官は話す。

 同手引書は①栄養ケア・マネジメントの手順書の作成②栄養マネジメント強化加算の算定③病院・居宅との管理栄養士間の連携(管管連携)④通所サービス・グループホームへの展開――を整理。特に②では、同加算の要件に沿って▽管理栄養士の増員(50対1)▽エネルギーの摂取と消費のバランス(個別栄養ケア計画)▽ミールラウンド(週3回)の手法――を、算定施設の事例を用いて紹介している。

加算収入3倍に

 管理栄養士の増員に関しては「経営者の理解を得るための説明が必要」だとし、常勤管理栄養士が1人と2人との場合で得られる加算収入を比較。入所100人で同加算、経口維持加算、療養食加算を合わせると、1人配置では年間約190万円に対し、2人配置は栄養マネジメント強化加算(1日11単位)の上乗せ、さらに複数体制で経口維持加算の算定増が見込め、年間約640万円の収入増になる。

 エネルギーに関しては、自主的なトレーニングや趣味、頻回なトイレなど、機能訓練・リハビリ以外のエネルギー消費を見落とさないことをポイントに挙げる。メッツ(METs)を用い、介護職員と協力し日中活動からエネルギー消費量を割り出し、1日の必要栄養量に上乗せすることで意図しない体重減少を防ぐことができると説明する(表1)。

 

表1

表1

表2

表2

 ミールラウンドは介護老人保健施設リハパーク舞岡(横浜市)の事例を紹介する。同施設ではまず、観察項目を①食事時間が30分程度②食事前後のバイタルが安定③75%以上摂取できる④むせがない、飲み込みがスムーズ⑤発熱、たんの増加など呼吸器感染の所見がない⑥口腔内に食物残渣がない――の6点に絞り込み。各項目で課題が把握された場合は、その原因究明を行う。

 例えば③の食事量が満たせなかった場合、「原因」と「対応例」を整理。【原因】食べられない→【対応例】自助具の選定、2回に分けて提供、動作のトレーニング、【原因】食事の認識ができない→【対応例】食器の選定、配膳位置、1品ずつ説明、好物の提供、を検討する。

 さらに、同施設では食事中の誤嚥の有無や、咽頭運動の確認に「咽喉マイク」を活用。利用者と一定の距離を保ち実施できるため、感染対策上も有効だと評価する(表2)。

在宅では食環境の確認

 21年改定では、通所サービスで管理栄養士が利用者の栄養評価を行う「栄養アセスメント加算」が新設。個別の栄養ケアを実施する「栄養改善加算」へのつなぎとなる。両加算はいずれも外部の管理栄養士との連携が可能。栄養マネジメント強化加算の算定施設はその連携先の一つに認められている。

 同手引書内「通所サービスへの展開」では、居宅訪問による在宅の食事内容・食習慣の把握について解説。「誰と(または1人で)食べているか」「買い物や食事の支度は誰が(本人がどこまで)行うか」「食品の偏りがあるか」「義歯の不適合はないか」など、在宅ならではの確認項目も例示する。

 また、アセスメントの事前準備として、サービス計画書で本人のニーズを把握することや、通所事業所、本人・家族に対し、必要な食・栄養情報について確認・同意を得ることが必須であることも挙げている。

 手引書は同学会サイトにて( https://j-ncm.com/ )​

(シルバー産業新聞2022年5月10日号)

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