「家族市場」の動向と今後(その1) 村田裕之

「家族市場」の動向と今後(その1) 村田裕之

「家族市場」の動向と今後(その1) 村田裕之

家族市場とは何か

  家族市場とは、家族構成員どうしの関係性によって需要が生まれる市場と定義する。家族市場の一つ目は、「親・兄弟・配偶者・子・孫が形成する市場」である。これには、扶養義務(子供・孫の育児、子供の教育、就活支援、婚活支援、親の介護など)から支出するもの、冠婚葬祭(七五三、進学、結婚、葬式、墓、法事)のセレモニーのために支出するもの、互いの愛情や絆を深める(誕生日、記念日など)ために支出するものがある。
 
 二つ目は、疑似家族としての「ペットが形成する市場」である。少子・超々高齢社会の進展で「ペット」という疑似家族の存在感が大きくなっている。
ペット市場も一つ目の「親・兄弟・配偶者・子・孫が形成する市場」と似た構成となっているが、近年特に目立ってきているのがペットの長寿命化による医療市場や老犬ホームといった介護市場、そのための保険市場、葬儀や墓といった葬送市場である。 

 三つ目は、家族やペットの代替としての「ロボットが形成する市場」である。コミュニケーション・ロボットなどは疑似家族の一種といえる。
本稿ではこれら三つを総称して家族市場と呼ぶことにする。他の一般的な市場に比べた家族市場の特徴は、家族構成員(ペットやロボットも含む)が一定の段階(ライフステージ)になると必要な出費が多く、比較的景気の波の影響を受けにくい性質があることだ。

家族市場を読むカギは何か

 一般に私たちがモノやサービスを購入するのは、何かの変化が起きた時である。家族市場でも同じことが言える。すなわち、家族の構成員である「親・兄弟・配偶者・子・孫・ペット・ロボット」の各々に何らかの変化が起こると、他の構成員に影響をおよぼし、新たな需要を促す。

 また、少子化・超高齢化など社会構造の変化によって、家族の構成員どうしの関係性が従来と変化している。こうした変化も新たな需要を促す。
したがって、家族市場を読むカギは、①家族構成員がどのように変化しているのか、その背景は何か②家族の構成員どうしの関係性は従来と比べてどのように変化しているのか、その背景は何か――を注意深く見ることだ。次にそうした例を見てみよう。

近居により「ゆるやかな大家族」が増えていく

 親世帯と子供世帯とが別居はするものの、30分以内程度で行き来できる距離に住む形態を近居(近接居住)という。近居が増えてきたのは、バブル崩壊後の90年代後半である。
興味深いのは、近居をすると、親、子、孫の三世代が大家族のようにともに行動する機会が増えることだ。
 
 私は、これを「ゆるやかな大家族」と呼んでいる。三世代が一つの家に同居する昔の大家族とは異なるためだ。
「ゆるやかな大家族」では、同居していないことで親と子または親と孫が直接顔を合わせる「回数」は減るが、それが逆に直接顔を合わせた時のコミュニケーションの「密度」を高める。
つまり、顔を合わせた時に相手とのコミュニケーションを深めようとする気持ちが湧き、近くに住んでいるために「行動を共にする機会」が、遠く離れて別居していた時より多くなる。

 すると、三世代による買い物や外食、レジャーなどで新たな消費が生まれ、結果として親であるシニアの消費支出が促される。
「ゆるやかな大家族」では、普段家族全員が同居していないために、互いの記念日のお祝いやそのお返しなどの家族イベントに力を入れる傾向がある。
また、このような「大家族」による外出機会の増加は、ミニバンなど大人数向けの移動手段の需要も生む。

 さらに、同居していないために、かえって頻繁に連絡を取り合うため、電話、メール、LINEなどの通信需要が増える。
このように「ゆるやかな大家族」では、同居せずに互いに一定の距離を置いていることで、コミュニケーション密度が高くなる。これが新たな需要を生み出す背景だ。

 (24103)

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