新・ケアプランは恐れるに足らず?!/石山麗子(連載35)

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新・ケアプランは恐れるに足らず?!/石山麗子(連載35)

 10月から、「区分支給限度基準額の利用割合が7割以上で、利用サービスの6割以上が訪問介護」の基準に該当する居宅介護支援事業所は、市町村が求める場合に訪問介護が必要な理由の記載や市町村へのプランの届出などが必要になる、新しいケアプラン検証の仕組みが始動した。

 国民健康保険団体連合会の介護保険給付適正化システムを活用し、居宅介護支援事業所単位で抽出するものだ。釈然としない心持ちの介護支援専門員は少ない。なぜか。そして、これは恐れるべきものか。

 ケアプラン検証の目的(表1)は、利用者本位の視点が示されてはいるが、本当は給付抑制なのではないか、という疑念が湧く。その源には、Ⓐ訪問介護を安心して利用できなくなる利用者への懸念、Ⓑ自事業所が抽出の対象になるのではないかという我が身への不安、Ⓒ一層保険者の管理下におかれるという息苦しさ、等がありそうだ。ⒶⒷⒸごとに整理しよう。

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 Ⓐ

 訪問介護を安心して利用できなくなる利用者への影響は、ケアプラン検証の目的が、機能すれば心配無用だ。更に従前の申告の手間すら省ける優れた仕組みだ。とはいえ懸念点は複数ある。例えば多職種会議で給付の必要性を理解されず、給付抑制という結果に陥ること。あるいは介護支援専門員がケアプラン提出を回避したい気持ちから、原案作成の時点で回数の調整をしてしまうこと。つまりこんな仕組みだから、不本意にも利用回数の調整をしてしまうではないか、という制度への憤りである。俯瞰して考えてみよう。

 今後、このような仕組みは強化されても緩和されることはない。だから、とりあえず今をやり過ごすような方法はかえって事態を悪化させる。仮に介護支援専門員が我が身に降りかかる火の粉の回避を優先し、利用者にとって必要な給付を原案作成時点で微調整するなら、我慢を強いられる利用者の数は増加する。もし給付抑制したい行政があるなら、個別の点検で労力をかけるより、介護支援専門員の心理に間接的にはたらきかける政策がはるかに効率的で効果的な策であると誤認されかねない。

 介護支援専門員の責務は、利用者の意向の尊重、個別の状況に応じた自立支援だ。その実現は、サービス利用状況(給付)に影響される。保険者から抽出されやすいケアプランの傾向を想像すれば『給付額が、平均値から乖離』したものだろう。平均値から乖離するのだから、生活に個別性の高い事情があることは当然推察される。

 介護保険における給付の水準の考え方は「平等=当配分」ではない。「公平=得られる結果が同程度になる」である。だから介護支援専門員は個別の状況に応じたケアプランを作成する。仮に平均値から乖離した回数でケアプランを立てる必要性があるなら、個別性に配慮した公平な給付である理由を利用者に代わって説明するのがプロの介護支援専門員だ。『制度のルールのなかでの個々への配慮』は、時に相反することもある。だから調整を図る専門職として、ケアマネジャーは存在する。我々の誇るべき高い専門性である。何より利用者にとって担当の介護支援専門員は一人しかいないことを忘れずにいたい。

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 自事業所が抽出の対象になるのではないかという我が身への不安は果たして必要か。事業所ごとの抽出の条件(表2)をもとに、確率を推算してみよう。抽出される事業所は、全国の居宅介護支援事業所の請求件数(約4万件)のうち、※13%の見込みなので、約1200事業所と推算される。全国の市町村数は、※21718だから、1市町村あたり1事業所以下の確率となる。あなたの事業所は、前提となる条件①②を満たしたうえで、該当しそうだろうか。仮に該当しても、ケアプランの提出は必須ではなく、あくまで市町村の判断である。
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 一層保険者の管理下におかれるという息苦しさは、保険者の方針に影響される。他方、保険者の対応は、専門職の自律的なはたらきかけの度合いや継続性の反映ともいえる。市町村介護支援専門員団体の活動と保険者の協働を応援したい。

 さて、新ケアプラン検証の方法は、恐れるべきものだろうか。仮に生活援助の回数が示されたように、身体介護も同じ手法が適用されていたらどうか。給付の抑制の色あいは、一層濃くなっていたかもしれない。新ケアプラン点検は、財源問題と法の主旨を汲んだ給付の調和を模索し、難渋のうえの現況下における最善の政策といえる。だからこそ公平な給付に向け調整は一層求められる。意思表示することが難しい利用者が増加するなか、介護支援専門員には、迎合でも、あきらめでもなく、一人ひとりの利用者の望む生活の実現に向けた真の公正さが期待される。

(シルバー産業新聞2021年11月10日号)

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