医療系訪問サービス 医療重度者・認知症対応の評価拡充
厚生労働省は11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会で、主に訪問系サービスについて次期報酬改定の具体的な改定案を提示した。訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導の論点・改定の方向性をまとめた。
訪問看護 専門看護・看取りのさらなる評価
①に関しては、22年診療報酬改定で新設された専門管理加算(2500円、月1回まで)と同様のしくみを想定。緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師が対象疾患の利用者に対し計画的な管理を実施した場合に加算できる。
訪問看護における医療処置の実施件数は年々増加し、特に「褥瘡予防」「浣腸・摘便」「緊急時の対応」などのニーズが顕著。
②のターミナルケア加算(死亡月に2000単位)についても、「医療保険と同様のケアが提供されている」との実態から、医療保険のターミナルケア療養費(25000円)に合わせて単位数を引上げる方針。加えて、離島などの利用者へ医師が遠隔で死亡診断等を行う際、看護師が利用者宅等でICTを活用し、診断を補助した場合の加算も新たに設ける。診療報酬では既に「遠隔死亡診断補助加算」(1500円)が設定。ICT等を用いた在宅看取りに係る研修を要件としている。
③の緊急時訪問看護加算(1回574単位、訪問看護ステーションの場合)は85%以上の事業所が算定する一方、24時間体制について「看護職員の精神的・身体的負担」(88.1%)、「夜間・休日対応できる看護職員が限られている」(63.3%)が課題に。これを受け同省は、利用者・家族からの電話連絡を看護職員以外の職員が受けてもよいとする緩和案を提示した。電話対応は同一事業所の職員とし、かつ緊急訪問の必要性を看護師等が速やかに判断できる連絡体制を求める。
訪問リハビリ 事業所拡大へ老健のみなし指定
①~③は通所リハビリと同様の取扱い(関連=18面「トピックス」)。医療保険から介護保険へのリハビリの円滑な移行を支援する。
⑥の認知症対応では、昨年度の老健事業で訪問リハビリの介入効果を検証。IADLや精神行動障害、介護負担感などの指標で、いずれも介入群で高い改善傾向が見られた。現行、通所リハビリや老健では「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」が設けられているが、これを訪問リハビリにも拡大する方針。
⑦は訪問リハビリの拡充が目的。現行は病院・診療所での訪問リハビリのみなし指定が認められているが、老健では別途事業所指定番号の取得が必要となる。老健で訪問リハビリを提供している割合は28・4%。同省は「訪問リハビリ開設の阻害要因になっている」と指摘し、みなし指定の開設主体に老健を含めることを提案した。
その際、医師の配置「常勤1人」についても、老健の「常勤1人で、複数の医師勤務など一定の要件のもと常勤換算1人も可」に揃え、より提供しやすくする基準の見直し案も示した。
居宅療養管理指導 終末期への訪問栄養、回数引上げ
①は前回改定で新設した基本報酬の区分。訪問診療に伴い処方箋が交付されている利用者に対し、ICT等を用い遠隔で服薬指導を行った場合に1回45単位を月1回に限り算定できる。今回の対応案は22年以降の薬機法改正、および診療報酬改定と整合させた形。現行では認められていない▽初回からの算定▽薬局以外での実施▽月4回の算定(現行1回)――を可能とするとした。
③の薬局からの管理栄養士訪問は、21年の地方からの提案の一つだったが、同省は薬局管理栄養士の資質、勤務状況を踏まえ「今回の報酬改定では現行の基準を維持」と明記した。
④の管理栄養士の訪問回数引上げについては、医師が一時的な頻回訪問が必要と判断した場合に限り認める方向。退院・退所直後の食事の環境整備や、終末期の在宅療養に対し、はきめ細やかな支援が想定されるとしている。
同省によると、終末期の在宅療養者の約7割は嚥下調整が必要。また、家族介護者の半数以上が「本人に好きな物、食べたい物を食べさせたい」や「食に関する困りごとがある」と回答している。管理栄養士の介入効果では「終末期に経口摂取ができた」が最も多く、「困りごとが改善した」「食事作りの負担が改善した」と続く。