茨城県の介護保険 全国で最も低い認定率 高齢期でも活動できる環境づくり
茨城県は関東北東に位置し、福島県、栃木県、千葉県、埼玉県に面している。2020年10月時点の高齢者数は約84万人で、高齢化率は29.9%と全国平均を上回る。一方、22年10月時点の要介護認定率は15.8%と全国で一番低い。健康維持や在宅生活を支える取組みを紹介する。
介護サービスの利用状況では居宅サービス利用者数の伸びが大きく、介護保険創設から22年で約3.6倍に伸び、現在では全体の約78.3%が居宅サービスを利用している。このほか、地域密着型サービスの看護小規模多機能の利用件数も21年10月から22年10月で約110%増加している。
同県の第一号被保険者の保険料基準額は5485円と全国平均よりも529円低く、全国で4番目に低い保険料となっている。また、一人当たりの給付月額も約1万9588円と全国で3番目に低く、このうち在宅サービスも9371円と全国で2番目に低い給付額となっている。
在宅生活を支える観点から在宅医療や地域包括ケアシステムの深化・推進を後押しする「茨城県地域包括ケア推進センター」を県医師会へ委託して設置。看護師、リハビリ職、ケアマネジャー等が常駐し、医療・介護の連携推進に取組んでいる。
65~74歳の就業割合約33%
保健医療部健康推進課地域包括ケア推進室の大澤和則室長は「茨城県は農業産出額が全国第3位であることからも農業に携わっている人も多く、高齢になっても働いている人の割合が多い」と説明する。同県では希望する高齢者が長く働ける職場環境を推進しており、県内企業のうち希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は21年時点で91.0%。
同課の本橋明子室長補佐は「要介護認定率が低い要因として、長く働く高齢者が一定数いることや、県民の意識として長く元気でいること、できるだけ自分の力で生活したいという想いがあるということが考えられる」と話す。
高齢者の経験を活かす「元気シニアバンク」
長年にわたって培われた高齢者の知識・技能・ノウハウ等を地域の様々なニーズに積極的に活用し、地域貢献や高齢者の社会参加活動を通じた生きがいに繋げる「元気シニアバンク」を設置。運動指導や楽器の演奏など、実施できる活動内容を登録することで、高齢者施設や老人クラブ、子ども会などへ紹介し、依頼に応じた活動に繋げる。21年度末時点の元気シニアバンク登録件数(活動者数)は286人。登録者は活動地域ごとの検索もでき、県内各地域で幅広く活用されている。
長寿福祉課の長野治幸係長は「高齢者の社会参加を後押しすることで、長く生きがいを持って生活いただけるサポートをしていきたい」と話す。
この他、同県は「いばらき健康寿命日本一プロジェクト」を掲げ、働き世代を主な対象として、健康のために行った取組みでポイント取得や景品抽選が行えるヘルスケアポイント事業を実施。スマートフォン専用アプリ「元気アっプ!リいばらき」をダウンロードして、▽運動▽健診受診や健康教室参加▽野菜摂取や減塩▽社会参加――などに取組むとポイントが付与される。
「茨城県の成人1日当たりの食塩摂取量は、国が定める目標量を男女とも3g程度ずつ上回っている。減塩に取組む店舗を『いばらき美味しおスタイル店』として指定したり、毎月20日を減塩の日とするなど、幅広い人が健康を意識するきっかけづくりを行っている」(大澤室長)
認知症者の在宅生活を支援
認知症の人が住み慣れた地域で暮らし続けるため、日々の生活で利用することの多い銀行や郵便局、コンビニやスーパー等へ「茨城県認知症の人にやさしい事業所認定事業」を実施している。
認定の要件は認知症サポーターが1人以上勤務し、「ゆっくり話す」など認知症の人にやさしい取り組みを実施していること。認定された事業所には認定書とステッカー(画像)が配布され、23年10月末時点で1750カ所が認定を受けている。また31万人以上の認知症サポーターも育成。今後は地域のボウリングやカラオケ等のレジャー施設での認定も目指していく。
「認知症施策は行政だけでは限界がある。地域で認知症の人を支えられるように、安心して外出できる街づくりにご協力いただきたい」と大澤室長は語った。
(シルバー産業新聞2024年1月10日号)