秀峰会 17種類・165事業所を展開する社会福祉法人
「ヒューマン・ケア・ネットワーク」構想
秀峰会には、「ヒューマン・ケア・ネットワーク」を基本理念に事業を展開する。「これは、横浜市を中心に介護・看護・リハビリ・医療・保育等のニーズに包括的、統合的に応える仕組みで、我々の事業展開の根幹になっている」と理事の竹山大二郎氏は語る。
きっかけは、02年に特養ホーム「南永田桜樹の森」を開設したこと。同ホームでは、特養の中に、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援、訪問介護、訪問入浴、福祉用具貸与サービスを併設、さらにその近くに訪問看護リハビリステーションを設置。これにより、総合的な介護サービスの提供を行える体制が整った。
さらに、横浜の住宅街に立地しているため、地域の総合的介護サービス拠点として、他の社会資源と連携しながら、迅速かつシームレスに要介護者を支援できる体制が整った。この仕組みができたことで、多種複合的サービスを必要とする利用者にも、顔馴染みのスタッフが効率的かつ継続的に関わりを持つことができるようになった。この実践結果から、秀峰会では、「ヒューマン・ケア・ネットワーク」構築を本格的に進めることになった。08年には、診療所の「みずほクリニック」を港南区に開設。在宅医療にも取り組み、医療と看護・リハビリ・介護の連携体制を整備。クリニックは現在、3事業所を運営している。
さらに12年には、地域密着型サービスを強化するため、小規模多機能型居宅介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所を次々に開設。現在、小規模多機能は9施設、定期巡回サービスは横浜市内に14事業所となり、横浜市においてトップシェアを誇っている。
また、12年には保育園「つくし保育園東戸塚」も戸塚区品濃町に開設。この保育園は、同一建物内に居宅介護支援・訪問介護・訪問看護・リハビリに加え、協力会社の通所介護が併設されている。さらに建物上階は、高齢者住居となっており、全世代対応型の施設として、地域のニーズに応えている。
「デス・エデュケーション」への取組
上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏によって提唱された同教育は、「死」を正面から見つめることで、命の尊さに気づき、限りある「生」をより良く生きることを目指す考え方となっている。
創業の施設、「さくら苑」(特別養護老人ホーム)では、開苑以来、亡くなった方の「お別れ会」を行ってきた。「当時は、世間的に死を隠す傾向が強かった時代でしたが、デス・エデュケーションの一環として、死を隠さず、オープンにしてきました」と竹山理事。食堂ホール中央に遺体が安置され、家族が旅立つ人に寄り添う。周囲を仲間の入居者、職員が大きな輪になって囲み、花を手向け、手を合わせて別れを告げる。故人を偲ぶと同時に、残された入居者やスタッフは、改めて人生や死を考える機会となる。現在でも利用者や家族の希望により、特別養護老人ホーム「さくら苑」と「南永田桜樹の森」では入居者や職員と一緒にお別れ会が行われている。
「その人がその人らしく生きる最後の瞬間まで、できる限りの支援をする。ブレず、変えず、地域に密着しながら進み続けること。それが、我々が存在する意味であり、使命だと思っている」(竹山理事)。