ホームヘルパー国賠訴訟が結審

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ホームヘルパー国賠訴訟が結審

 現役のホームヘルパー3人が、働き方等をめぐって国(厚生労働大臣)を訴えていた「ホームヘルパー国賠訴訟」が、10月25日、東京高等裁判所で開かれた第4回控訴審で結審した。控訴審が4回開かれることは異例。

 2019年11月1日、現役ヘルパーの藤原るか氏、伊藤みどり氏、佐藤昌子氏が、ホームヘルパーの労働時間のうち、訪問先との移動の賃金が十分に支払われていないことや、待機時間や書類作成・研修にかかる時間などの付帯労働時間への支払いが不十分であり、国の制度に問題があるとして東京地方裁判所に訴状を提出。「被告は、原告らに対し、各金330万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え」と訴え、地裁で敗訴したのち、控訴していた。この付帯労働時間はヘルパーの労働の約4割に当たるという調査もある。

 労働基準法では付帯労働時間を労働時間と認めており、最低賃金に準じる額を払わなければならないと定められている。この点について国は「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(成16年8月27日付け基発第0827001号)を発出し、以降、09年、21年と3回にわたり同様の通達を発出してきた。

 しかし原告は、国が「規制権限」を行使せず、ヘルパーの労働環境が違法である状態を放置したことは、国家賠償法上(国賠法1条1項)の違法であると主張。「国の指導どおりに労働者を処遇していたら、事業所経営はもたない」と述べ、約150の証拠を積み上げた。これに対して被告は、「国は違法な事業所に指導をするなど権限を適切に行使してきている」と回答してきた。

 控訴審では、被告がはじめて原告に対して反論を展開。双方の意見が食い違うことから、裁判長は原告の証人尋問を認め、第4回控訴審で初めて口頭での尋問がかなった。

 証人尋問では、厚労省が回答で示す「介護事業経営実態調査」を分析し、独自の調査により、移動等の付帯労働時間への支払いを可視化。また、訪問介護事業所の倒産件数の増加や、とりわけ社会福祉協議会の倒産に触れて、準市場で成り立つ介護保険制度が、営利目的化し、小規模事業者や介護職員を窮地に追い込んでいる実態などを指摘した。原告の佐藤氏は、福島県の中山間地で1時間かかる移動や事業所経営の窮状を訴えていた。

 判決は24年2月2日11時に高等裁判所で言い渡される。

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