全老健大会 フィードバックの活用や将来のLIFEのあり方を議論

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全老健大会 フィードバックの活用や将来のLIFEのあり方を議論

9月22〜23日、神戸市で「第33回全国介護老人保健施設大会 兵庫」が、現地とオンライン参加のハイブリッド形式で3年ぶりに開催された。パネルディスカッションでは「全老健が考える未来のLIFE~サービスの質の評価、次なる展開へ~」をテーマに、全国老人保健施設協会常務理事の大河内二郎氏を座長に、老健施設でのLIFEの現状と、フィードバックの今後、将来への展望・要望について議論が交わされた。

これまでのLIFEの成果

 厚生労働省老健局老人保健課課長補佐の佐々木広視氏は「医療分野でのエビデンスに基づく診療と比較すると、介護分野では科学的な裏付けが十分ではない」とし、「介護関連データベースによる情報の分析やフィードバックが重要である」と、国を挙げてLIFEへの取り組みを求める理由を説明した。

 これまでの成果として「LIFE導入前後で、利用者のアセスメントに変化があった事業所・施設が約半数におよび、ADLや褥瘡等を基準に沿って評価する割合が全体の約8割に増加した。22年6月時点で5.5万事業所がデータ提出に取組み、利用者数で400万人、データ項目で900万件の情報が積み上がっている」(佐々木氏)などを挙げた。

フィードバックの課題と解決に向けた動き

 一方で、当初の開始予定よりフィードバックが大幅に遅れ、現時点で「科学的介護推進体制加算のうち事業所フィードバック」のみの限定的な実施となっていることについて、パネラーから、今後の実施予定とフィードバック情報から解釈できる情報の少なさ・不十分さの改善を求める声が相次いだ。

 佐々木氏は「すでに公開している『ケアの質の向上に向けたLIFEの利活用に関する事例集』に加え、今年はフィードバック解釈のためのマニュアルを作成する」と回答した。

 また、国のデータヘルス改革工程表に触れ「事業所間等での介護情報の共有と、利用者自身が介護情報を閲覧できる仕組みの整備に向けて、ワーキンググループを立ち上げた」とデータ活用が進む将来にも言及した。

「LIFEの負担感」無理のない範囲でフィードバック活用を

 LIFEを現場職員に取組ませる立場から、介護老人保健施設フェルマータ船橋事務長代理の塩原貴子氏は「運用開始からデータ入力に手間がかかることを予期していた」とし、手間の削減のための介護ソフトでデータ提出をスムーズに運ぶよう取り組んだと振り返る。

 ただ、想定外だったこととして▽介護ソフトメーカーが違えば、入力の疑問点や改善方法のなどの課題も異なり、他施設と事例の共有ができなかった▽入力項目が現場の介護の何を示す指標なのか現場職員から疑問が出た▽個々の利用者の提出時期の管理が困難だった――などを挙げた。

 全老健共済会LIFE相談窓口の宝田直也氏はLIFEのシステム仕様が使いづらいと指摘。今後のシステム大規模改修の際に、使い勝手の良いシステムを期待するとした。

 同時に、情報連携やPDCAサイクルによる科学的介護の取り組みは中長期的な方向性として重要性を増すことに変わりないと強調。

 現時点のシステム仕様やフィードバックの課題を理由に先送りすることなく、ケアに関するSPDCAサイクルの一環として無理のない範囲で活用することを勧めた。

事業所間の比較指標としてLIFE活用

 LIFEや医療データ連携・活用の第一人者である産業医科大学医学部公衆衛生学教授の松田晋哉氏は「栄養状態とADLを評価するFIM得点が関連すること」を示し、LIFEが要介護高齢者の自立度を多面的に評価していると指摘。事業所間の比較指標として役立てることができるとした。
 一方、評価指標には類似項目も多く、入力作業の効率化のために記録の標準化の必要性を訴えた。

 また、収集するデータとして主治医意見書の「今後発生する可能性の高い状態とその対処方針」の項目を提示し、利用者の要介護度悪化防止、各事業所等の評価指標への活用を強調した。

介護情報の正確な入力と介護ソフトの標準化を

 LIFE推進の中心的人物である全老健常務理事の高橋肇氏は、医療分野でのDPCを例に、エビデンス構築を目指す場合、LIFEでも情報の入力と監査の必要性を指摘。医療の「診療情報管理士」などに相当する専門職の創設を提案した。

 また、医療情報共有の実例として、現在、北海道函館市で運営される患者の検査や画像データなど医療施設間で共有できる地域医療連携ネットワーク「ID-Link」を取り上げた。

 さらに今後の電子カルテの標準化に向けて▽コードの標準化▽病名や処置などの項目の分類や記載法を統一する構造化▽異なる電子カルテ間で情報を交換する際の共通規約(HL7FHIRなど)――の重要性と介護分野で同様の仕組みの整備が進んでいない点を指摘した。

(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

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