社会福祉法人自生園(小松市) 働きやすい職場づくりが良いケアに繋がる

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社会福祉法人自生園(小松市) 働きやすい職場づくりが良いケアに繋がる

 社会福祉法人自生園(石川県小松市、木崎馨雄理事長)は1300年の歴史を持つ那谷寺が設立母体で、困っている人を助けたいと思う慈悲の心を大切に、「自分のできることを実践する」との教えに従い、社会活動の一環として養護(盲)老人ホーム、特別養護老人ホーム、通所介護、グループホームなど16事業を地域に根差して展開してきた。

 常任理事で特養自生園の今井要施設長は、法人創設当初から41年に渡り職員として携わってきた。「措置時代から、介護保険制度創設以降の酸いも甘いも見てきた。ただ、社会福祉法人として地域の人が安心して暮らせるよう貢献するという目的は当初から変わらず、職場環境改善、ICT導入、介護ロボット活用など、より良いケアを目指して石川県のトップランナーとして取組んできた」と振り返る。

働きやすい環境づくりで離職率8%以下実現

 同法人では▽世間善し▽職員善し▽事業所善し――の「三方善」の理念のもと事業を展開してきた。今井さんは「サービスには職員が欠かせない。人材確保・定着を推進していくためにも何より『働きたいと思われる職場環境づくり』が重要」と強調する。

 完全週休2日制を導入し年間休日数は120日、フィットネスクラブと提携して職員の健康増進もバックアップ、職員の労働時間短縮のためタブレット端末等のICT機器も積極的に活用する。

 このほか、職員が体調不良などで急な欠員がでた場合に対応できるよう、特養で2人の余剰人員(サポート職員)を常時確保。サポート職員にはその日に固定の業務は指示せず、緊急時にヘルプで入れるよう、周辺業務を行いながら待機する。

 直近の同施設の離職率は8%程度。今後はより職員定着に繋げるためにマネジメントができる職員育成にも力を入れていく。

3種の見守り機器を活用した手厚い看取り体制

 同施設は石川県の「ICT・IoT導入による介護人材定着促進事業」の指定を受け、県内でも先駆けてICT化に取組んできた。現在▽ベッド上で利用者の睡眠状態やバイタルを取得する「aams(アアムス)」▽端座位、離床などベッド上での利用者の動作を検知する「M-2」▽ベッド上の利用者の動作をモニターを通じてシルエットで確認できる「Neos+Care(ネオスケア)」――の3種を利用者の身体状況に応じて活用している。

 例えば、バイタルデータによる見守りでは、巡回以外でのデータによる早期対応の他、終末期の利用者のデータを分析することで家族が看取りに立ち会えるよう活用している。

 「私の死生観は『最期を1人でいかせてはいけない』であり、必ず誰かが付き添うよう心掛けている。しかし、職員よりもご家族が看取ることが一番。見守りシステム導入前はご家族が看取りに立ち会えたケースは5割程度だったが、現在はほぼすべてのご家族に立ち会っていただけている」と効果を話す。

 また、看取り期に職員の手厚いケアを家族が直接見ることで施設の評価にも繋がっているという。

タイ人スタッフが活躍

 同法人では、外国人人材の育成にも力を入れており、タイ・バンコクと提携を結び現在4人のタイ人職員が勤務している。2019年に2人を留学生として受け入れ、日本語学校を業後、介護専門学校に入学、22年3月に介護福祉士に合格した。その後、特定技能の枠で新たに2人を受け入れた。

 「タイは仏教国であり、比較的日本の文化とも近い。勤勉で明るく、『母国で介護をしたい』など志が高い人が多い」と今井さん。11月には調理スタッフとして技能実習生の受け入れを予定している。

言語聴覚士派遣事業を要望

 同施設では20年から協力病院の言語聴覚士による誤嚥性肺炎予防に取組んでいる。

 利用者の食事姿勢や食形態の見直し、職員の食事介助方法の指導などを行った結果、誤嚥性肺炎の患者数が20年36人、21年18人、22年8月時点で1人と大幅に改善した。

 今井さんは、副会長を務める石川県老人福祉施設協議会として、県に言語聴覚士を派遣した巡回指導を実施できないか要望を出す予定という。

 「困った時に手を差し伸べるのではなく、地域の方に『何かあったら自生園があるから安心だ』と思っていただけるよう、地域や時代のニーズをいち早く察知して、社会に貢献していきたい」と語っている。

(シルバー産業新聞2022年9月10日号)

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