介護食の展示・相談 バス待合室で 大学病院に「食の支援ステーション」
新潟大学医歯学総合病院の敷地内、バス待合室に「食の支援ステーション」が設置されている。介護食品や口腔ケア用品、食器や自助具などが展示。専門職が常駐し、来訪者への聞き取りとアドバイス、サンプル提供などを行う。
その場で購入を希望する場合は、隣の売店で販売。また、聞き取りの結果、摂食嚥下の機能低下が進行している場合などは、必要に応じて主治医につなぐこともあるという。
来訪者へのアンケートでは、嚥下対応だけでなく高カロリー食へのニーズも高かったと伊藤氏。「思っている以上に来訪者は低栄養を心配されている。介護食をもっと身近に利用できるよう、ステーションを通じて周知していく必要がある」と強調する。
産学連携で地域の食支援
6月現在、個人会員は229人。医師、歯科医師を中心にコメディカル、介護職など幅広い専門職が登録する。企業会員は介護食品・食器具・口腔ケア用品メーカーなど18社。
主に専門職を対象とした講演会を年2回開催。「摂食嚥下障害とサルコペニア」等をテーマに実施した5月の第1回講演会(Zoom開催)は161人が参加した。「オンライン化にしたところ、県外からの参加者も増えた」(伊藤氏)。
これとは別に、患者本人や家族、地域住民向けの摂食嚥下セミナーも毎月2回、大学病院内で開講(現在コロナ禍で中断)。無料、予約不要で参加できる。会員企業と協働し、テーマに合致した商品展示・体験も。「職員がローテーションで参加し、講習に活かしている介護施設もある。ケアマネジャーや介護職の参加も多い」と同氏。研究・開発だけでなく、情報発信も重要な事業だと、研究会のスタンスを語る。
在宅診療の質高める「遠隔支援」試行へ
「特に在宅では、摂食嚥下障害患者を専門的に診療できる医療従事者が不足している」と伊藤氏は説明。現在、登録医は県内23人。その多くが新潟市内に集中している。
そこで、今年度から取組むのが遠隔システムを用いた教育・臨床の仕組み。診療現場と同大学をつなぎ、内視鏡の映像と患者の全身状態などを見ながら指示・助言等を行う。看護師やケアマネジャー、ヘルパーなど他の関連職種も同時接続し、生活情報を共有しつつ最適な支援につなげるイメージだ。
システム構築に必要な資金はクラウドファンディングで調達。今後2年かけて実証研究とシステム構築、県内普及をめざす。
現行では摂食嚥下障害の遠隔診療は保険診療対象外だ。「県内普及が進めば全国展開、いずれは同システムの医療機器認可も視野に入れている」と伊藤氏は述べた。
(シルバー産業新聞2022年7月10日号)