松林ケアセンター 「食べたい」 を実現する食支援①

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松林ケアセンター 「食べたい」 を実現する食支援①

 社会福祉法人慶寿会(小笹慶資理事長)が運営するデイサービス「松林ケアセンター」(神奈川県茅ヶ崎市)は、長年、利用者を笑顔にする食支援に取組んできた。食事環境全体を評価することで多職種連携が進み、早期発見・早期対応により体重減少の抑制や、食形態の改善などにつながっている。今回は、管理栄養士による五感で楽しむ介護食づくりについて紹介する。

 同法人では小笹理事長の「食事は生活の中でも非常に重要だ」との考えから介護食づくりに力を入れている。常勤管理栄養士の宮城島宏さんと清水宏美さんが中心となって食支援に取組んできた。

 現在、同事業所は日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した嚥下食の分類に沿って、7種類の食形態を利用者に合わせて提供している。

 「食形態だけではなく、飲み合わせや素材の組み合わせも大切なポイント」と話す。例えば、スポンジケーキに生クリームを添えることで、油分が加わりなめらかになり食塊が作りやすくなる。

 また、必ずお茶などの飲み物と一緒に提供することもポイント。水分補給や口を潤すだけではなく、食べ物をふやかして食べやすくする効果もある。

 同事業所手作りの「お麩ラスク」はサクサクとした食感を楽しみながら食べられるほか、噛む力が弱い場合は口の中でゆっくり溶かすことでやわらかく食べやすくなる。

見て・触って・おいしい介護食

 宮城島さんは介護食を作る際に「味・香り・触感など五感で楽しめる料理」を大切にしている。取材時に提供された手作りの柚子ゼリーは、柚子の皮を容器として活用。柚子の爽やかな香りと、皮の質感を楽しむことができる。

 「認知症や眠そうにしている人でも、香りに反応して食べていただけることもある。また、柚子ゼリーなどは皮の触感を楽しみながら自分の手で持って食べるなど、食事動作の意欲向上にも繋がっている」と話す。

 2020年には「第7回嚥下食メニューコンテスト」で64作品の中から、宮城島さんが考案した「オイスターバブル~湘南の薫りにのせて~」が最優秀グランプリに輝いた。

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 牡蠣は亜鉛、鉄、ミネラル、ビタミンB1、ビタミンB2などの栄養を多く含んでいる。「貝類は歯応えがしっかりしており、噛みきりにくいため摂食嚥下能力が低下するとあきらめてしまう食材の1つ」(宮城島さん)。

 作り方はまず、牡蠣の貝殻を洗ってから茹でる。牡蠣むき身は牛乳で茹でたのち、ミキサーにかけてペースト状にしてから片栗粉と合わせる。

 卵白・塩・トレハロースを合わせてメレンゲを作り、ペースト状にした牡蠣むき身と合わせ、貝殻に流しいれる。最後に75度に設定したオーブンで15分蒸し、食器に盛り付けて完成。

 牡蠣の貝殻を使うことで、見た目だけではなく手触りや、貝殻にスプーンが当たる音などを楽しみながら食事ができる。

 「牡蠣をミキサーにかけると、臭いがきつくなるため、牛乳を加えることで食べやすくなる」と宮城島さんは説明する。

 メレンゲの縮みを抑えて、蒸した後も食形態が変わるのを防ぐ効果のあるトレハロース「トレハ」(販売:林原)を加えるのもポイント。宮城島さんは「作った瞬間ではなく、盛り付けて提供する時においしく召し上がって頂くことが重要。また、嚥下食なので時間が経っても食形態を維持することも大切だ」と話す。

 事業所でオイスターバブルを提供した際は、普段、常食の利用者も殻についた牡蠣を最後まで食べるなど、摂食嚥下状態に関わらず大変好評だったという。

 このほか、同事業所では、呼吸ケアと誤嚥ケア学会「嚥下食アワード」最優秀嚥下食など多数のコンテストで受賞、外部からの評価も高い。

 「利用者は自分が他の人と食形態が違うことをわかっている。なるべく、摂食嚥下能力に関わらず皆が同じものを食べられるよう工夫していきたい」(清水さん)。

 「高齢者だから、摂食嚥下機能が低下しているから、と最初からあきらめるのではなく『どうしたら食べられるのか』を考えながら、利用者が楽しめる食支援を考えていきたい」(宮城島さん)。

(シルバー産業新聞2022年1月10日号)

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