薬樹 オンライン服薬指導 全店でシステム導入も算定進まず
4月の介護報酬改定で、薬剤師の居宅療養管理指導に「情報通信機器を用いた服薬指導」(以下、オンライン服薬指導)が報酬上に位置づけられた(45単位/回・月1回まで)。診療報酬でも先行して昨年9月より、外来・在宅患者それぞれにオンライン服薬指導を行った場合の評価が設けられている。首都圏でおよそ150の保険薬局を運営する薬樹(神奈川県大和市、入江充代表取締役)は、患者のニーズに幅広く対応できるように昨年12月より全店舗でオンライン服薬指導を実施できる体制を整えたが、利用状況はそれほど伸びてはいないのが現状という。同社・薬局事業支援グループの中村忠理マネジャーに聞いた。
月20件程度がオンラインで
足元の数字で、実際にビデオ通話で服薬指導を実施しているのは全薬局あわせても月20件程度。新型コロナウイルス感染拡大防止のための時限的措置により、オンライン診療の要件が緩和され徐々に増えてはいるが実績としてはまだまだ。平時の要件では、特定の疾患に対しオンラインで受診して処方せんが交付されている患者に限定されていたり、疾患によってなるべく早く薬を受け取りたかったりと、伸び悩む要因はさまざまあると思うが、何より知られていないのが大きいと感じている。
フォローアップなどで活用の可能性
そのほか、高齢者に多いポリファーマシー(多剤服用)や飲み忘れも、来局ではなかなか確認が難しいが、自宅からオンラインでつながっていれば、家にある薬を見せてもらったりすることも容易だ。必要に応じて、遠方に住むご家族やケアマネジャーやヘルパーといった多職種に参加してもらいやすいのもオンラインならでは。また2020年9月に薬機法で「薬剤使用期間中の患者フォローアップ」が義務化された。薬剤の適正な使用のため、必要に応じて使用状況の把握や情報提供・指導を行うものだが、ケースによってはオンラインの活用で、より細やかなフォローアップができる可能性がある。
介護報酬でも、4月よりオンライン服薬指導が位置づけられたが、現在のところ算定実績はない。こちらは対面との組み合わせが要件とされているほか、要介護高齢者の自宅や入居施設にオンラインに対応できる環境も必要となる。ただ、いずれにしても医療・介護分野でのICT活用が今後も推進されていくだろう。保険薬局も、ただ近くにあるだけではビジネスとしてもはや成立しない。将来を見据え、患者一人ひとりのニーズに対応できる体制整備には今後もしっかりと取り組んでいく。
(シルバー産業新聞2021年9月10日号)