カムカムスワロー 全メニュー嚥下対応のカフェ
医療法人社団登豊会近石病院(岐阜市)は2022年に認定栄養ケア・ステーションの運営を開始、その拠点となるコミュニティカフェ「カムカムスワロー」を開設した。管理栄養士が常駐し、ドリンク、フードメニューの嚥下調整が可能。食を通じ、地域と医療をつなぐ。
「地域包括ケアに取組む中で、コミュニティの場の大切さを感じていた」と同院歯科医師でカムカムスワロー代表の近石壮登氏。その切り口として着目したのが「食べること」だった。「摂食嚥下に問題のある人は、自宅で介護食品や配食サービスを利用できても、外食の場がない。社会参加の阻害要因になっている」と同氏。特に岐阜市は喫茶店のモーニング文化が根付く地域。食を通じて地域を元気にすることを同カフェのコンセプトにした。
カフェは岐阜市内の幹線道路に面し、ガラス張りで開放的な空間は外からもその雰囲気が伝わりやすい。メニューは各種ドリンクとモーニングサービス。管理栄養士が常駐し、全てのドリンクはとろみ付け、またモーニングはソフト食・やわらか食に対応する。離乳食も受け付ける。
同カフェのマネージャーで言語聴覚士の蛭牟田誠氏は「食形態によっては40分ほど調理時間を要するので、嚥下調整が必要な人は予約の上、ご来店いただくことをおすすめしている」と説明。今後はたんぱく質を増強したランチメニューなども開始したいと述べる。
外食資源を広げる
「栄養に関しては、今の食習慣で摂取量・バランスに問題がないか。気づきを与えられるイベントにしたい」(蛭牟田氏)。来年度は地域包括支援センターの運営も開始する予定だ。
「カムカム」の開設をきっかけに、様々なプレーヤーとの提携にも発展。他飲食店向けには嚥下調整の手法などを教育し、嚥下食メニューの開発を支援、外食可能な店舗の拡大を見据える。
また、今年は金沢市のホテルと協働し、嚥下食を提供する1泊2日のインクルーシブツーリズムも企画。「参加した家族からは、一緒の食事を楽しめたことへ喜びの声をいただいた。試行事業を経て、ゆくゆくは全国のホテルへ展開していきたい」と近石氏は述べた。