管理栄養士がキッチンカーでやってくる
医療法人銀門会甲州リハビリテーション病院(山梨県笛吹市)は2020年に認定栄養ケア・ステーション(CS)を開設、翌21年に「機能強化型」の認可を受けた。栄養相談や訪問栄養指導、セミナーなどを通じ、地域の栄養・食支援を担う。管理栄養士の活動を地域へ伝えていくため、昨年にはキッチンカーを導入。「地域で活動する病院」の広告塔にもなっている。
管理栄養士7人が所属。村松郁さんは病棟と老健を兼務し、併設の通所サービスにも関わる。7年前に開始した居宅療養管理指導(在宅訪問栄養食事指導)は現在月15件ほど。これらと並行し、機能強化型認定栄養CSの活動もこなす。
在宅訪問を行うのは村松さんを含めて2人だが、CSの運営は管理栄養士全員で分担。「地域に出るマインドが法人全体で共有されている。活動に抵抗はなかった」と村松さんは話す。
相談窓口を分かりやすく
行政との連携では「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業として、隣の山梨市でフレイル予防教室の開催(ポピュレーションアプローチ)や、山梨市、大月市で保健師と連携した3カ月の改善プログラム(ハイリスクアプローチ)も行う。
これらは医療機関としても対応できるが、「CSの看板を出すことで目的が明確になる。地域からの相談も受けやすい」と村松さん。現在、山梨県栄養士会の栄養CSを除くと、県内の認定栄養CSは同病院の1カ所しかない。
村松さんたちは、法人の職員にも栄養・食支援の大切さを認識してもらおうと、院内レストランで配食弁当の試食会や、「栄養の日」にあわせたイベントなども開催。「『食べる理由』を理解し、退院患者や在宅療養者へどの職種からも提案できる体制にしていきたい」。
時・場所を選ばない支援
村松さんは「車の色がけっこう目立つ。停まっているのを見た人から口コミで広がり、認知度は高まってきている」と効果を実感。車体には「管理栄養士が健康をサポート」と大きく書いてある。「地域での管理栄養士の存在感を最大限発信することが目的。人が自然と集まるキッチンカーにしたい」と意気込む。
災害時の使用も導入を決めた理由の一つ。年1回行う災害訓練では、備蓄品の加工調理などをキッチンカーで実施。ポータブル電源とソーラーパネルで電気を供給する。「施設・病院の厨房が使えないとき、何人分の食事をどのくらいの時間で提供できるか、シミュレーションしておかなければならない」(村松さん)。