千葉県の介護保険 2040年、訪看利用6割増

千葉県の介護保険 2040年、訪看利用6割増

千葉県の介護保険 2040年、訪看利用6割増

 千葉県の高齢者人口は、2020年時点でおよそ173万人で、総人口628万人に対し高齢化率は27.6%。全国平均の28.6%と比べて現時点では「比較的若い県」という立ち位置だが、今後、急速に高齢化が進んでいく。推計では、2040年時点の総人口は564万人(20年比で▲10.1%)まで減少する一方で、高齢者数は197万人(+13.8%)に増加し、高齢化率は35.0%になる見込み。要介護認定者数も、20年時点の28万9000人から42万2000人と、およそ1.5倍に増加する。こうした状況から、「現在整備されている医療や介護サービスの供給量をさらに充実させていく必要がある」と、高齢者福祉課の上林明絵課長は説明する。

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介護サービスの基盤整備

 各保険者が推計した介護サービスの見込み量を20年度と4040年度で比較したところ、居宅サービスでは、訪問介護が+56.8%、訪問看護が+63.6%、通所介護+51.9%、短期入所生活+49.0%、福祉用具貸与+53.7%、住宅改修+62.9%などとなっており、いずれのサービスも1・5倍程度、増加する見込みとなっている。

 施設サービスについても、特養が+45.4%、老健が+36.4%と、居宅サービス同様、かなりの整備が必要になる。特養待機者は直近で1万1383人。千葉県では今年度も引き続き、特養の整備補助1床あたり450万円を維持し、施設整備を後押ししていく。

 第8期(21年~23年度)の介護保険料の基準額は5385円で、現時点では全国で最も低い金額だが、40年時点では8000円程度にまで上昇する見込みとなっている。

医療と介護の連携

 千葉県が基本目標に掲げる「介護が必要になっても、安心して自分らしく暮らせる地域社会の構築」を実現させていく上で、大きな課題が「医療と介護の連携」だ。地域包括ケアシステムを推進していくために国が設けたインセンティブ交付金の指標の中で、在宅医療・介護連携に関する取組状況の項目をみると、千葉県の得点は32.8点と、全国平均の49.7点を下回っている。

 人口当たりの訪問診療や訪問看護ステーションなどの数も、全国40位台に留まるなど、在宅医療を支える資源が不足している。

 訪問看護ステーションの大規模化やサテライト開設に必要な経費の助成を行い、整備を促進していくほか、医療と介護の連携を促進するために、入退院時の情報連携ツール「千葉県地域生活連携シート」や、認知症にかかわる多職種の情報共有ツール「オレンジ連携シート」の普及などに力を注ぐ。

介護人材の確保

 もう一つの大きな課題が介護人材確保の問題。将来の介護職員の需給推計では、25年度時点で必要となる千葉県内の介護人材の数は10万9785人。一方で、現状のペースで供給できるのは8万1399人と、2万8386人不足する計算になる。

 人材確保に向けて、千葉県では「人材の確保・養成」、「人材の育成」、「人材の定着」、「業務仕分けや業務改善の取組推進」の大きく4つの観点から施策を整理し、それぞれに必要な対策を講じている。具体策は36施策に及ぶが、中には知事から委嘱を受けた若手介護職員が「介護の未来案内人」として高校などを訪問し、介護職の魅力ややりがいを生徒に紹介し、就業促進につなげていく取組や、SNSなどのメディアを使って、人材確保に向けた啓発を行うなど、介護職のイメージアップ促進にも力を注ぐ。「介護人材の確保については、時間がかかる部分もある」と上林課長。処遇改善や職場環境の改善など、官民が一体となって問題解決に取り組んでいく姿勢が何よりも重要だと強調する。

千葉県が目指す社会

 千葉県高齢者保健福祉計画策定の軸になっているのが、「高齢者が個性豊かに生き生きと、安心して暮らし続けられる地域社会の実現」という基本理念だ。それを実現していくために、「地域共生社会の視点が重要になってくる」と上林課長は説明する。また、ICTやロボットなどのテクノロジーの積極的な活用もポイントにあげる。

 「支える側」「支えられる側」といった関係を超えて、地域の中で人と人とがつながり、支え合う社会の実現を目指している。

(シルバー産業新聞2023年5月10日号)

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