ケアプランデータ連携システム4月稼働 「予定・実績」 をICTで

ケアプランデータ連携システム4月稼働 「予定・実績」 をICTで

ケアプランデータ連携システム4月稼働 「予定・実績」 をICTで

 厚生労働省は9月6日、来年4月から「ケアプランデータ連携システム」の本格稼働を予定していることを事務連絡した。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間のケアプランのやり取りをデータで行う。FAXや手渡しにかかる時間と費用を軽減し、また予定・実績の転記や手入力ミスを防ぐことで業務効率化を図る。ポイントは、やり取りする事業所双方がシステムを活用する必要がある点と標準仕様への介護ソフトメーカーの対応。業界全体での業務効率化に繋げるためには、今後どれだけ多くの事業所を呼び込めるかが鍵となりそうだ。

サービス提供票の「予定・実績」

 「ケアプランデータ連携システム」は居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で交わされるケアプラン(1、2、6、7表)のデータ連携を目的とした全国共通の情報連携基盤。厚労省が今年度の予算を確保し、国民健康保険中央会がシステム構築・運用を担う。今年5月に、岸田文雄首相が「年度内に整備し、早期の全国展開を目指す」と発言していた。来年2、3月の自治体を限定したパイロット運用を経て、4月からの本稼働を目指す。

 連携システムで効率化を想定するのは、毎月行われているケアプラン第6表(サービス提供票)の予定と実績のやり取りだ。サービス提供票には「月間サービス計画及び実績の記録」欄が設けられ、居宅介護支援事業所とサービス提供を行う介護サービス事業所は月間の利用スケジュールの情報をそれぞれ記載する。

 具体的には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが予定欄を記入。利用予定の日付に数字の「1」を記載し介護サービス事業所へ送る(図1)。これに対して、介護サービス事業所は、実際にサービス提供した日付に「1」を記載して居宅介護支援事業所へ送り返す。利用予定だったが、利用者の都合などで実際には利用しなかった日付は空欄にする。多くの事業所が、この提供票をFAXや郵送、手渡しでやり取りしており、その際に受け取った予定や実績を転記したり、介護ソフトに手入力したりしていて、業務負担やミスの元になっている。

提供票(第6 表)。ケアマネが予定、サービス事業所が実...

提供票(第6 表)。ケアマネが予定、サービス事業所が実績に「1」を記入して相手へ送る

ケアマネ 「自分が間違えると返戻に」

 小樽市の居宅介護支援事業所の管理者は、「私が担当している利用者は20人ほどだが、それでも実績と突き合わせて給付管理の修正をするのに毎月2時間近くかかっている。誤って入力してしまうと、介護サービス事業所側の報酬請求が返戻になってしまうこともある。迷惑をかけないように、いつも細心の注意を払っている」と話す。240人の利用者を抱える同事業所には、月初になるとサービス事業所から実績が次々と送られてくる。それを担当ケアマネごとに分ける作業だけでもひと苦労だという。

連携システム利用の流れ

 ケアプランデータ連携システムでは、この予定・実績情報をデータでやり取りする(図2)。厚労省によると、システムは「連携クライアント」と「連携基盤」から構成される。システムを利用する事業者は、連携クライアントを事業所のパソコンにインストールする(国保中央会のWEBサイトからインストールできるようになる予定)。データを送信する事業所は「ケアプラン標準様式」対応の介護ソフトで作成したケアプランデータをCSVファイルに出力し、連携クライアントにアップロードする。CSVファイルはLIFEへのデータ提出にも使用されているファイル形式だ。クラウド上の連携基盤を経由した後、受け取る側はファイルをダウンロードし、情報を介護ソフトに取り込むことができる。この仕組みで、FAXや郵送にかかるコストの削減、転記や手入力の業務やミスを防ぐ。送受信には介護報酬の電子請求に使用する電子証明書も必要になる。厚労省は、連携システムの活用で「人件費も含め、事業所は年間80万円以上のコスト削減も期待できる」としている。

自事業所だけでは使えない

 当然だが、居宅介護支援事業所、介護サービス事業所双方が連携システムを利用しないとデータでの送受信はできない。一方がデータでのやり取りを希望しても、相手の事業所が対応できなければ、FAXなどでのやり取りが続くことになる。データ連携の効果を高めるには、できる限り多くの事業所が利用する必要がある。

 大阪介護支援専門員協会の濵田和則会長も「居宅介護支援事業所だけでなく、介護サービス事業所の参加が欠かせない」との見方を示す。システムの普及には「導入が難しい小規模事業所などへの配慮が必要」と説明し、保険者による事業所への呼びかけや介護ソフトメーカーの対応などが必要だとする。

ソフトメーカーの対応が不可欠

 濵田会長は、連携システムの円滑な運用にはケアプランの標準仕様への介護ソフトメーカーの対応も必須だと指摘する。厚労省が作成した標準仕様は、異なる介護ソフトを使う事業所同士でもデータ連携ができるようにするもの。この標準仕様に沿ったファイルの出力・取込ができるよう、メーカーが自社の介護ソフトの改修を行うことで、異なるソフト間でもデータ連携が可能となる。

 厚労省は8月、昨年3月に行ったケアプランの標準様式の見直しに対応した改訂版標準仕様を示した。今後の各ソフトメーカーの改修対応が、連携システムの早期普及に影響してくるとみられる。各都道府県で今年度も実施されている「ICT導入支援事業」は、介護ソフトなどのICT機器導入を補助する事業だが、「ケアプラン連携標準仕様を実装した介護ソフトであること」を補助要件とするなど、標準仕様対応のソフトの普及を後押ししている。

 また、濵田会長はソフトの問題とは別に、「人手が限られる小規模事業所など、システム利用の対応が遅れるサービス事業所もあるだろう。来年4月以降も、しばらくは従来のFAXなどでのやり取りと連携システムとが併用される状況が続くのではないか」と見込む。

 具体的な金額は決まっていないが、現時点でシステム利用は有料となる予定で、濵田会長も「気になる点」と話す。厚労省は「事業所の過度な負担にならないように検討を進めている」と説明している。

 「連携システムの活用で、ケアマネジャーのひと月の業務時間が1日分は削減できるのではないか。介護分野のICT化を国や保険者のバックアップの中で推進していきたい」(濵田会長)

(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

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