関東圏への転出多い新潟県 医師確保・定着も課題

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関東圏への転出多い新潟県 医師確保・定着も課題

 地域社会の高齢者福祉の向上を目的に設立された新潟県老人福祉施設協議会。2013年度からは一般社団法人となり、今年6月現在で県内568事業所の会員を擁する。昨年度に17代会長として就任した山田淳子会長(特別養護老人ホームみなみ園施設長)に、県内の介護ニーズや協会の取組みについて聞いた。

冬季の介護ニーズ、質・量ともに変化

 ――新潟県の高齢者介護の地域特性や課題は。

 地域差はあるが、冬季は提供する介護サービスの質や量が他の季節と異なる。大雪になると、送迎の時間が読めなくなる。要介護者は外出が難しくなるため、活動量の低下やフレイルなどに普段以上に目を配らなければならない。冬場はウインタースポーツ目当ての来県も増えるので、観光業や飲食業に就く家族は繁忙期に入る。そのため、介護やレスパイトニーズが高まりやすい。また冬季の一時的な施設入所は、例年9月ごろから入所ニーズが高まる地域もある。

 新潟県は、全国的にも「医師不足」が深刻な県。私の所属法人がある魚沼圏域の地域医療構想調整会議でも医師の確保・定着が課題だ。新潟県は広く、山間地も離島もある。地域包括ケアシステム推進にも、地域医療の充実は不可欠だと感じている。

関東圏へ人口流出しやすい地域性

 ――県内の介護人材の確保は。

 上越新幹線が走り、関東圏へのアクセスが良い。それゆえ関東への転出者も非常に多い。介護人材不足は全国共通だが、新潟県は上京しやすく、人口流出しやすいという特性も抱えている。

 そうした中で、人材確保には地域や県内にこだわっている余裕はない。例えば、私の施設でも県外の大学や専門学校まわりはもちろん、SNSや求人サイトなどのWEBを活用して全国へ情報発信しつつ、処遇改善、業務効率化、外国人人材の採用などを並行して取り組んでいる。もちろん地域や法人によって差はあるだろうが、多くの事業所が似た状況ではないだろうか。

 一方で、国は次期改定に向け、ICTや介護ロボット導入による人員基準緩和の検証を始めている。ICT・ロボット導入が職員の負担軽減には繋がっても、それで数を減らせるかというと疑問だ。現場感覚ではそのイメージが持てず、人員削減は次元が異なる話のように思う。

 外国人人材については、私の法人でも現在、在留資格「介護」のベトナム人職員を4人採用していて、皆とても熱心に働いてもらっている。

 ただ日本人職員とは別のフォローアップ体制が必要だ。交流や意見交換の場を定期的に設けたり、試験や日本語学習のサポートだったり、さらに買い物には車が必要な地域だが運転はできないので買い物のサポートも必要になる。

 外国人人材を迎え入れるためには、こうした就労や生活面のフォローが欠かせない。

行政・議会との調整に奔走

 ――新潟県老施協の会長に就任して1年が経過した。

 振り返ってみると非常に慌ただしい1年だった。コロナ関連では陽性者発生時の入院調整、医療支援チームの派遣、不足物品や検査キットの支援など、処遇改善ではこれまで対象外だった養護老人ホームや軽費老人ホーム、ケアハウス職員の賃上げ支援などについて説明や要望するため、議会や県へ何度も足を運んだ。全てが期待通りに実ったわけではないが、現場の現状や切実な声を伝え、話し合うことで、一定の成果に繋がったと感じている。

 コロナ禍の大変な時期だからこそ、迅速に会員の困りごとを集約し、関係機関へ届ける動き方が、当協議会の中に形成されてきた。

 もちろん、今までも取り組んできたことではあるが、コロナや人材確保など、現場がこれまで以上に難しい課題と向き合う中で、行政や議会、全国老施協と連携・調整を行うことがますます求められるようになったということだろう。これからも、その役割を果たしていきたい。

「21世紀部会」やリーダー研修、次世代への期待

 今年度、当協議会では新しい研修「次世代リーダースキルアップ講座」を実施予定だ。会員施設の中堅職員や将来のリーダーを対象に3回シリーズで、マネジメントや会計の基礎知識などを学ぶ。

 また当協議会では、地域ごとに5つの部会を設けて、それぞれに研修や調査事業などの活動に取り組んでいるが、それとは別に「21世紀部会」を立ち上げている。全国老施協に設置されている「21世紀委員会」に倣い、50歳以下の若手施設長らが中心となっている。若い世代が2040年を見据えた地域課題の検討や活動に力を注ぎ、当協議会の視野や事業の幅をさらに広げてくれるだろうと心より期待している。

(シルバー産業新聞2022年7月10日号)

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