「全研ケア」設立、外国人人材受入れのスキーム提供 全研本社取締役 鷲谷将樹氏

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「全研ケア」設立、外国人人材受入れのスキーム提供 全研本社取締役 鷲谷将樹氏

 ウェブマーケティング、語学教育など幅広い事業を展開する全研本社(東京都新宿区、林順之亮社長)は4月1日、完全子会社の「全研ケア」を立ち上げ、介護事業に参入した。今年7月から、M&Aで取得した埼玉県久喜市の有料老人ホーム3施設を運営する。同社・鷲谷将樹取締役は参入の狙いについて、「外国人人材受け入れのモデルとなる施設をつくり、受け入れのスキームを提供したい。それにより介護人材不足を解消することを目指す」と説明する。

自施設で「受け入れモデル」を構築

 今回の参入は、介護分野の人材不足解消が最大の目的だ。今後ますます高齢化と労働人口の減少が進み、高齢者介護では2040年までに70万人近い介護職員を新たに確保する必要があるとされている。当社が長年培ってきた外国人人材への日本語教育事業やIT分野における外国人人材紹介事業のノウハウが生かせると考えた。

 なぜ、全研ケアを立ち上げ、有料老人ホーム3施設の運営を手掛けるのかというと、外国人人材受け入れ施設のフラッグシップモデルをつくるためだ。介護労働安定センターの調査によれば、外国人人材を受け入れている事業所よりも、受け入れていない事業所のほうが、意思疎通やコミュニケーション、生活習慣などの違いに受け入れの不安を抱えている割合が高い。受け入れに関心があっても二の足を踏む理由は、こうした不安がネックとなっているのではないか。

 日本で初めて働く外国人職員、それを受け入れる日本人職員の双方が、安心して働けるモデルケースをしっかり示すことができれば、受け入れに慎重な事業所の不安も払しょくされ、介護分野での外国人人材の受け入れはさらに広がっていくだろう。まずは、そのモデル施設を我々自身で体現するところから始めたい。

5年後「500人の受け入れ」目指す

 今回のM&Aで取得したのは、「桧家リビング久喜」などの有料老人ホーム3施設。今年7月にヒノキヤレスコ(東京都文京区、上村耕一社長)から事業譲渡され、全研ケアの運営に切り替わる予定だ。これらの施設で、まずは年内に2~3人の人材をインドネシアから受け入れる予定としている。 インドネシアからの受け入れスキームとして、ジャカルタで日本語学習塾4校を運営する学修堂、インドネシアで介護の職業高校を展開するダルマワン専門高校、そして当社の3社で、日本への送り出しについて当社を経由する契約を締結している。

 インドネシアは日本語学習者数が中国に次いで多い国で70万人を超える(国際交流基金「海外の日本語教育の現状」)。学修堂は、そのインドネシアで1987年より日本語学校を運営し、教材出版、人材送り出しの事業を展開している。ダルマワン専門高校は、現地で高齢者施設も運営しており、座学のみならず実習も行える体制を整えている。従来よりも高い日本語能力や介護技術を身に付けて、来日してもらうことができる。

 受け入れる人材の在留資格は特定技能を想定している。特定技能の在留期間は最長5年だが、希望する外国人人材には介護福祉士資格の取得支援も行う。在留資格「介護」に切り替え、長く日本の介護に従事してもらえる枠組みとして、外国人人材と受け入れ施設へ提供していきたい。

 5年後には介護分野で年間500人の受け入れを目指す。そのために、ウズベキスタンでもインドネシアと同様の契約を進めている。また当社がIT人材の紹介事業を行っているインド、その後は子会社を持つフィリピンやベトナムなどでも受け入れのスキームを構築していくつもりだ。さらにその先は、介護分野で構築したモデルを医療やサービス業など、他産業にも横展開を図っていく。

 喫緊の課題である介護人材不足について、ぜひさまざまな介護事業者の方々とともに考え、克服するためのスキームやノウハウを作り上げていきたい。

(シルバー産業新聞2022年4月10日号)

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